【研究参考】
成績概要書(作成 平成9年 1月)
課題の分類  北海道 作物 園芸−野菜育種 野菜育種 タマネギ
         北海道 作物 園芸 野菜−野菜育種 タマネギ
研究課題名:タマネギの簡易堅さ測定機
予算区分:道費
担当科:北海道農試作物開発部上席研究官・野菜花き研究室
担当者:伊藤喜三男・佐藤裕
試験期間:完 平成6〜8年度(6〜15年)
協力・分担関係:

1.目的
タマネギの堅さは輸送性、貯蔵性、品質等に関連する重要な形質の一つであるが、その簡易な評価法がない。そこで携帯性が優れ、廉価で、育種現場で利用できる堅さ測定機を開発し、その測定機を用いて堅さの品種間差を明らかにし、育種に役立てる。

2.方法
 1)耕種、材料、試験区堅さ測定材料は1994〜1996年3月上旬播種、5月上旬定植、9月下旬日収穫し、3℃で6ヵ月間貯蔵した。17品種・系統を用い、各90株1区制、その他は当場の慣行によった。
 2)調査堅さ測定には貯蔵2,6ヵ月後の試料を用い、1ロット5〜10球の3回反復とした。測定条件設定のため、物性試験機(Instron 1000)により圧縮速度、圧縮距離、球の大きさとの関係を調べた。貯蔵性は6ヵ月後に調査した。

3.結果の概要
 1)測定機開発した堅さ測定機(DFG−C、図1)は建築工具の充電式シーリングガン(DFG、松下電工㈱、EZ3651D、(A))とガンのシャフトに付けたデジタルフオースゲージ(㈱イマダ、SSⅡ−20、(B))、胴筒部に付けたべ一スフレーム(C)と試料台(D)から成る。測定部のべ一スフレーム(C)とガンは蝶型ナットで固定し、また試料台はマグネットラバーで試料支柱に装着され、試料の大きさに応じてレベル調節ができる。圧縮距離スケール(F)はマグネットラバーで固定され、ゼロ調整が容易である。圧縮速度は調整つまみ(J)で111〜277㎜/minの間で変速できる。べ一スフレームはアルミ鋼材で作り軽量化した。
 2)測定手順①試料は赤道部が試料台の側部に接し、感圧軸の中心が赤道部に当たるように置く②DFGをピークホールドに設定し、試料に感圧軸が軽く接するまでスイッチを入れ③圧縮距離スケールのゼロ点を圧縮距離指針に合わせ、スイッチを入れて3㎜圧縮し④測定値を読み取り⑤デジタルを帰零し、次の測定準備をする。
 3)堅さの測定条件圧縮距離5㎜では内部裂球したが、3㎜では発生しなかった。圧縮速度は速いほど堅さが高まり、操作上からも遅い111㎜/minが適当と判断した。球の大きさと堅さとは明らかな関係が認められなかった。本機の堅さとInstronによる圧縮堅さ、従来の貫入試験硬さの間には密接な関係が認められた(r=0.966**、0.789**)。
 4)堅さの品種間差異堅さには品種間差が認められ、北海道の主要品種は堅い群に属した(図2)。2ヵ月と6ヵ月冷蔵後の堅さの間には密接な関係(r=0.785**)が認められたが、貯蔵期間が長いほど軟らかくなり、その変化は品種によって異なった(図3)。堅さと貯蔵性の間には負の相関(r=0.604*)がみられ、軟らかく、堅さの変化率が高い品種は貯蔵性が劣る傾向があった。堅さ測定後の試料は母球として利用することができた。
 5)本機の特徴①ポータブルなので育種現場に携行することができる②価格が安く、手作りでできる③圧縮速度は一定で、111〜277㎜/minの間で変速もできる④非破壊測定なので測定中にタマネギの刺激臭が生じない⑤堅さ測定後の試料は母球として利用できる⑥感圧軸の交換で貫入試験にも利用できる。

A:充電式シーリングガン
B:デジタルフォースゲージ
C:ベースフレーム  D:試料台
E:感圧軸   F:圧縮距離スケール
G:スイッチ  H:圧縮距離指針
I:グリップ  J:速度調整つまみ
図1 開発した簡易堅さ測定機(DFG-C)

表1 タマネギの堅さの測定条件
フォースゲージ 最大荷重容量20(kg)
感圧軸 デスク状、30(㎜)
圧縮速度 111(㎜/min)
圧縮距離 3(mm)
測定部位 球の赤道部


図2 従来の測定法の堅さとDFG-C堅さ


図3 Instron堅さとDFG-C堅さ


図4 2カ月と6カ月冷蔵後のDFG-C堅さ

4.成果の活用と留意点
 1)タマネギ以外でも利用できるが、それぞれで測定条件の検索が必要である。
 2)圧感軸を交換すると貫入試験にも利用できる

5.残された問題点とその対応
 1)圧縮距離の精度の向上
 2)特許出願の準備中である。