【指導参考事項】
成績概要書             (作成 平成9年 1月)
課題の分類  北海道 作物 園芸、化学−
研究課題名:ゴボウの生育特性と施肥管理
      (ゴボウの省力安定生産技術の確立)
予算区分:道単
担当科:十勝農試研究部園芸科
試験期間:平5〜8年度
協力・分担関係:

1.目的
 移出野菜としても有望なゴボウを高品質安定生産するため、その生育特性及び栄養特性を明らかにするとともに、施肥に関する合理的な栽培技術を確立する。

2.方法
1)発芽に及ぼす各種条件の影響
 (1)温度:設定温度10〜40℃、発芽期及び発芽率の調査
 (2)浸漬処理:ポット試験(浸漬水温5〜48℃)・圃場試験(5〜35℃)、発芽期及び発芽率の調査
 (3)は種深度:ポット試験(は種深度1〜10㎝)・圃場試験(1〜10㎝)、発芽期及び発芽率の調査
2)生育及び養分吸収特性
 (1)葉及び根の生育経過と根の内部成分の変動
 (2)養分含有率及び養分吸収量の推移
3)施肥に関する試験
 (1)窒素施肥量と品質・収量の関係:窒素施肥量0〜36㎏/10a、有効根長・尻こけ指数・乾物率・糖質含量・収量に及ぼす影響の検討
 (2)現地における窒素用量試験(4ヶ所):土壌型及び土壌肥沃度の異なる圃場での適正施肥量の検討
 (3)株間と窒素施肥量の関係:株間6〜10㎝×窒素施肥量15〜27㎏/10a、栽植密度別の適正施肥量の検討
 (4)カリ施肥量と品質・収量の関係:カリ施肥量0〜45㎏/10a、乾物率・糖質含量・収量に及ぼす影響の検討

3.結果の概要・要約
 ゴボウの生育及び栄養特性を検討するとともに、窒素とカリに関する施肥試験を行い、以下の結論を得た。
 1.10〜36℃の範囲で発芽し、適正温度は21〜30℃であった。
 2.10℃以上の水に種子を浸漬することによって発芽を早めることができたが、水温が44℃以上になると種子は発芽抑制を受けた。発芽率は浸漬しない場合でも高く、浸漬処理した場合との差はなかった。
 3.は種深度は2〜3㎝が適当であり、5㎝より深くなると発芽率は極端に低下した。
 4.葉の最大繁茂期は、は種後120日前後であった。根の肥大は、は種後60日頃から旺盛となり、特に90〜120日での根重増加が顕著であり、この時期の根重増加量は一日当たりおよそ3gであった。
 5.葉の無機養分含有率は生育中期以降徐々に低下した。根では、リン酸含有率は生育初期から収穫期までゆるやかに増加した。窒素及びカリ含有率は、は種後80日頃までは低下するが、その後は横ばいになり、さらに、生育後期になると葉からの養分転流により増加傾向となった。
 6.窒素の最大吸収期は、は種後130日前後であり、吸収量は平均でおよそ18㎏/10aであった。最大吸収期以降は、葉の枯凋が進むにつれて総吸収量は若干低下した。
 7.窒素の適正施肥量は15〜18㎏/10aの範囲であったが、沖積土にあっては15㎏/10aが適当であった。
 8.施肥したカリが品質・収量に及ぼす影響はほとんどなかった。施肥量は、根による畑からの持ち出し量を考慮すると、標準施肥量である18㎏/10aが適当である。


図1 温度と発芽の関係(普通種子)

表1.は種深度と発芽の関係(ポット試験)
土壌 項目 は種深度(㎝)
1 2 3 4 5 6 8 10
多腐植質
黒ボク土
発芽期まで日数(日) 9 9 9 11 13 - - -
発芽率(%) 93 95 88 90 63 35 7 0
褐色
低地土
発芽期まで日数(日) 9 9 10 11 - - - -
発芽率(%) 88 90 98 65 27 18 2 3


図2 晩春まきのおける生育及び窒素吸収パターン


図3 部位別の窒素含有率の推移
注)平成4、6、7、8年の4ヶ年における生育月数ごとの平均値をプロットした。

表2.窒素施肥量と規格内収量の関係
試験地 N施用量(㎏/10a)
0 15 18 21 24 30
十勝農試 15 96 100 103 100 103
芽室町 44 97 100 102 101 104
帯広大正 64 88 10O 106 99 93
幕別町 76 111 100 99 99 111
帯広川西 86 100 100 97 107 93
*各試験地の18kg/10a区を100とした時の相対値

表3.窒素施肥量と窒素吸収量の関係
試験地 N施用量(㎏/10a)
0 15 18 21 24 30
十勝農試 2.2 13.4 16.1 15.9 17.1 18.6
芽室町 4.5 15.6 16.3 17.9 17.2 19.2
帯広大正 7.7 16.2 21.3 22.2 21.6 20.5
幕別町 13.0 20.2 19.2 18.8 19.2 18.2
帯広川西 8.1 12.5 12.5 13.7 14.5 15.4
*単位:㎏/10a


図4 カリ施肥量と収量及びカリ吸収量の関係
注)2ヶ年の平均値で示した。

4.成果の活用面と留意点
 1.ゴボウ栽培における基礎資料とする。
 2.施肥試験における基肥の施用法は部分深層混和法のみを用いた。

5.残された問題点とその対応
  リン酸施肥の検討