【指導参考事項】
成績概要書 (作成 平成9年 1月)
課題の分類 研究課題名:NAPASSを活用した道産野菜の出荷戦略支援システムの開発 予算区分:道費 担当科:中央農試経営部流通経済科 試験期間:平成6−8年度 協力・分担関係:なし |
1.目的
NAPASSから検索した市況データを用いて行う市場動向分析方法の検討と分析システムの開発及び、全国の市場を対象にした最適分荷計画を策定する出荷計画シミュレーション分析法を確立し、市場情報や市場の需給条件を考慮した道産野菜の出荷戦略支援システムとして提案する。
2.試験研究方法
1)NAPASSを活用した市場動向分析システムの開発
2)道産野菜の出荷計画モデルの構築及び出荷計画シミュレーション分析法の検討
3.結果の概要
1)北海道では野菜の作付増加に伴って道外市場への移出拡大が必要となっている。そこで、都府県市場へ有利に出荷するための出荷戦略支援システム(以下、戦略システムと略す)を開発した。戦略システムは、競合産地分析システムと出荷計画シミュレーションで構成される。
2)競合産地分析システムは、都府県市場の市場動向の実態分析を行うシステムである。北海道が出荷している都府県市場の実態(出荷時期別、産地別入荷量と価格等)がパソコンで容易に確認することができるため、①何を、②いつ、③どこに、④どれだけ出荷しているか、という市場実態の解明ができる。北海道と出荷時期が重なる競合産地の特定やその産地の出荷状況が把握できるため、既に出荷している産地では出荷時期の調整や新規市場の開拓、また、移出を新規に予定している産地では出荷計画を策定するための有益な情報として活用できる。具体的に競合産地分析システムで道産キャベツの実態をみると、関東市場を主体にシェアを拡大しつつ、最近は京都、大阪市場の関西市場への進出が著しい。そして、大阪市場におけるキャベツの主産地である長野の出荷実態をみると、定時、定量出荷の対応が明らかである(表1)。
3)出荷計画シミュレーションは出荷計画の策定を目的としており、①何を、②いつ、③どこに、④どれだけ出荷するかの最適解を具体的に提示できる。この最適解は市場の需給条件を考慮した合理的な計画である。出荷計画シミュレーションを用いて道産ダイコン・ホウレンソウ・キャベツの出荷計画を検討すると、北海道市場から都府県市場への移出割合の拡大と出荷時期の調整によって期待収益が増加した。ダイコンについて具体的な計画をみると、7月、8月は出荷量を押さえ、9月、10月は関東向けを中心に出荷量を増加させる。出荷時期総体では道内出荷を大幅に減らして、関東向けの大幅な増加、一部九州向けも増加させる(図1、図2)。
4)戦略システムの計画主体は、広義には北海道や経済連、狭義には単協や出荷組合組織であり、計画主体が出荷計画を策定する場合は、戦略システムからの情報と合わせて、荷受け会社からの実状や産地からの生産情報等を考慮して計画することが必要である。
表1 北海道産キャベツと長野産キャベツの分荷市場
◆キャベツ 北海道産 日入荷量:t | ◆キャベツ 長野産 日入荷量:t | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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図1 道産ダイコンの月別最適出荷計画
図2 道産ダイコンの市場別最適出荷計画
注)1)実績は「青果物産別卸売統計」1985〜1994年の北海道産ダイコンの平均数量。
計画1は確率的2次計画法による期待収益最大化法(収益追求計画)の解。
計画2は同法による確率最大化法(収益安定計画)の解。
2)市場は全国農業地域ブロックの9区分である。
4.成果の活用面と留意点
1)本成績で行った出荷計画シミュレーションでは、北海道の移出品目として増加が著しいダイコン、ホウレンソウ、キャベツの3品目について行った。これ以外の品目の出荷計画については、新たな計測(需要関数、収益関数)を行うことにより可能である。
2)出荷計画の計画年次は、ここ数年間の中期計画とする。しかし、大きな経済変動や作柄変動が発生した場合はモデルの変更が必要である。
3)野菜産地が出荷計画を策定する場合、戦略システムの情報と合わせて、荷受け会社からの実状や生産者からの生産情報等を考慮して計画することが必要である。
5.残された問題とその対応
出荷計画モデルの現地適応性の問題や生産条件を考慮した生産・出荷計画モデルの構築、生産情報(RAIS)を考慮した市場動向分析の開発等が残されている。生産・出荷計画モデルについては新規課題として取り組む予定である。