1月19日差し替え版
新品種候補               (作成 平成12年1月)
総合農業 作物生産 夏畑作物 ばれいしょ I-2-052-2
北海道農業 作物 畑作
 ばれいしょ新品種候補系統
                「北海83号」の概要

1.特性一覧表                        北農試 畑研セ  ばれいしょ育種研
系統名 ばれいしょ「北海83号」 交配組合せ Early Gem × 86002-100
特性 (長所)
1.ジャガイモそうか病に対する抵抗性は強である。
2.白肉で剥皮・調理時の変色が少ない。
3.いもの休眠期間が長く、貯蔵性が良い。
 
(短所)
1.ジャガイモシストセンチュウ
  抵抗性がない。
2.休眠が長いため出芽が遅い。
3.いもが裂開することがある。
採用道県と普及見込み面積   北海道  1,000 ha
調査場所 育成地 中央農試 上川農試 北見農試
品種・系統名
形質
北海
83号
男爵薯
(標準)
北海
83号
男爵薯
(標準)
北海
83号
男爵薯
(標準)
北海
83号
男爵薯
(標準)
早晩性 中早生 早生 中早生 早生 中早生 早生 中早生 早生
枯凋期 (月日) 9.4 8.31 9.3 8.29 8.30 8.28 9.10 9. 4
茎長 (cm) 64 46 50 39 59 41 60 48
上いも重 (kg/10a) 4,714 4,459 3,249 3,347 3,924 4,384 3,963 4,251
中以上いも重 (kg/10a) 4,120 3,805 2,564 2,846 3,286 3,948 3,415 3,747
上いも平均1個重 (g) 90 92 79 95 85 103 98 94
株当たり上いも数 (個) 11.9 11.2 9.6 8.1 10.6 9.6 9.1 10.0
でん粉価 (%) 15.6 15.0 17.3 14.8 15.6 13.9 17.0 15.4
  幼芽の色      
そう性 中間 中間      
小葉の大きさ      
花の色 赤紫      
いもの形 楕円体      
皮色 白黄      
肉色      
目の深さ やや極      
休眠期間 極長 やや長      
褐色心腐      
中心空洞      
調


剥皮褐変      
水煮黒変      
煮くずれ      
肉質 やや粉 やや粉      
チップス適性 不適 不適      
フライ適性 不適 不適      



シストセンチュウ 弱(h) 弱(h)      
疫病 やや弱      
そうか病      
粉状そうか病      
塊茎腐敗 やや強      
Yモザイク病      
調査年次 平成10,11年

2.ばれいしょ「北海83号」の特記すべき特徴
 強度のジャガイモそうか病抵抗性を示し、そうか病発生地帯でも栽培可能な生食用の系統である。早晩性は「男爵薯」よりやや遅く「農林1号」より早い中早生に属する。いもは白肉でラセット皮を有し、目が浅く粒揃いがよい。業務向けのサラダ・コロッケなどの一次加工に適する。休眠が長く貯蔵性に優れ、長期供給が可能である。シストセンチュウ抵抗性は有していない。

3.奨励品種に採用しようとする理由
 ばれいしょにクレーター状の病斑を形成するそうか病は、塊茎の外観品質を劣化させて市場価値を大きく下げることから、生食および加工食品用の生産阻害要因となっている。近年、そうか病発生地帯は拡大しつつあり、抵抗性品種を中心とする総合的な対策法の確立は緊急を要している。さらに、ガット・ウルグアイラウンド合意に伴うでん粉の関税化等をひかえ、でん粉から加工食品等への用途転換を迫られており、そうか病発生割合の高いでん粉原料用地帯で栽培可能な強度の抵抗性を有する品種開発が求められている。
 このような背景から育成された「北海83号」は、ジャガイモそうか病に対して強い抵抗性をもつことから、そうか病汚染地での栽培が可能である。また白肉でやや粉質であることから「男爵薯」と同様な調理適性があり、剥皮歩留りが高く変色も少なく長期貯蔵が可能なことから、業務向けとしての利用が可能である。さらにアメリカの主要品種であるラセットバーバンクの孫であり、日本で初めてのラセット皮の品種として外観に特徴があることから、特定販路の可能性がある。「北海83号」を奨励品種に採用することにより、そうか病の発生に不安のあるばれいしょ生産圃場において安定した栽培が可能になるばかりでなく、外観に特徴があることからも、北海道のばれいしょ生産に寄与するものと考える。

4.普及見込み地帯
   北海道一円   (そうか病発生地帯)

5.栽培上の注意
1)休眠期間が長いため通常の種いも管理・貯蔵では萌芽が遅れやすいので、下記のような扱いが必要である。
 ①休眠期間を短くするために、収穫後D型ハウスなどで仮貯蔵し、凍結のおそれの生じる10月中旬頃までに本貯蔵とする。
 ②休眠明けを早めるために、3月上旬から10℃以上20℃を上限として貯蔵温度を高くし、また 早めの種いも切断を行う。
2)ジャガイモシストセンチュウ汚染地域の栽培には、抵抗性を有しないので不適である。
3)いもが裂開することがあるので、過剰な施肥など急激な肥大を促す栽培管理を行わない。