新品種候補(作成 平成11年1月)
総合農業 作物生産 夏作物 てんさい てんさい-Ⅰ-2- 北海道 作物 畑作 てんさい てんさい新品種候補系統[北海73号」の概要 北海道農試・畑研セ・甜菜育種研究室 |
1.特性一覧表
系統名 | 北海73号 | 組 合 せ | 「KMS-5」 × 「NK-210BR」 |
特性 |
長所 1.収量性は「モノホマレ」より高く、 特に根重が優れる |
短所 1.根腐病抵抗性は「モノホマレ」より 弱く“弱”である |
採用道府県及び 普及見込み面積 |
北 海 道 5,000 ha |
系統・品種 形 質 |
北海73号 |
モノホマレ (標準・対象) |
倍数性 葉姿 葉長 葉数 葉形 クラウンの大小 根形 分岐根 露肩 褐斑病抵抗性 根腐病抵抗性 そう根病抵抗性 抽苔耐性 耐湿性 |
二 倍 体 やや直立 や や 長 中 やや極皮針 や や 小 やや短円錐 少 や や 少 や や 弱 弱 や や 弱 強 や や 弱 |
二 倍 体 直 立 長 や や 多 皮 針 小 円 錐 少 中 や や 弱 や や 弱 や や 弱 強 や や 弱 |
各試験場における試験成績(平成8〜10年の平均値)
試験場所 |
品種・ 系統名 |
根腐症 状株率 (%) |
褐斑病 指 数 |
根 重 (t/10a) |
根 中 糖 分 (%) |
糖 量 (kg/10a) |
対「モノホマレ」比(%) | ||
根重 | 根中 糖分 |
糖量 |
|||||||
北 農 試 中央農試 上川農試 北見農試 十勝農試 |
モノホマレ 北海73号 モノホマレ 北海73号 モノホマレ 北海73号 モノホマレ 北海73号 モノホマレ 北海73号 |
0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.0 |
0.1 0.0 0.0 0.0 0.5 0.7 0.2 0.1 0.5 0.5 | 6.28 6.84 7.61 8.07 7.90 8.16 5.78 6.24 6.09 6.61 | 16.73 16.94 16.60 16.76 16.95 17.47 18.32 18.58 17.20 17.35 |
1,045 1,157 1,259 1,345 1,338 1,422 1,059 1,156 1,045 1,140 | 100 109 100 106 100 103 100 108 100 109 | 100 101 100 101 100 103 100 101 100 101 |
100 111 100 107 100 106 100 109 100 109 |
5場所平均 | モノホマレ 北海73号 |
0.0 0.1 | 0.3 0.3 | 6.73 7.18 | 17.16 17.42 | 1,149 1,244 | 100 107 | 100 102 | 100 108 |
品質調査成績(北農試、中央、上川、北見、十勝の5場所平均値、平成8〜10年)
品 種 系統名 |
有害性非糖分(meq/100g) | 不純物価 (%) |
対「モノホマレ」比 | |||||
アミノ態窒素 | カリウム | ナトリウム | アミノ態窒素 | カリウム | ナトリウム | 不純物価 | ||
モノホマレ 北海73号 |
1.66 1.69 |
4.48 4.46 |
0.47 0.57 |
4.14 4.15 |
100 102 |
100 100 |
100 121 |
100 100 |
特性検定試験成績 (北農試、十勝、北見、根釧、中央、平成8〜10年の平均値)
品 種 系統名 |
褐斑病 発病指数 |
根腐病 発病指数 |
そう根病 糖量(kg/10a) |
抽苔耐性 抽苔率(%) |
耐湿性 腐敗度 |
|||
北農試 人為接種 |
北農試 人為接種 |
十勝農試 人為接種 |
北農試 少発生 |
北見農試 中・多発生 |
北農試 人為処理 |
根釧農試 自然条件 |
中央農試 滞水処理 |
|
モノホマレ 北海73号 |
3.67 3.69 |
2.41 2.83 |
2.05 2.10 |
827 938 |
407 435 |
27.0 15.0 |
0.0 0.0 |
74.5 70.3 |
現地検定試験成績(平成9〜10年、現地17か所の平均値)
品 種 系統名 |
根腐症 状株率 (%) |
褐斑病 抵抗性 (発病程度) |
根重 (t/10a) |
根中 糖分 (%) |
糖量 (kg/10a) |
対「モノホマレ」比(%) | ||
根重 | 根中 糖分 |
糖量 | ||||||
モノホマレ 北海73号 | 0.8 2.3 | 0.4 0.5 | 6.33 6.79 | 16.29 16.30 | 1,031 1,107 | 100 107 | 100 100 | 100 107 |
2.「北海73号」の特記すべき特徴
ドイツのクラインワンツレ−ベン育種会社が育成した種子親系統「KMS-5」に、北海道農業試験場が育成した花粉親系統「NK-210BR」を交配し、育成した一代雑種系統であり、根中糖分は「モノホマレ」並であるが、根重及び糖量は「モノホマレ」より多く多収性である。
3.奨励品種に採用しようとする理由
昭和61年にてんさいの糖分取引制度が導入されて以来、北海道農業試験場では高糖性、高品質かつ糖量の多い品種を目標に育種を進めてきた。その結果、高糖・高品質型及び中間型の品種を育成したが、現在の収量水準では糖収量がやや少ないため、糖分を維持した多収性品種の育成に対する要望が高まっている。
「北海73号」は、根重が「モノホマレ」より明らかに多く、根中糖分も「モノホマレ」並を維持し、糖量が「モノホマレ」よりも11%(育成地)多く、現在栽培されているてんさい品種の中で最も多収性を示す系統の一つである。さらに修正糖分及び不純物価は「モノホマレ」並であるため、品質特性も「モノホマレ」並である。また、根腐病抵抗性は“弱”であるが、褐斑病抵抗性は「モノホマレ」並の“やや弱”、抽苔耐性が「モノホマレ」並の“強”であり、これらは一般品種の現状に照らして特に劣る形質ではない。
以上のことから、「北海73号」を北海道の奨励品種として、北海道一円のてんさい栽 培地帯に普及することにより、糖収量が向上し、農家の収益性向上に寄与できるものと考 えられる。
4.普及見込み地帯
北海道一円
図 北海道における標準品種「モノホマレ」との収量対比(%) (平成8〜10年)
5.栽培上の注意
1)根腐病抵抗性は“弱”なので、適正な輪作を行うとともに適期防除に留意する。
2)耐湿性は“やや弱”なので、湿害の懸念されるほ場での栽培は避ける。