成績概要書(作成平成9年1月)
| 課題の分類 研究課題名:てんさい移植栽培における小口径CP紙筒の特性調査 予算区分:受託 研究期間:平6〜8年度 担当科:北見農試研究部作物科 十勝農試研究部てんさい特産作物科 十勝農試研究部農業機械科 協力・分担関係:なし |
1．日的
てんさいの省力栽培技術の1つとして、小口径CP紙筒移植栽培の可能性について検討する。
２．方法
1)小口径CP紙筒利用の可否
(1)紙筒の種類
No.1紙筒(口径119㎜、紙質:No.1原紙)、小口径CP紙筒(口径:14㎜、紙質:CP原紙)を用いててんさいの生育、収量の比較検討を行った。
(2)生育追跡
No.1紙筒及び小口径CP紙筒栽培における生育経過を調査した。
(3)抽苔特性の検討
「モノヒカリ」を用い中標津町で小口径CP紙筒の抽苔耐性について検討した。
(4)低温ストレスに対する反応
早期移植によって低温に遭遇させ、小口径CP紙筒の低温耐性について検討した。
(5)播種及び移植作業特性
土詰め特性、播種精度、播種工程、試作移植機の移植精度について調査した。
2)播種期に関する試験
小口径CP紙筒栽培における播種時期を検討するため、3月下句、4月上旬に播種を行い、てんさいの生育、収量の調査を行った。
3)長さ(短紙筒化)
小口径CP紙筒紙筒の長さ(13,10,8cm)が、てんさいの生育、収量に与える影響を検討した。
３．結果の概要
1)小口径CP紙筒をNo,1紙筒と比較した結果は以下のとおりである。
①育苗面積、育苗土が約半分で済み、土詰め播種作業時間を短縮できる(表2,5)。
②移植時の苗は徒長し、苗の生育及び初期生育は劣ったが、その差は徐々に小さくなり、8月にはほぼ追いついた(図1)。
③収穫時の根重はほぼ同等かやや少なく、根中糖分は同等であった(表1)。
④抽苔の発生が多くなる傾向が認められた(表3)。
⑤移植後の低温に対する耐性が小さい傾向が認められた(表4)。
2)移植作業特性の結果、設定株間25cmに対して平均株間は24.6〜26.1cm、株間の変動係数は16.5〜20.8%であった。
3)小口径CP紙筒では播種期が遅れると、根重はやや減収し、根中糖分は同等であった(表6)。
4)小口径CP紙筒の紙筒長を短くすると、根重はやや減収し、根中糖分は同等であった(表7)。
表1 紙質の種類に関する試験(品種「モノエースS」)
| 紙質 | 十勝農試 | 北見農試 | ||||
| 根重 t/10a |
根中糖分 % |
糖量 kg/10a |
根重 t/10a |
根中糖分 % |
糖量 kg/10a |
|
| No.1紙筒 | 5.65(100) | 18.69(100) | 1060(100) | 5.62(100) | 19.26(100) | 1081(100) |
| 小口径CP紙筒 | 5.64(100) | 18.77(100) | 1063(100) | 5.43(97) | 19.24(100) | 1044(97) |
表2 供試紙筒の大きさ及び10a当たりの床土量
| 六角対辺長 (㎜) |
展開寸法 (㎜) |
床土量 (kg/10a) |
|
| No.1紙筒 | 19.0 | 275×1144 | 257(100) |
| 小口径CP紙筒 | 13.8 | 282×574 | 125(49) |
表3 抽苔耐性の検討(10月15目調査)
| 主茎型 | 腋枝型 | 合計 | |
| No.1紙筒 | 2.9 | 0.4 | 3.2 |
| 小口径CP紙筒 | 9.7 | 0.0 | 9.7 |
表4白化率、枯死率調査(十勝農試)
| 白化率(4/25) | 枯死率(6/10) | |
| No.1紙筒 | 13.9 | 3.3 |
| 小口径CP紙筒 | 50.6 | 10.5 |
表5 総作業時間及び能率
| 紙筒種類 | 処理数 (冊) |
作業人員 (人) |
総作業時間 (min) |
処理能率 | ha当たり所要時間 (h/ha) |
|
| (min/冊) | (冊/hr) | |||||
| No.1紙筒 | 6 | 7 | 21.3(100) | 3.6(100) | 16.8(100) | 3.6(100) |
| 小口径CP紙筒 | 6 | 7 | 18.6(87) | 3.1(86) | 19.6(117) | 3.4(94) |
表6 播種期に関する試験(2場平均)
| 播種期 | 根重 t/10a |
根中糖分 % |
糖量 kg/10a |
| 3月下旬 | 5.89 | 18.14 | 1065 |
| 4月上旬 | 5.78 | 18.24 | 1049 |
表7 長さに関する試験(2場平均)
| 長さ (cm) |
根重 t/10a |
根中糖分 % |
糖量 kg/10a |
| 13 | 6.16(100) | 17.83(100) | 1099(100) |
| 10 | 6.02(98) | 17.80(100) | 1072(98) |
| 8 | 5.88(95) | 17.79(100) | 1046(95) |
４．成果の活用面と留意点
今後のてんさい移植栽培省力化低コスト開発研究の資とする。
５．残された問題点とその対応
1)この技術の実用化のためには紙筒の量産体制及び移植作業の機械化システムの確立が不可欠である。
2)今後以下の課題の検討が必要である。
①紙高分離時の苗損傷、紙筒破れ、こぼれ土が移植精度に与える影響
②苗の徒長防止技術
③抽苔、低温ストレスに対する耐性及び機作の解明