成績概要書                        (作成 平成12年1月)
課題の分類
研究課題名:水稲種子消毒剤「銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤」
        大量吹き付け処理の水稲苗の生育に対する安全性
         (水稲種子消毒剤変更に係る代替え剤の確認試験)
予算区分: 受 託
担当科:中央農試稲作部 栽培第一科・栽培第二科 上川農試研究部 水稲栽培科
研究期間: 平成11年度   協力・分担関係:
 
1.目 的
 水稲の種子消毒剤「銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤」について、大量吹き付け処理後の貯蔵期間と発芽歩合の関係、および実際の育苗における出芽・苗の生育から、水稲に対する本剤の安全性を検討する。
 
2.方法
 供試品種 : きらら397(中富良野町産)  吹き付け処理:1998年10月16日
 供試薬剤 : 銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤、イプコナゾール・銅水和剤F
 処理方法 : 7.5倍3%吹き付け(通常濃度)、3.75倍3%吹き付け(2倍濃度)
 貯蔵方法 : 低温貯蔵(4℃、湿度45%)および常温貯蔵(製品倉庫で貯蔵)
 発芽試験 : 貯蔵期間1〜6ヶ月、シャーレ内100粒3反復、25℃照明下10日間
 催芽試験 : 貯蔵期間1〜6ヶ月、12℃8日間浸種(浴比1:2、4日目に水交換)、
        シャーレ内100粒3反復、32℃暗黒下24時間、その後25℃3日
 育苗試験 : 6ヶ月常温貯蔵、浸種は加温シャワー方式および留水方式、成苗ポットに3粒づつ、4月21日(中央農試)、4月19日(上川農試)に播種
        
3.結果の概要
1)室内におけるシャーレを用いた発芽試験において、25℃10日目の発芽率は、貯蔵期間(1〜6ヶ月)、薬剤の種類にかかわらず、いずれも 90%以上で薬剤無処理の種子との差は認められなかった(データ省略)。
2)室内における浸種後の催芽試験において、イプコナゾール・銅水和剤Fの大量吹き付け処理では、貯蔵2ヶ月目から32℃24時間後の催芽率の低下がみられたのに対して、銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤の大量吹き付け処理籾の発芽・催芽は、貯蔵条件にかかわらず、ほぼ無処理と同等であった(図1)。
3)実際の育苗において、大量吹き付け処理後6ヶ月常温貯蔵された消毒済種子の催芽率、出芽率、苗の生育について検討した結果、イプコナゾール・銅水和剤Fでは明らかに催芽が遅れ、また出芽の揃いにも問題があったが、銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤では、催芽、出芽および苗の生育にとくに問題はなかった(表1)。
4)ただし、両薬剤処理ともに、ハト胸催芽器によるシャワー加温浸種方式に比べ、留水浸種方式では、無処理よりもやや出芽と苗の生育が遅れる傾向が認められた(表1)。
 

図1 消毒済種子の貯蔵期間と催芽率との関係
注)催芽率は12℃で8日間予浸後、湿らせた濾紙上に32℃で24時間静置し、「ハト胸」になった籾の割合
 

 

 

4.成果の活用面と留意点
 1)水稲種子消毒剤「銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤」7.5倍液3%吹き付け処理は、播種6ヶ月前から実施できる。2)水稲種子消毒剤「イプコナゾール・銅水和剤F」7.5倍液3%吹き付け処理は、1ヶ月を超える長期保存は避ける。3)消毒済種子の使用にあたっては、十分な浸種条件を確保する(浴比、温度、日数、酸素の供給等)とともに、催芽程度を良く確認してから播種を行う。
5.残された問題点とその対応   
  なし