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研究課題名：ぶどう根域制限栽培における出荷時期延長技術 （ブドウハウス栽培における出荷時期調節技術の確立） 予算区分：道費 担当科：中央農試 果樹部 果樹第二科 研究期間：平７−10年度 協力分担関係：なし |
１．目的
生食用ぶどう栽培の収益性向上のため、ぶどうが品薄になる11月以降に出荷可能な栽培法および貯蔵法の検討、根域制限栽培において継続的に高品質な果実生産を行うための施肥方法の検討を行う。
２．方法
供試品種「ルビーオクヤマ」、根域制限栽培、ハウス栽培（農ビ使用）
１）後期保加温による収穫期間の延長
試験区 無加温、加温：10月以降ハウス内が５℃以下にならないように加温
試験期間H8〜10、樹齢３年生(H8)、供試樹数 加温12樹、無加温５樹
２）貯蔵試験
７年 果実を入れた段ボール箱を厚さ0.05mmのポリエチレンフィルム（以下ポリ）で密封
８年 果実を入れたバットの表面をポリで軽く被覆
10年 1.無包装 2.新聞紙で被覆 3.ポリで被覆 4.新聞紙を敷き、ポリで被覆
貯蔵温度１℃（H7〜10）湿度90%（H10） 樹齢 H7：7年生、H8：8年生、H10：5年生調査果房数 H7:１区６房、H8:１区11房、H10:１区10房２反復
３）光線選択農ビの効果の検討 試験年次H7,H9,H10
試験区 カット区：近紫外線不透過型農ビ（透過波長域380nm以上、近紫外線透過率0%）
対照区：通常の農ビ使用
供試樹樹齢 H7:7年生、H9､10:4､5年生 供試樹数 H7:各10樹、H9､10:各12樹
４）根域制限栽培における施肥方法に関する試験
①緩効性肥料LP40単用 ②LP100単用 ③LP140単用 ④LP100＋化成肥料 ⑤LP140＋化成 ⑥液肥 H8:N9.6g､H9:N11.4g⑦液肥 H8:N6.4g､H9:N7.6g⑧化成肥料１回⑨化成肥料２回
液肥の区以外は窒素成分量15g
試験年次 H8〜H10 樹齢3年生(H8) 供試樹数 各区5樹
３．結果の概要
（１）「ルビーオクヤマ」は10月上中旬に成熟し、無加温でそのまま維持した場合、10月下旬まで収穫可能である。加温を行いハウス内最低気温を５℃を下回らないようにした場合は11月上中旬まで収穫時期を延長できる。
（２）無加温で栽培した「ルビーオクヤマ」の果実は１℃の冷蔵庫で５週間程度の貯蔵では新鮮な状態を維持することが可能である。
（３）近紫外線不透過型の農ビを生食用ぶどうのハウス栽培に用いた場合、果粒の肥大効果があったが収穫期間を延長する効果は無かった。
（４）根域制限栽培での継続的な果実生産のためには、用土が60リットルの場合、肥料の形態にかかわらず窒素成分にして15g１回の施肥でよい。
（５）経済性を試算した結果「ルビーオクヤマ」を高単価になる11月に出荷した場合、10月に出荷するよりも収益性の向上が期待できる。
第１表 後期保加温での果実品質
| 年 | 区別 | 収穫 月日 | 果房 長cm | 果房 重ｇ | 果粒 重ｇ | 糖度 brix | 酸 g/100ml | 所見 |
| ８年 | 無加温 | 10.14 | 14.0 | 271 | 7.4 | 16.2 | 0.77 | 可食 |
| 加温 無加温 | 10.21 10.21 | 13.9 17.2 | 290 369 | 9.4 10.5 | 17.6 17.2 | 0.61 0.62 | 外観、食味良好 外観、食味良好 | |
| 加温 無加温 | 10.28 10.28 | 14.2 16.8 | 282 356 | 9.1 10.4 | 19.6 18.6 | 0.53 0.59 | 外観、食味良好 果粒しなびる | |
| 加温 | 11. 5 | 15.5 | 265 | 9.4 | 19.8 | 0.51 | 外観、食味良好 | |
| 加温 | 11.12 | 15.1 | 282 | 9.3 | 19.4 | 0.50 | 果粒若干しなびる | |
| ９年 | 加温 無加温 | 10.13 10.13 | 17.0 19.0 | 559 395 | 10.8 9.0 | 16.9 15.8 | 1.01 0.92 | 着色不完全、やや未熟 着色不完全、やや未熟 |
| 無加温 | 10.22 | 16.1 | 418 | 9.9 | 17.9 | 0.84 | 外観、食味良好 | |
| 加温 | 10.24 | 16.8 | 469 | 9.8 | 16.3 | 1.00 | やや未熟 | |
| 無加温 | 11. 4 | 19.5 | 395 | 8.9 | 18.9 | 0.80 | 果粒若干しなびる | |
| 加温 | 11.11 | 18.2 | 444 | 9.7 | 16.5 | 0.87 | 外観、食味良好 | |
| 10年 | 加温 無加温 | 10. 9 10. 9 | 16.6 17.3 | 462 556 | 9.8 11.7 | 16.5 16.9 | 0.86 0.74 | 可食 可食 |
| 加温 無加温 | 10.19 10.19 | 18.2 16.9 | 413 406 | 9.6 10.7 | 17.3 17.5 | 0.78 0.69 | 外観、食味良好 外観、食味良好 | |
| 無加温 | 10.26 | 16.5 | 354 | 9.7 | 18.4 | 0.65 | 外観、食味良好 | |
| 加温 | 10.29 | 18.3 | 424 | 9.4 | 18.3 | 0.70 | 外観、食味良好 | |
| 加温 | 11. 9 | 17.2 | 410 | 9.9 | 18.5 | 0.69 | 外観、食味良好 | |
| 加温 | 11.19 | 18.4 | 454 | 9.7 | 19.5 | 0.71 | 可食 |
第２表 収穫時期別 貯蔵果実の品質（平成７年）
| 区別 | 総合鮮度 1〜5 | 調査月日 (貯蔵日数) | 目減 り％ | 果房 重ｇ | 果粒 重ｇ | 糖度 brix | 酸g/ 100ml | |||
| 10.31 | 11. 8 | 11.15 | 11.22 | |||||||
| 収10. 4 穫10.11 月10.18 日10.25 | 4.8 5 5 5 | 4.7 4.7 5 5 | 4.7 4.7 5 5 | 4.5 5 5 | 11.15(42) 11.15(35) 11.22(35) 11.22(28) | 4.0 2.4 2.4 2.5 | 366 362 384 402 | 10.5 9.7 11.2 10.0 | 16.2 17.1 17.3 17.8 | 0.92 0.81 0.72 0.70 |
第３表 貯蔵方法別 貯蔵果実の品質（平成10年 収穫10/26 貯蔵10/27〜11/30 34日間）
| 区別 | 目減 り％ | 裂果 0〜4 | かび 0〜4 | 果梗 褐変 0〜4 | 総合 鮮度 1〜5 | 果房重 ｇ 11.30 | 果粒重 ｇ | 糖度 brix | 酸g/ 100ml |
| 無包装 新聞 ポリ ポリ＋新聞 | 3.4 2.1 2.0 3.0 | 0.4 0 0.4 0 | 0.1 0 0 0 | 0.1 0 0 0 | 4.8 4.9 4.7 5 | 423 413 368 387 | 10.2 9.5 9.4 9.2 | 18.2 18.5 18.7 19.4 | 0.66 0.78 0.68 0.70 |
４．成果の活用面と留意点
本試験はハウスでの欧州種ぶどうの根域制限栽培で実施したことを考慮する。
５．残された問題点
（１）後期加温で栽培したぶどうの貯蔵性
（２）貯蔵期間を延長するための条件の検討
（３）抑制栽培の検討