成績概要書                       (1月19日訂正版)
課題の分類
研究課題名:てんさい直播栽培における除草剤の使用体系−補遺−
       −中耕条件下における適用−
予算区分:受託
担当科:十勝農試 研究部 てん菜特産作物科
     北見農試 研究部 作物科
研究期間:平成9年〜平成11年
協力・分担関係:なし

1.目的

  中耕条件下において、フェンメディファム乳剤とレナシル・PAC水和剤の規定量の半量ずつ混用2回処理体系を適用し、除草効果の視点から、中耕処理の必要性の有無について検討した。

2.方法
 1)試験場所および年次:十勝農試…平成9〜11年、北見農試…平成9,10年、
            現地(池田町 豊田)…平成11年
 2)供試薬剤名および使用量:フェンメディファム乳剤250ml/10a、レナシル・PAC水和剤100g/10a、
              レナテン加用、水量100l/10a
 3)除草剤処理月日
   十勝農試:1回目処理…5月中〜下旬、2回目処理…6月中〜7月上旬
   北見農試:1回目処理…6月上旬、2回目処理…7月上〜中旬
   現地:1回目処理…5月29日、2回目処理…6月21日
 4)処理区別および中耕処理月日
処理区別 1回目除草剤処理 中耕処理 2回目除草剤処理
中耕
無中耕  
無1回    
無処理      
 注1)十勝農試、北見農試の中耕処理は10,20日の値。
 注2)現地の中耕処理月日は、1回目…6月2日(ロ-タリ-カルチ)、2回目…6月21日(休場式除草クリ-ナ-)
 注3)中耕の種類は、十勝農試は2回とも爪カルチ、北見農試は1回目ロ-タリ-カルチ、2回目爪カルチ。

5)雑草調査月日
   十勝農試:2回目除草剤処理前…6月中〜下旬、2回目除草剤処理後…7月上〜下旬
   北見農試:2回目除草剤処理前…6月下〜7月上旬、2回目除草剤処理後…7月中〜8月中旬
   現地:2回目除草剤処理前…6月14日、2回目除草剤処理後…7月6日
6)その他 1回目除草剤処理はてんさい2葉期に、2回目除草剤処理は後発生した雑草の発生揃に行った。直播無間引栽培。

3.結果の概要
 1)十勝農試の1回目除草剤処理は平成9,10年は雑草発生揃とほぼ同時期に、11年はやや遅れて行った(表1)。除草剤処理による除草効果は2回とも大きく、2回目除草剤処理前では中耕による除草効果が若干認められ、処理後では認められなかった(表2)。
 2)北見農試の1回目除草剤処理は両年とも雑草発生揃を過ぎて、てんさい2葉期を待って行った(表1)。除草剤処理による除草効果は2回とも大きく、2回目除草剤処理前における中耕による除草効果は大きく、処理後においても1回目除草剤処理後に残存した雑草(主にシロザ)に対し除草効果が大きかった(表3)。
 3)現地圃場はタデ類の発生が極めて多かった。1回目除草剤処理は雑草発生揃から遅れて行った(表4)。除草剤処理による除草効果は2回とも大きかったが、1回目除草剤処理後に残存したタデは、なお多数認められた。2回目除草剤処理前、処理後ともに、中耕による除草効果は畦間における残存したタデ類に対し除草効果が大きかった(表5)。
 4)以上のことから、フェンメディファム乳剤とレナシル・PAC水和剤の規定量の半量ずつ混用2回処理体系において、除草剤による除草効果が大きい場合は、手取り除草が省け、除草目的の中耕は行う必要はないが、1回目除草剤処理が適期より遅れるなど、除草剤の効果が不充分な場合では、中耕によって除草効果を補う必要がある。その場合、中耕の除草効果は時期、回数に関わらず同程度である。

表1 1回目除草剤処理前の雑草発生状況(㎡あたり)
試験年次
および調査項目
十勝農試 北見農試
シロザ タデ類 ハコベ てんさい シロザ タデ類 ヒユ類 スカシタゴボウ てんさい
平成9年 本数 30 18 20 本葉         本葉
生葉数 - - - 抽出期 1 1〜1.5 1 2〜5 2葉期
平成10年 本数 19 40 16 本葉         本葉
生葉数 0〜3 0〜3 0〜6 2葉期 2〜4 1〜3 0〜2 0〜4 2葉期
平成11年 本数 61 12 25 本葉  
生葉数 2〜4 2〜4 2< 2葉期
 注)調査月日は十勝農試、平成9年:処理8日前、平成10年:処理1日前、平成11年:処理2日前、北見農試、平成9年、平成10年:処理当日。

表2 十勝農試における雑草発生状況(㎡あたり)
試験年次
および
調査項目
2回目除草剤処理前 2回目除草剤処理後
シロザ タデ類 その他 合計 シロザ タデ類 その他 合計
重量 重量 重量 重量 重量 重量 重量 重量
H9 中耕 2 1.4 6 0.6 1 t 2.1 40 2 0.6 2 4.0 4 0.5 6.1 9
無中耕 5 3.8 7 1.3 0 0 5.1 100 1 2.8 1 6.0 7 7.3 16.1 25
無1回                 5 22.7 6 14.7 17 27.3 64.7 100
無処理 54 487 58 69 60 317 873                  
H10 中耕 3 0.4 3 0.7 4 1.2 2.3 33 2 1.3 1 1.4 3 4.9 7.6 4
無中耕 14 2.2 4 2.1 7 2.7 7.0 100 2 1.6 2 1.4 9 2.9 5.9 3
無1回                 9 48 11 62 25 82 192 100
無処理 32 177 33 51 53 215 443   31 1660 19 904 55 721 3285  
H11 中耕 4 0.5 4 0.6 4 t 1.1 65 15 37.2 3 31.3 6 1.1 69.6 20
無中耕 5 0.2 7 1.3 6 0.2 1.7 100 11 35.6 3 6.2 0 0 41.8 12
無1回                 7 56 9 278 2 8 342 100
無処理 54 55 21 9 35 9 73   57 4689 18 591 40 472 5752  
注)重量はg、tはtrace、0.04g以下。比は処理前は無中耕、処理後は無1回に対する百分比。
  その他はその他の非イネ科雑草の略。以下同様。平成11年は10日後。

表3 北見農試における雑草発生状況(㎡あたり)
試験年次
および
調査項目
2回目処理前 2回目処理後
シロザ ヒユ類 その他 合計 シロザ ヒユ類 その他 合計
重量 重量 重量 重量 重量 重量 重量 重量
H9 中耕 3 6.3 1 4.0 9 3.3 13.6 29 1 23.6 1 17.8 t 16.7 58.1 11
無中耕 4 14.2 1 10.2 18 22.7 47.1 100 271 1 19 3 24 114 22
無1回               4 366 2 69 9 80 515 100
無処理 12 36 2 23 57 482 641   9 740 1 52 28 528 2320  
H10 中耕 3 t 2 1.1 4 0.1 1.2 3 1 8.7 1 3.0 0 0.0 11.7 2
無中耕 11 18.1 9 10.3 19 18.2 46.6 100 2 32.0 3 11.3 1 10.2 53.5 8
無1回                 9 126 23 399 14 159 684 100
無処理 13 210 10 26 59 371 607   19 281 11 189 80 4004 4474  

表4 現地における除草剤処理前
の雑草発生状況(㎡あたり)
調査
項目
1回目除草剤処理前
タデ類 ハコベ てんさい
本数 613 7 本葉
生葉数 1〜3 2〜6 2葉期

表5 現地における除草剤処理後の雑草発生状況(㎡あたり)
処理
区別
2回目除草剤処理前 2回目除草剤処理後
タデ類 タデ類
重量 重量
中耕 53 4.4 22 23 27.0 3
無中耕 144 19.8 100 124 77.9 8
無1回 - - - 236 952.4 100
無処理 674 283.7   1105 2949.5  
注)比は処理前は無中耕、処理後は無1回に対する百分比。

4.成果の活用面と留意点
 1)直播栽培における雑草対策の資料とする。
 2)フェンメディファム乳剤とレナシル・PAC水和剤の規定量の半量ずつ混用2回処理体系では、種草となる雑草は完全になくすことは困難なので、雑草が開花・結実期に達する前に種草取りを行う。
 3)フェンメディファム乳剤とレナシル・PAC水和剤の規定量の半量ずつ混用処理は未登録である。

5.残されたの問題点とその対応
 1)種草取りの省略化対策