【指導参考事項】
成績概要書                           (作成 平成9年 1月)
課題の分類
研究課題名:リンゴ「バックナイン」における生産安定のための樹形改造
       (リンゴ新品種の栽培法確立試験)
予算区分:道単
担当科:中央農試果樹部果樹第一科
試験期間:平元一8年度
協力・分担関係:なし

1.目的
 樹勢が強くなった「バックナイン」の生産安定対策の一つとして、主幹形から樹冠上部からの光線透過が良い関心形への改造について検討し、改造による効果および改造の過程で生ずる問題点を明らかにする。

2.試験方法
  1)試験区別改造区:主幹形から変則主幹形を経て関心形に改造対照区:主幹形
  2)栽培方法
(1)供試品種:「ハックナイン」/M26(昭和57年接ぎ木、昭和58年春定植)
(2)栽植距離:列間:4m、樹間:平成元年〜2年;2m平成3年〜8年;4m
(3)施肥量:N2P、KOで、平成元年〜3,5年:6.0,5.0,4.2kg/10a平成4年:3.0,3.0,3.0kg/10a平成6年〜8年:無肥料
(4)1区樹数:5樹(平成元年、2年)、3樹(平成3年〜8年)

3.結果の概要
 1)改造途中、主枝候補枝の先端が上がらず、主枝候補枝の背面に出た枝に主枝延長枝を切り替える必要があった。また、改造、対照区とも平成4年まで、落ち着きつつあるようにみられた樹勢が、平成5年に再び強くなり、平成6年から8年まで、改造、対照両区とも無施肥と夏期剪定を行い、樹勢の安定化を図る必要があった(図1)。
 2)平成5年以降、幹周増加量は対照区では変動が大きかった。これに対し改造区では、樹齢が進むにつれ減少する傾向を示し、対照区に比べ安定する傾向が認められた(図2)。
 3)改造区では、4×4mに間伐した後も樹冠は拡大し、列間での枝の交差が認められるようになった。このため栽植距離として列間、樹間とも4m以上が必要と考えられた。
 4)頂芽数は、改造区で対照区に比べ多く、樹齢が進むにつれその差は大きくなった。頂花芽数は、平成4年及び平成6年以降、改造区で多かった(図3)。
 5)一樹収量は、平成5年を除げば、平成4年以降改造区で対照区に比べ40%前後多く、4×3mの主幹形で栽培した場合と、ほぼ同等の収量が得られると考えられた(図4)。
 6)地色は、変則主幹形から関心形に移行する平成6,7年に、改造区で対照区に比べやや高い値を示し、果実の成熟がやや早まる傾向が認められた。青実率は、平成8年に改造区で対照区に比べやや低い値を示した。これらは関心形への樹形改造により樹勢が安定しつつあることが影響したと考えられた(図5、表1)。
 7)果実の着色、糖度、酸度、硬度及び他の果実品質については、年次による変動があるものの、区間に大きな差は認められなかった。
 8)以上、主幹形から関心形への樹形改造により、樹勢が安定する傾向にあり、果実の成熟がやや早まり青実の発生がやや減少した。また、年次による気象変動に対しても安定した花芽数を確保することができ、「バックナイン」の生産安定に寄与できると考えられた。


図1 改造区における処理の年次経過


図2 幹周増加量*11月測定


図3 頂芽数及び頂花芽数


図4 一樹当たり収量(単年度)


*「ふじ」用地色カラーチャート使用
*平成元,2,6,7,8年は全果調査、他は1樹10果
図5 地色

表1 青実率
  年次
平成7 8
改造 16 20
対照 16 25
単位:%
*全果数に対する割合

6.成果の活用面と留意点
 生産安定のため「ハックナイン」の樹形を主幹形から改造する際の資料とする。
 改造に伴う強勇定により樹勢が強くならないよう、樹勢をみながら施肥制限、夏期勢定等を行う。

7.残された間題点とその対応
 省力、軽労働化の面からの検討。次年度以降新たな試験課題として検討を行う。