(作成 平成12年1月)
ばれいしょ新品種候補系統 「P971」
北海道立中央、上川、道南、十勝、根釧、北見農業試験場
農林水産省北海道農業試験場
北海道種馬鈴しょ協議会
1.特性一覧表
系統名   ばれいしょ「P971」 組合せ   B5141−6×WISCHIP
特性 長所 短所
1)長期低温(9℃)貯蔵後のポテト
チップス加工適性が優れ、収穫翌年の
6月まで利用可能である。
2)塊茎内部障害が少ない。
3)塊茎腐敗に対し、抵抗性強である。
1)ジャガイモシストセンチュウ抵抗性がない。
2)でん粉価が低い。
3)やや低収である。
普及対象地域と普及見込み面積 北海道一円。ただし、ジャガイモシストセンチュウ汚染地域は除く。
500ha
調査場所 中央農試 上川農試 十勝農試 北見農試
  P971 トヨシロ P971 トヨシロ P971 トヨシロ P971 トヨシロ
萌芽期 (月・日) 5.28 5.29 5.29 5.30 5.30 6.02 6.04 6.08
枯凋期 (月・日) 9.28 9.06 10.03 9.08 9.21 9.07 10.01 9.16
終花期の茎長 (cm) 68 51 71 58 81 64 89 78
上いも数 (個/株) 11.8 8.7 12.7 9.9 11.8 8.4 11.4 9.6
上いも平均一個重 (g) 79 102 92 115 82 118 92 125
上いも収量 (kg/10a) 4,034 3,769 4,674 4,533 4,169 4,355 4,728 5,348
同上比 107 100 103 100 96 100 88 100
中以上いも収量 (kg/10a) 3,256 3,275 4,182 4,192 3,422 4,026 4,059 4,632
同上比 99 100 100 100 85 100 88 100
でん粉価 (%) 13.8 16.3 13.6 16.6 14.4 16.4 16.0 16.8
花色  
塊茎の形状 偏球
皮色 黄褐
目の深浅
肉色
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性 弱(h) 弱(h)  
塊茎腐敗抵抗性 やや弱
疫病圃場抵抗性
ジャガイモYモザイク病抵抗性
そうか病抵抗性
中心空洞の多少
褐色心腐の多少
ポテトチップス品質 収穫時
貯蔵後 やや良 不良
調査年次 平成9年〜11年

2.ばれいしょ「P971」の特記すべき特徴

 「P971」は長期低温(9℃)貯蔵向けポテトチップス原料用系統で、収穫翌年の6月まで利用可能である。

3.北海道で奨励品種に採用しようとする理由

 油加工用の代表として利用されているポテトチップスの原料には、中早生の「トヨシロ」を中心に、早生の「ワセシロ」、中晩生の「農林1号」が用いられてきた。年間の原料供給体制は、8月中旬から翌5月中旬まで道産原料を使用し、5月下旬から8月上旬まで九州及び関東南部産の原料を使用している。貯蔵温度は萌芽、減耗、腐敗、貯蔵コスト等を考えると低温の方が好ましい。しかし、貯蔵を行う道産の「トヨシロ」と「農林1号」は、10℃以下の低温貯蔵をすると還元糖が増加しチップカラーが悪くなるため、加工前に加温処理が必要である。そこで低温で長期貯蔵ができ、原料品質と規格内率・製品歩留りの高い品種が要望されてきた。

 「P971」は10℃以下(9℃)で貯蔵してもポテトチップスの色が良く、均一である。また、現行品種ではチップカラー不良により使用できない小粒(40〜60g)でも良好である。また、褐色心腐、中心空洞、塊茎腐敗等の障害が少ない、形状が円い等、ポテトチップス原料として優れている。良品質のポテトチップスを供給でき、かつ、ポテトチップス生産工程での選別・極大粒塊茎の半裁処理等の省力化も可能で、実需者にとっても望まれる特性を有している。

 「P971」は「トヨシロ」に比べ、必ずしも多収性は示されないが、塊茎の障害が少なく、販売可能数量は必ずしも劣るものではない。小粒も加工適性が高くポテトチップス用として販売可能である。でん粉価が低いが、ポテトチップス品質への悪影響はない。栽植密度を多少疎植に設定しても減収することはなく、必要種いも量を低減できるなど、契約生産者の収益面で有利性が期待できる。

 現在、道産原料は5月中旬まで使用されているが、「P971」なら6月まで使用でき、道産原料の需要拡大にも貢献できる。

 以上のことから、4〜6月のポテトチップス原料用として、「P971」を「トヨシロ」「農林1号」の一部に置き換え、道産ばれいしょの振興に寄与する。

4.普及対象地域及び普及見込み面積

(1)普及対象地域 北海道一円、ただし、ジャガイモシストセンチュウ汚染地域は除く。

(2)普及見込み面積 9,500ha

5.栽培上の注意

(1)収量、でん粉価の向上を図るため、早植え、浴光催芽などの基本技術を励行し、完熟塊茎の安定生産に努める。

(2)匐枝が長く、緑化塊茎が発生しやすいので、十分な培土を早めに行う。

(3)匐枝が長く、塊茎着生位置が深いので、ハーベスタの掘り取り深度に注意する。

(4)多肥栽培は避け、やや疎植にする。