【研究参考】
成績概要書 (作成 平成9年 1月)
課題の分類 研究課題名:ホワイトアスパラガス収穫機の開発 (ホワイトアスパラガス収穫機の開発、ホワイトアスパラガス機械収穫試験) 予算区分:共同研究 担当科:中央農試農業機械部機械科 試験期間:平5〜7年、平8年 協力・分担関係:北海製罐(株)食品研究所 |
1.目的
近年、北海道の特産物であるホワイトアスパラガスの生産量が大幅に減少しており、これは輸入品が安価であることに加えて、高齢化や収穫作業の重労働も一因であると言われている。
そこで、ホワイトアスパラガス収穫作業の軽労化、省力化、高能率化を図るため、ホワイトアスパラガス収穫機の開発、収穫機に適した栽培体系を検討し、ホワイトアスパラガスの安定生産に寄与する。
2.方法
1)試験場所
中央農試実験室および勇払郡穂別町
2)試験方法ホワイトアスパラガスの作付面積、栽培様式、生産量、また慣行収穫の作業能率、作業姿勢などについて、現地調査やアンケート調査を行い、栽培の現状を明らかにする。
トラクタ直装式のホワイトアスパラガス収穫機を試作し、収穫試験などから試作機に改良を加えながら、実用に供試得る収穫機の開発を行う。また、慣行収穫区と機械収穫区で収量、損失、損傷、製品歩留まりなどの比較検討を行い、機械収穫に適した栽培様式を明らかにする。
3.結果の概要
1)慣行収穫の圃場作業能率は6.0a/hであり、運搬・調製作業を含めると4.8a/hであった。また、収穫作業時の疲労部位は腰背部と肩、腕の付け根、手首であり、収穫機での作業姿勢は立っている姿勢であり、また重量物の運搬作業がないため、収穫の労働負担は大幅に軽減したと思われる。
2)トラクタ直装式の一斉収穫型ホワイトアスパラガス収穫機を開発した。収穫機の切断刃は回転刃で、固定刃より切れ味が良く、緑茎のような表皮の硬い茎でも滑らかに切断できた。また、茎表面への砂粒の食い込みは見られず、アスパラガスの品質は慣行収穫とほぼ同等であった。アスパラガスの搬送、土砂分離をV型ゴム突起付きコンベアで行い、収穫損失は4%程度であった。
3)機械収穫したアスパラガスの規格品収量は78〜214kg/10a、規格品の歩留りは29〜54%であったが、収量が高いほど歩留りが高い傾向であった。高収量の品種での歩留り向上の可能性、機械収穫された短い茎の加工利用法が今後の検討課題である。また、機械収穫では収穫間隔が短いと収量が少なく、間隔が長くなると収量は増加するが緑茎の割合も増加し、収量を最大とする収穫間隔は明らかにできなかった。
4)試作機では土壌水分が低いと作業速度が速く、高いときは作業速度を低くする必要があったため、10a当たりの収穫作業時間は1.0〜2.9時間(3.4〜8.5a/h)であった。、収穫間隔を6日間と仮定すれば、収穫機の導入により収穫可能面積を慣行より6倍程度増加させることが可能と考えられる。
表1 慣行収穫の圃場作業能率
作業 面積 (a) |
総作業 時間 (min) |
作業の内訳(%) | 作業能率 (a/h) |
||||
ノミで切断 抜き上げ 籠に収納 |
収穫跡 均平 |
移動しな がら探す |
移動のみ | 圃場端 へ運搬 |
|||
36 | 362.1 | 70.8 | 3.7 | 11.0 | 12.2 | 2.3 | 5.97 |
表2 慣行収穫作業の疲労部位
疲労部位 割合(%) |
左肩背中 | 右肩背中 | 左右腰 | 右腕付け根 | 右手首 | その他 |
6.5 | 7.3 | 32.0 | 16.1 | 4.1 | 34.0 |
表3 収穫作業能率の比較
作業能率 (a/h) |
作業時間 (h/日) |
収穫間隔 (日) |
収穫可能面積 (a) |
|
慣行収穫 | 5.97 | 6.0 | 1.0 | 35.8 |
機械収穫 | 5.52 | 6.0 | 6.0 | 198.7 |
図1 総収量と規格品歩留り
表4 収穫精度(重量割合、3号機)
試験番号 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 合計 | 収量 | 規格品 割合 (%) |
||
試験期日 | 5/28 | 6/4 | 6/10 | 6/15 | 6/24 | 7/4 | 7/11 | |||||
作業速度(m/s) | 0.09 | 0.09 | 0.09 | 0.11 | 0.07 | 0.05 | 0.05 | (kg/10a) | (%) | |||
重量(g) | 総収量 | 1313 | 3328 | 1309 | 1652 | 4965 | 4762 | 2012 | 19340 | 358.1 | 100.0 | |
規格品 | 630 | 2242 | 997 | 1096 | 2251 | 1721 | 1180 | 10116 | 187.3 | 52.3 | 100.0 | |
無傷 | 692 | 2287 | 1107 | 1217 | 2398 | 1782 | 1216 | 10699 | 198.1 | 55.2 | 98.8 | |
傷 | 0 | 98 | 0 | 0 | 23 | 0 | 0 | 121 | 2.2 | 0.7 | 1.2 | |
緑茎 | 574 | 564 | 32 | 274 | 618 | 2411 | 436 | 4909 | 90.9 | 25.4 | ||
規格外8mmφ> | 35 | 81 | 75 | 58 | 247 | 235 | 171 | 902 | 16.7 | 4.7 | ||
無頭 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.0 | 0.0 | ||
屑 | 12 | 298 | 96 | 104 | 1679 | 333 | 189 | 2710 | 50.2 | 14.0 |
4.成果の活用面と留意点
1)収穫作業の労働負荷を軽減することができる。
2)機械収穫によりホワイトアスパラガスの栽培面積を増加させることができるが、一斉収穫であるため規格品収量や歩留りが低下する。
3)収穫機の作業人員は最低2名必要である。
5.残された間題点とその対応
1)土性が粗粒火山性土のみの試験であるため、土性の異なる囲場での土砂分離や再培土などについては未検討である。
2)1品種のみの試験であるため、他の品極での規格晶歩留りなどが未検討である。
3)収穫間隔が短いとアスパラガスの収量が低く、長くなると収量は増加するが、緑茎の割合も増加した。このため、収穫間隔と収量、歩留りの関係は明瞭になっていない。
4)降雨により収穫できない場合があったため、圃場が軟弱でも収穫できる走行性の良い車両および最低地上高の高い車両を検討する必要がある。