【研究参考】
成績概要書              (作成 平成9年 1月)
課題の分類
研究課題名:非破壊手法によるメロンの果肉硬度の推定
      (農産物の熟度・内部形状識別装置の開発)
予算区分:道費
担当科:中央農試農業機械部機械科
試験期間:平6〜8年
協力・分担関係:なし

1.目的
 野菜などの収穫時期の判定は生育日数、形状、大きさ、色など外観から判断して行っている場合が多い。しかし、すいかやメロンなどの果菜類では外観から収穫時期や食べ頃の判定は困難で、かつ正確であるとは言い難い状況にある。メロン生産地では生育日数、果皮色、果皮硬さ、香などを収穫時期の目安としており、食べ頃の判定は糖度、果肉の硬さ、果肉色などを指標としている。本試験は非破壊手法により内部の成熟度、収穫時期の判定を明らかにすることを目的とし、特に歯ごたえに関与する果肉硬度を非破壊手法(果皮色、果皮の歪み応力、透過光の波長など)により検討を行う。

2.方法
 1)試験場所中央農試
 2)試験方法果皮・果肉硬度、果皮色、歪み応力、透過光の分光特性値などの計測
 3)供試品種夕張キング

3.結果の概要
1)メロンは収穫ステージが進むほど果皮色の色度b値(黄青軸)とガス発生量が増加する傾向にあった。また、色付きは果梗部より花落ち部の方が強かった。
2)生産者が熟度判定したメロンの平均果皮硬度は未熟果は3.26〜3.34kg/㎝、適期果は3.25〜3.31kg/㎝、過熟果は3.03〜3.05kg㎝であった。平均果肉硬度は未熟果1.28〜1.31kg/㎝、適期果1.04〜1.16kg/㎝、過熟果0.72〜0.79kg/㎝であり、年次間差は少なかった。
3)メロンを総度方向5分割、経度方向に8分割し、果皮硬度および1.2㎜歪み応力値との関係を検討した結果、部位3、4の1㎜歪み応力値との間に高い相関が認められた。
4)メロン果実の透過光スペクトルは738nm、750nm、820nm付近にピークを示した。特に生産者が過熟果と判定したメロンは738nmのピーク値が大きかった。これらの波長の比を分光特性値とし、果皮硬度および果肉硬度との関係を検討した結果、部位3の果皮硬度と分光特性値750/820nmとの間に高い相関が認められた。
5)果皮色色度b値、歪み応力値並びに分光特性値(750/820nm)を説明変数とするメロンの果肉硬度を推定する重回帰式を求め、Fp=1.551−0.0294b十0.0958σm−1.337P750/820を得た。推定式の精度の検討を行った結果、果肉硬度の推定値は年度や収穫ステージに起因する個体差の影響により測定値との間に差が認められたが、硬度0.5〜1.5kg/㎝2の範囲で良い一致を示した。
6)非破壊手法でメロンの果肉硬度を高精度に推定できたが、個体差の影響を低減する方法並びに推定式の多品種への適応性については検討が必要である。

表1 生産者の判定と果肉硬度、果皮硬度
収穫
時期
生産者の
判定
果肉硬度(kg/c㎡) 果皮硬度
(kg/c㎡)
平均 最大値 最小値 標準偏差
H7 未熟 1.31 1.78 0.83 - 3.34
適期 1.04 1.46 0.71 0.24 3.31
過熟 0.72 0.97 0.32 - 3.03
H8 未熟 1.28 1.83 0.72 - 3.26
適期 1.16 1.83 0.48 0.31 3.25
過熟 0.79 1.30 0.43 - 3.05

表2 果皮の歪み応力値
年次 収穫
ステージ
1mm時の平均歪み応力値
部位2 部位3 部位4 部位5
H7 未熟 2.58 2.31 2.27 1.55
適期 2.11 2.13 2.05 1.36
過熟 1.70 1.6 1.47 0.92
H8 未熟 4.40 4.36 3.99 3.6
適期 4.25 3.99 3.86 3.31
過熟 3.41 3.21 2.97 2.67

表3 歪み応力値と果皮・果肉硬度の関係
  歪み量
部位
歪み応力(kg/cm2) 歪み応力(kg/cm2)
1mm(H7,H8) 2mm(H7),0.4mm(H8)
2 3 4 5 2 3 4 5
果皮硬度
(kg/cm2)
H7 0.79 0.78 0.79 - 0.82 0.84 0.85 -
H8 0.62 0.68 0.67 0.65 0.69 0.66 0.57 0.68
果肉硬度
(kg/cm2)
H7 0.77 0.85 0.76 - 0.83 0.86 0.84 -
H8 0.79 0.76 0.79 0.76 0.67 0.59 0.62 0.66

表4 分光特性値と果皮・果肉硬度の関係
年次 部位 果皮硬度(kg/cm2) 果肉硬度(kg/cm2)
2 3 4 5平均 2 3 4 5平均
H7 738/750 -0.19 -0.24 -0.21 -0.24 -0.24 -0.27 -0.20 -0.23 -0.24 -0.24
738/820 -0.76 -0.81 -0.8 -0.74 -0.82 -0.81 -0.81 -0.78 -0.78 -0.82
750/820 -0.60 -0.63 -0.63 -0.49 -0.62 -0.69 -0.73 -0.68 -0.65 -0.71
H8 738/750 -0.65 -0.65 -0.64 -0.65 -0.70 -0.73 -0.72 -0.66 -0.65 -0.71
738/820 -0.71 -0.73 -0.70 -0.69 -0.76 -0.72 -0.72 -0.66 -0.66 -0.72
750/820 -0.65 -0.70 -0.69 -0.66 -0.73 -0.79 -0.77 -0.73 -0.69 -0.77

表5 選択変数と予測結果
説明変数 MR 標準誤差 推定誤差
分光比 果皮色 歪み応力
750/820 b4 3.1mm 0.849 0.183 0.201
738/750 b4 3.1mm 0.818 0.199 0.213
738/820 b4 3.1mm 0.807 0.295 0.211
750/820 b4 3.1mm 0.843 0.187 0.205
750/820 b4 4.1mm 0.863 0.175 0.205


図1 果肉硬度の実測値と測定値

4.成果の活用面と留意事項
 1)産地と年次が限定された赤肉系メロンの推定式である。
 2)非破壊手法に、よる内部品質研究の参考となる。

5.残された間題点とその対応
 1)産地、年次、作型、個体差に対する適応性の検討と予測精度の向上。
 2)青肉系および赤肉系の他品種への適応性の拡大。
 3)測定波長域の拡大による測定精度の向上。