1月19日差し替え版
新品種候補                (作成 平成12年1月)
総合農業 作物生産 夏畑作物 ばれいしょ−Ⅰ-2-052-1
北海道 作物 畑作
ばれいしょ新品種候補系統
                「北海79号」の概要

1.特性一覧表                           北農試 畑研セ ばれいしょ育種研
系統名 ばれいしょ「北海79号」 交配組合せ R392-3 × 69095-17
特性 (長所)
1.いもの休眠期間が長く、貯蔵性が良い。
2.調理適性が優れる。
3.ジャガイモシストセンチュウ抵抗性である。
(短所)
1.休眠が長いため、出芽が遅い。
2.疫病による塊茎腐敗に弱い。
3.中心空洞が発生することがある。
採用道県と普及見込み面積   北海道  1,000 ha
調査場所 育成地 中央農試 上川農試 北見農試
   品種・系統名
形質
北海
79号
男爵薯
(標準)
北海
79号
男爵薯
(標準)
北海
79号
男爵薯
(標準)
北海
79号
男爵薯
(標準)
早晩性 早生 早生 早生 早生 早生 早生 早生 早生
枯凋期 (月日) 8.30 8.31 8.27 8.29 8.29 8.28 9. 7 9. 4
茎長(cm) 49 46 40 39 52 41 48 48
上いも重(kg/10a) 3920 4459 2938 3347 4484 4384 4419 4251
中以上いも重(kg/10a) 3735 3805 2689 2846 4186 3948 4113 3747
上いも平均1個重 (g) 122 92 109 95 116 103 115 94
株当たり上いも数 (個) 6.8 11.2 6.1 8.1 8.7 9.6 8.6 10.0
でん粉価 (%) 15.7 15.0 16.9 14.8 14.9 13.9 16.7 15.4
幼芽の色      
そう性 やや直 中間      
小葉の大きさ      
花の色 赤紫      
いもの形 楕円体      
皮色 白黄 白黄      
肉色 淡黄      
目の深さ ごく浅      
休眠期間 ごく長 やや長      
褐色心腐      
中心空洞 少(無)      
調


剥皮褐変      
水煮黒変      
煮くずれ 少(中)      
肉質 やや粉 や粉      
チップス適性 やや適 不適      
フライ適性 不適      



シストセンチュウ 強(H) 弱(h)      
疫病      
そうか病      
粉状そうか病      
塊茎腐敗 ごく弱      
Yモザイク病      
調査年次 平成10,11年 平成10,11年 平成10,11年 平成10,11年
注)( ):ばれいしょ種苗分類調査基準に基づく特性。

2.ばれいしょ「北海79号」の特記すべき特徴
 いもの休眠期間が長く、貯蔵性が良いので長期出荷が可能である。「男爵薯」に比べて食味が良く、煮物やフライ等の多種類の調理に適する。さらに、いもは目が浅く粒揃いが良いので剥皮歩留りが高く、剥皮褐変や調理後黒変が少なく、業務向けの一次加工に適する。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性である。

3.奨励品種に採用しようとする理由
 北海道産ばれいしょは8月から4月まで全国で高いシェアを占めるが、貯蔵後の春先には品質が落ちるため、生食用は府県産に置き換わる。また、生食用のうち需要が増加している業務向けでは、安価な材料の通年供給が重要であり、より貯蔵性の優れる北海道産ばれいしょが求められている。さらに市場販売向けでは、家庭で洋風料理が可能な油調理適性が求められており、既存の生食用品種では対応が難しい。
 このような背景から育成された「北海79号」は、休眠期間が長く貯蔵性に優れ、貯蔵後の品質劣化が少ないので長期間の供給が可能である。さらに多様な調理に適する特性を併せ持つことから、家庭での消費増加に寄与することが期待される。このように「北海79号」は、北海道産ばれいしょの生産振興に寄与するものと考える。

4.普及見込み地帯
  北海道一円

5.栽培上の注意
1)休眠期間が長いため通常の種いも貯蔵では萌芽および初期生育が遅れやすいので、下記のような扱いが必要である。
 ①休眠期間を短くするために、収穫後D型ハウスなどで仮貯蔵し、凍結のおそれの生じる10月中旬頃までに本貯蔵とする。
 ②休眠明けを早めるために、3月上旬から10℃以上20℃を上限として貯蔵温度を高くし、また、早めの種いも切断を行う。
2)疫病による塊茎腐敗が発生しやすいので、予察情報などを活用し、適正な防除に努める。
3)2L規格以上(180g以上)のいもでは中心空洞が発生することがあるので、茎数の確保に努め、疎植・多肥を避ける。