【指導参考事項】
成績概要書 (作成 平成9年 1月)
課題の分類 研究課題名:道央に分布する火山性畑土壌の微生物活性 (α一グルコシダーゼ活性)の実態と標準値 (持続的高生産基盤整備技術確立調査) 予算区分:道費 担当科:中央農試環境化学部土壌生態科 十勝農試研究部土壌肥料科 中央農試農業土木部生産基盤科 試験期間:平7−8年度 協力・分担関係:なし |
1.目的
道央火山性畑土壌における微生物活性(α−グルコシダーゼ活性)の実態とその規制要因を明らかにし、α−グルコシダーゼ活性の標準値を設定する。併せて今後の微生物活性向上方策に向けた基礎的知見を得る。
2.方法
道央南部に分布する樽前系火山放出物未熟土(以下、未熟土)および黒色火山性土におけるα−グルコシダーゼ活性の実態と規制要因を、微生物基質量、土壌理化学性の観点等から解析し、道央における標準値を設定した。比較に十勝中央部火山性土壌の測定値を用いた併せて保水性向上資材および有機物を用いた活性向上方策を検討した。
3.結果の概要
a.道央火山性畑土壌におけるα−グルコシダーゼ活性の実態と標準値の設定
1)千歳、追分、早来、厚真など比較的広範囲に分布する放出物未熟土のα−グルコシダーゼ活性(pmol・g−1・min−1)の平均は240〜280、恵庭市周辺の黒色火山性土が400台程度であり、年次間変動は小さかった。これらの値は、平成7年十勝中央部の褐色火山性土の平均604および黒色火山性土の平均624に比べかなり低かった(表1)。
2)α−グルコシダーゼ活性は、土壌中の微生物量、基質量を反映していたが、道央では易分解性炭素は20㎎C・100g−1以下の土壌が多く、易分解性炭素あたりの比活性も、十勝のそれよりも低かった(表2)。これらのことから、道央火山性畑土壌では基質量そのものが少なく、かつ比活性の低いことが低活性の一要因であった。
3)α−グルコシダーゼ活性は、全般にpH、石灰、苦土等の化学性と、また物理性では液相率と正の相関があった。さらに未熟土では固相率と正、気相率と負の相関(図1)を、黒色火山性土では固相率と負の相関を示した。加えて両土壌では粘土含量とも正の相関を示した
4)道央火山性土壌の特徴は、粗粒であり、気相率が高く、かつ保水性が小さい。未熟土に対するパーライト(30%添加)、ベントナイト(2%添加)等の資材を施用することで活性が高まった。このことから、保水性の低いことも)低活性の一要因であった(表3)。
5)α−グルコシダーゼ活性の圃場実態、主な化学性診断基準の下限値、気相率診断基準の上限値、および比較的安定して得られたてんさい収量との関係(図2)等に基づいて、α−グルコシダーゼ活性の標準値を未熟土250〜450、黒色火山性土400〜600と設定した。なお粘土含量と活性の関係から、その下限値を5%として標準値設定の判定基準とした。また活性800以上は過剰域の可能性があった。
b.α−グルコシダーゼ活性向上のための道央火山性畑土壌改良の一方向性
6)未熟土におけるバーク堆肥を用いた活性向上方策には、圃場造成後、初年目に8〜16tを一度に多施用するよりも、2〜4tを毎年連用するほうが効果が大きいこと認めた(図3)
7)未熟土における活性向上のための物理的な環境条件の整備として、上記4)による保水性向上資材の施用が有効であることを認めた。
表1 道央火山性土壌におけるα−グルコシダーゼ活性測定値
土壌 | 年次 | 圃場数 (地点) |
α−グルコシダーゼ活性(pmol・g-1・min-1) | ||
平均値 | (最大値−最小値)1) | 変動係数(%) | |||
放出物未熟土 | 7 | 10(20) | 241 | 498-130 | 36 |
8 | 8(16) | 278 | 452-128 | 30 | |
黒色火山性土 | 7 | 9(9) | 417 | 615-200 | 27 |
8 | 8(16) | 469 | 948-330 | 28 | |
(比較:十勝) | |||||
褐色火山性土 | 7 | 10(20) | 604 | 890-241 | 29 |
黒色火山性土 | 7 | 10(20) | 624 | 894-321 | 24 |
表2 道央および十勝の火山性土壌における
易分解性炭素量および易分解性炭素あたりの
α−グルコシダーゼ活性(平成7年)
項目 | 道央 | 十勝 | ||
未熟土 [241] |
黒色土 [417] |
褐色土 [604] |
黒色土 [624] |
|
易分解性炭素量 | 17.7a | 18.4ab | 24.3ab | 25.4b |
(αG活性/ 易分解性C)比 |
14.0a | 23.0b | 26.4b | 25.4b |
図1 道央および十勝の火山性土壌における
気相率(pF1.5)とα−グルコシダーゼ活性の関係
(平成7年)
◇道央未熟 □道央黒色
▲十勝褐色 ×十勝黒色
表3 α−ゲルコシダーゼ活性および各種の土壌特性におよぼす
資材の効果(未熟土)
試験地・処理 | αG活性1) | 易分解性1) 炭素量 |
気相率2) (%) |
液相率2) (%) |
有効水分3) (mL) |
<A試験地> | |||||
無処理 | 393 | 21.1 | 31.6 | 37.5 | 10.2 |
パーライト30%添加 | 365 | 22.2 | 24.7 | 45.4 | 17.1 |
ベントナイト2%添加 | 502 | 20.4 | 25.1 | 43.6 | 9.7 |
<B試験地> | |||||
無処理 | 430 | 16.9 | 33.1 | 29.4 | 9.6 |
パーライト30%添加 | 620 | 22.1 | 27.0 | 39.0 | 19.9 |
ベントナイト2%添加 | 531 | 16.7 | 26.8 | 32.9 | 10.8 |
図2 グルコシダーゼ活性とてんさい乾物収量の関係
(平成8年)
◇未熟土 ■黒色火山性土
←は根腐病多発圃場
図3 圃場造成後における有機物施用がグルコシダーゼ活性におよぼす影響(未熟土)
連:造成後毎年連用(バーク堆肥t・10a-1)
初:造成初年目のみ
4→2t連は初年目4t、以後連用2t
4.成果の活用面と留意点
1)標準値の適用範囲は、道央に分布する放出物未熟土、黒色火山性土である
5.残された問題とその対応
1)α−グルコシグーゼ活性の低地土、重粘性台地土壌等に対する適応地域・土壌の拡大
2)α−グルコシグーゼ活性を用いた有機物管理指針の検討
3)α−グルコシグーゼ活性の過剰域の把握