【指導参考事項】
成績概要書 (作成 平成9年 1月)
課題の分類 研究課題名:給餌方式および夜間点灯がめん羊の分娩時刻に及ぼす影響 (分娩時刻調節による省力的子羊生産技術) 予算区分:道単 担当科:滝川畜試研究部衛生科・めん羊科担当者 試験期間:平5−7年度 協力・分担関係:なし |
1.目的
近年、牛や豚では夕方から夜間に飼料を給与すると分娩が昼間に集中することや、ラットやサルでは光周期によって分娩のタイミングが影響を受けるということが報告されている。そこで本試験では、給餌方式および夜間の点灯方式が、めん羊の分娩時刻にどのような影響を及ぼすかについて検討した。さらに、これらの処理が生体リズムに与える影響についても検討を加えた。
2.方法
1)サフォーク雌羊の分娩時間帯に関する調査
2)給餌方式および夜間点灯による分娩時刻の調節
(1)夜給餌が雌羊の分娩時刻に及ぼす影響
(2)給餌回数が雌羊の分娩時刻に及ぼす影響
(3)夜間点灯方式の違いが分娩時刻に及ぼす影響
3)生体リズムと分娩時刻の関係
(1)給餌時刻が妊娠雌羊の生体リズムに及ぼす影響
(2)子宮収縮およびホルモン分泌の日内変動と分娩時刻との関係
3.結果の概要
1)滝川畜産試験場において1989年から1995年に分娩したサフォーク雌羊延べ1,717頭の昼間分娩率(6時〜18時、以下同様)は54.6%であった。これらの雌羊は、分娩シーズンに朝夕2回給餌および一晩中点灯する全明方式によって管理されていた。
2)−(1)給餌時刻が雌羊の分娩時刻に及ぼす影響を全明条件下で検討した。昼間分娩率は、夜給餌区29.2%(14/48)、朝夕給餌区64.8%(35/54)と、夜給餌区は朝夕給餌区に対して有意に昼間分娩率が低下した(図1)。
2)−(2)給餌回数が雌羊の分娩時刻に及ぼす影響を全明条件下で検討した。昼間分娩率は朝1回給餌では58.3%(14/24)、朝夕2回給餌(12/20)では60.0%と差はなかった(表1)。
2)−(3)朝1回給餌のときの夜間照明方式が雌羊の分娩時刻に及ぼす影響を検討した。昼間分娩率は、全明区では57.1%(12/21)、長日区では45.8%(11/24)、自然日長区では45.8%(11/24)と、暗期のある照明方式で低下する傾向がみられた(表2)。
3)−(1)各6頭の妊娠羊を分娩予定の2週前から夜または朝に給餌し、血中コルチゾール濃度の日内リズムの変化を検討したところ、給餌処理開始11日には夜給餌区の3頭が夜型に移行し、昼間分娩率は夜給餌区では33%、朝給餌区では67%となった。
3)−(2)4頭のの妊娠羊を用いて子宮収縮及び血漿コルチゾール濃度の日内変動の有無、ならびに分娩時刻との関連性についても詳細に調べた。その結果、分娩の数日前から子宮収縮頻度および血漿コルチゾール濃度に日内変動が認められ、この子宮収縮頻度の高い時間帯に陣痛が始まるように見受けられた。
以上のことから、牛で行われている夜間給餌は、めん羊では夜間の分娩割合を増加させることから、昼間分娩を望む場合には昼間に給餌する必要があること。1日中明るい全明状態では、明暗のリズムがある照明方式よりも、夜間分娩率を減少する傾向が認められ、全明条件下での朝1回または朝夕2回給餌により、60%強の昼間分娩率が期待できることが明らかとなった。
図1 夜給餌がめん羊の分娩時刻および
昼間分娩率に及ぼす影響
表1 飼料の給与回数が分娩時間帯に及ぼす影響
処理区 | 頭数 | 昼間分娩率 (6〜18時) |
朝1回給餌 | 24 | 58.3% |
朝夕2回給餌 | 20 | 60.0% |
表2 夜間点灯方式が分娩時間帯に及ぼす影響
処理区 | 頭数 | 昼間分娩率 (6〜18時) |
全明処理 | 21 | 57.1% |
長日処理★ | 24 | 45.8% |
自然日長 | 24 | 45.8% |
4.成果の活用面と留意事項
1)夜間照明には蛍光灯を用い、めん羊の眼の高さで80lux以上、(一番暗いところでも40lux以上)の照度を確保する。白熱灯に関しては試験を行っていない。
5.残された問題とその対応
1)本試験よりも早期からの夜間点灯が昼間分娩率に及ぼす影響についてはさらに評細な検討が必要である。
2)給餌方式および光周期以外で分娩時刻に影響を及ぼす可能性のある要因(飼料の種類、管理作業に伴う視覚・聴覚・嗅覚刺激、騒音の日内変化、ストレス等)については未検討であり、今後、明らかにしていく必要がある。