【指導参考事項】
成績概要書                        (作成 平成9年 1月)
課題の分類
研究課題名:無人ヘリコプタによる小麦雪腐病防除薬剤散布実用化技術
予算区分:受託
担当科:中央農試農業機械部、
     上川農試専門技術員室
試験期間:平成6〜7年度
協力・分担関係:なし

1.目的
 北海道の山間部の多雪地では、小麦雪腐病の防除は、根雪直前の天候が不安定で降雪と降雨を繰り返すことが多く、トラクタが圃場に入ることができないため、適期防除を逸すること多い。産業用無人ヘリコプタは、このような圃場条件に左右されることなく防除作業を行え、傾斜地への適応性も高く、劣悪な圃場条件に適応できる散布技術として期待できる。そこで、産業用無人ヘリコプタ用に開発されたイミノクタジン酢酸塩・トルクロホスメチル水和剤Fについて散布特性、防除効果を確認し、実用性の検討を行った。

2.方法
1)供試機 産業用無人ヘリコプタ:R−50
2)供試薬剤 イミノクタジン酢酸塩・トルクロホスメチル水和剤F
3)試験場所 美瑛町美沢共立
4)試験時期
  平成6年度: 1回目11月5日、 2回目11月24日 根雪始12月3日
  平成7年度: 1回目11月14日、 2回目11月22日 根雪始11月24日
5)供試品種平成6年度:チホクコムギ、平成7年度:タイセッコムギ
6)処理概要防除法:無人ヘリ、地上権布、無防除、散布回数:1回、2回希釈倍数(散布量):6倍(8L/ha)、
            12倍(16L/ha)、500倍(1000L/ha)
7)調査項目気象条件、落下分布、作業時間、飛行諸元、対象病害の発生状況、他

3.結果の概要
1)散布時の平均風速は、平成6年の1回目が1.0〜2.1m/s、2回目が1m/s以下、平成7年の1回目が約3.0m/s、2回目が約1.0m/sであった。平均気温は、それぞれ順に12.0℃、0.8℃、16.9℃、約5℃であった。
2)標準量散布区、倍量散布区の計画比は、平成6年の1回散布でそれぞれ1.4、1.2と大きかったが、2回目では両区とも0.9であった。平成7年はほぼ適正速度で散布し、標準量・2回散布区を除いて、計画比は1.0〜1.1であった。
3)薬剤の付着状態は、平成6年の1回散布では倍量散布と標準量散布との比が、付着粒子数で2.8、被覆面積率で1.9とほぼ2倍以上付着しており、倍量散布が良好であった。平成7年も標準量散布に対して倍量散布は薬剤粒子の付着性が高かった。
4)風下側25m地点における薬剤の飛散粒子は、風速3.0m/s以下では標準量散布ならびに倍量散布とも非検出あるいはごくわずか認められたが、風速3.0m/s以上ではやや多く捕捉された。
5)無人ヘリコプタ防除区の雪腐病発病度は、平成6年の標準量の1回散布区で19.5、倍量散布区で16.5、2回散布ではそれぞれ15.5、13.5と、防除効果が認められ、標準量散布より倍量散布が勝る傾向にあった。平成7年は標準量ならびに倍量の1回散布区における発病度は35.0と、無散布との差が判然としなかった。2回散布では発病度はそれぞれ23.8、26.3と無散布に比べて低く、地上散布区と同等の効果が認められた。
6)イミノクタジン酢酸塩・トルクロホスメチル水和剤Fの無人ヘリコプタによる散布は有効と考えられた。

表1 散布飛行諸元およぴ散布量
年度 散布回数
(回)
希釈借率
(x)
散布量
(L/ha)
平均飛行速度
(㎞/h)
飛行高度
(m)
計画散布量
(L)
実散布量
(L)
計画比 吐出量
(L/min)
H6 1 6 8 15.6(21.0) 4.1 1.2 1.700 1.4 1.4
12 16 16.6(21.0) 3.4 2.4 2.900 1.2 1.4
2 6 8 16.3(21.0) 4.4 0.6 0.550 0.9 1.4
12 16 19.9(21.0) 4.3 1.2 1.080 0.9 1.4
H7 1 6 8 22.0(21.0) 2.2 1.2 1.210 1.0 1.4
12 16 18.8(19.5) 2.6 2.4 2.430 1.0 1.3
2 6 8 17.6(19.5) 2.6 0.6 0.900 1.5 1.3
12 16 17.6(18.0) 3.2 1.2 1.315 1.1 1.2
注)平均飛行遼度の( )の数値は吐出量から算出した適正散布飛行速度
表2散布薬剤粒子付着状況(表面)
年度 散布
回数
(回)
希釈
倍率
(x)
散布量
(L/ha)
付着
粒子数
(個/㎡)
平均径、
VMD
(μm)
被覆
面積率
(%)
付着
指数
H6 1 6 8 46.6 221 2.0 A6
12 16 130.8 181 3.8 A7
2 6 8 66.3 205 2.1 A6
12 16 117.7 187 3.4 A7
H7 1 6 8 14.8 165 0.3 A4
12 16 83.4 139 1.2 A6
2 6 8 7.5 286 0.5 A4
12 16 50.4 139 0.8 A5
表3 防除効果
   
年度 処理区 希釈
倍率
(X)
散布量
(L/ha)
発病度 備   考
H6 無人ヘリコプタ散布 1 6 8 19.5 病原菌割合
12 16 16.5 褐色小粒薗核:85%
2 6 8 15.5 黒色小粒薗核:5%
12 16 13.5 紅色雪腐病:10%
地上散布   500 1000 43.0 イミノクタジン酢酸塩・
メブロ二ル水和剤
慣行散布       12.7 フルアジナム水和剤、12月2日
無散布       43.0  
H7 無人ヘリコブタ散布 1 6 8 35.0 病原菌割合
12 16 35.0 褐色小粒薗核:90%
2 6 8 23.8 黒色小粒菌核:5%
12 16 26.3 紅色雷腐病:5%
地上散布 1 500 1000 35.0 イミノクタジン酢酸塩・
トルクロホスメチル水和剤F
2 500 1000 22.5  
無散布       35.0  

4.成果の活用面と留意点
 1)雪腐病防除の墓本である根雪直前の散布を守る。
 2)散布後から根雪までの気象の経過によっては再散布を行う。
 3)登録薬剤の敵布に限定される。

5.残された間題とその対応