【指導参考事項】
成績概要書 (作成 平成9年 1月)
課題の分類 研究課題名:2)敷料用資材の探索と節減法 オガクズに代替する資材の敷料特性ならびに再利用による節減法 (新敷料資材の探索と節減法の開発) 予算区分:道単 担当科:新得畜試 家畜部 肉牛飼養科 生産技術部 環境資源科 根釧農試 研究部 作物科 試験期間:平6−8年度 協力・分担関係:なし |
1.目的
オガクズや麦稈と代替可能な新しい敷料資材の検討を行い、資源量の拡大を図る。また、一度用いた敷料をリサイクルすることにより、年間使用量の節減効果を検討する。
2.試験研究方法
(1)アンケート方式による敷料利用実態調査
十勝農試・天北農試・中央農試の各専技室に調査協力を依頼し、周辺地域の敷料利用状況の調査を行った。
(2)敷料資材の特性比較
新聞古紙・裁断ダンボール・バガス・炭化オガクズ・椎茸廃培地・粉砕木材・モミガラ・オガクズを供試資材として用い,容水量や蒸散性などの物理的特性を比較調査した。このうち新聞古紙・裁断ダンボール・バガス・モミガラ・オガクズについては、牛床への敷き込み試験を実施し、経過日数に伴う敷料表面の水分含量や資材間における牛の行動の違いについて調査した。
(3)オガクズ敷料の再利用の検討
一度敷料として用いたオガクズを堆積・発酵させ(乾燥過程)、水分含量の変化を調べた。再利用試験では、単位面積あたりの敷き込み量や新しいオガクズとの混合により節減量の検討を行った。
(4)敷料を再利用している農場事例調査
強制乾燥により敷料の再利用を実施している農場事例を調査し。(3)の試験結果を補足した。
3.結果の概要・要約
(1)アンケート調査の集計結果を表1に示した。調査地域別では、「十勝」と「中央」で敷料に困っている割合が高かった。飼養家畜別で見ると、「乳牛」および「乳・肉複合」で困っている割合が高く、「肉牛」では困っているとの回答は3割以下であった。また、飼養頭数が101頭以上の大きな農場で、敷料に困っている割合が高かった。
(2)調査に用いた資材の敷き込み量を表2に示した。バガスを除いて、乾物量で約300kg〜350kgを用いた。
牛床へ敷いた時の水分含量の変化を図1に示した。オガクズと比較して、新聞古紙および裁断ダンボールで水分含量の上昇が緩慢であった。モミガラも、図1に示すようにオガクズと同様の水分増加が見られ、糞尿をトラップする資材として問題は無いと考えられた。敷き込み量の少なかったバガスは、オガクズと比較して約半分の日数しか使用できなかった。本試験の結果、どの資材を用いても1日1頭(体重500kgとする)あたり換算で5kgDM〜6kgDMは必要だと考えられた。
敷料資材の特性評価を表3に示した。本試験で用いた4種類の中には、特に問題のある資材はなかった。ただし、それぞれに欠点もあるため利用する際には考慮すべきだろう。(床面コンクリート製の追い込み牛舎で群飼育する場合)
(3)乾燥過程の敷料温度ならびに水分含量の変化を図2に示した。ショベルカーで1週間に1〜2回の切り返しを行ったが、水分の低下は容易に進まなかった。再利用を目的とし、敷料(オガクズ)を発酵熱と切り替えしによって乾燥させるためには、長い期間を要するものと考えられる。本試験の条件下でオガクズを再利用した場合、年間の節減量は6%程度にしかならないと試算された。
(4)通風乾燥施設を利用した敷料の再利用により、年間の敷料費を2/3〜1/2に節減できる事例があった。通風乾燥方式の事例では、通風時間や通風間隔などにより敷料の乾燥効率は大きく変化した。
表1 敷料利用状況アンケート1)集計表
N | 敷料に 困っている |
十分 確保できる |
|
調査地域 | % | ||
(1)十勝 | 35 | 45.7 | 54.3 |
(2)天北 | 14 | 14.3 | 85.7 |
(3)中央 | 31 | 48.4 | 51.6 |
飼養家畜の種類 | |||
(1)乳牛 | 37 | 56.8 | 43.2 |
(2)肉牛 | 36 | 25.0 | 75.0 |
(3)乳・肉複合 | 7 | 42.9 | 57.1 |
家畜の飼養頭数 | |||
(1)0頭〜100頭 | 48 | 33.3 | 66.7 |
(2)101頭〜300頭 | 24 | 54.2 | 45.8 |
(3)301頭以上 | 8 | 50.0 | 50.0 |
表2 資材の敷き込み量1)
資材名 | 敷き込み量 |
新聞古紙 | 300kgDM |
裁断ダンボール | 360 |
モミガラ | 290 |
バガス | 145 |
オガクズ | 325 |
図1 敷き込み期間における敷料表面の水分含量
図2 乾草過程におけるオガクズの温度ならび水分含量の変化
表3 敷料資材の特性評価
資材名 | 水分含量 | 吸水性 | 乾燥速度 | 堆肥化 | 総合評価 |
新聞古紙 | 低 | ○ | ○ | △ | ○〜△ |
裁断ダンボール | 低 | △ | ○ | △ | ○〜△ |
モミガラ | 低 | × | ◎ | △ | ○〜△ |
バガス | 低 | △ | ○ | ○ | ○〜△ |
オガクズ | 中 | ◎ | △ | ○ | ◎ |
4.成果の活用面と留意点
(1)敷料用に加工された新聞古紙およびダンボールは購入価格が高いため。現段階では経済的メリットは小さい。
(2)新聞古紙については、量的にはわずかと思われるが、牛が食べるため、飼料摂取量への影響については留意する必要があろう。
(3)本試験で用いた資材については、堆肥として施用した場合の作物に対する肥料効果については未検討である。
5.残された問題とその対応
(1)再利用における敷料乾燥方式の検討(通風方法・経済性など)。