成績概要書                    (作成 平成12年1月19日)
課題の分類
課題名  てんさい直播栽培技術体系(暫定基準)
     ・豆類等の高品質省力収穫技術と高収益畑輪作体系の確立
     4.開発技術の組立実証と経営評価
     2)てんさい直播省力低コスト栽培の現地実証と経営評価
     ・てん菜省力生産モデル農場設置事業(事業実施年度:H6〜8)
試験区分 国費助成(地域基幹)
担当科:道立十勝農試てん菜特産作物科、農業機械科
     農業改良課、農産園芸課
試験期間 平成9〜11年

1.目的
 現地実態調査及び現地実証試験の結果から直播栽培における問題点を摘出し、併せて移植栽培と直播栽培の収量格差を明らかにすることによって、現段階における直播技術体系を作成し、直播栽培の安定生産に向けた暫定的資料とする。

2.方法
 1)直播栽培実態調査
 平成6〜8年、全道8カ所から既に直播栽培に取り組み実績のある農家を選定し、直播栽培農家群とした。また、その地域で移植栽培を行っている平均的な農家をその地域の移植栽培農家群とし、両群の収量調査、経営調査を実施した。
 2)現地実証試験
 平成9〜11年、十勝管内2カ所の現地農家圃場で、てんさい直播用被覆種子と凸型鎮圧輪、改良総合施肥播種機を用いた直播無間引栽培の収量性について検討した。
 3)直播栽培技術体系(暫定基準)の作成
 今回の成績及び過去の試験成績、実態調査を基にして、体系表を作成した。

3.結果
 1)現地実態調査の結果
 (1)直播栽培は移植栽培と比較して、根中糖分は同等であるが、糖量で14%少なかった。また、生産費は14%、粗所得は13%少なく、労働時間は約4割少なかった。
 (2)直播栽培では薬害、風害、湿害、病害、生育障害などの障害によって収量、収益性が大きく低下する事例が認められ、これらの対策が必要である。
 2)現地実証試験の結果
 (1)改良ペレット、凸型鎮圧輪、作条混和装置付施肥播種機を用いた直播無間引栽培は移植栽培と比較して、根中糖分はほぼ同等であるが、糖量で約1割少なかった。また、不純物価は2割高かった。
 (2)凸型鎮圧輪処理は、出芽前の強風により鎮圧溝に土砂がたまり、出芽不良となる場合があった。
 3)直播栽培技術体系(暫定基準)の作成
 作成に当たり、農家経営規模は30〜50haを想定した。このことから、現地の実態に鑑み、使用するトラクタは耕起、心土破砕などの重作業は4輪駆動タイプの80PS級、施肥播種、中耕などの軽作業は60PS級のトラクタを用いることとした。また、圃場出芽率を80%以上確保できることを前提として無間引栽培とした。

表1.直播栽培技術体系(暫定基準)


栽培技術内容 使用農機具 ha当り時間 備考
機械 人力



耕盤層を破砕する。低地土、黒ボク土
では心土破砕、多湿黒ボク土では心土
破砕+畦間サブソイラを実施する。
サブソイラ(2本
爪)
1.2 1.2 山中式硬度計の読みで
低地土、黒ボク土20㎜以
上,多湿黒ボク土16〜18㎜
以上を耕盤層とする。



全面散布(3t/10a) マニュアスプレッダ
(3t)、フロントローダ
1.0
0.5
1.0
0.5
 

耕起深25〜30cm プラウ(18〃×3) 2.3 2.3 リバーシブルプラウでは
作業能率10%程度向上



多雪・土壌凍結地帯では、融雪資材を
散布して融雪を促進する。
ブロードキャスタ
(スノーモービル装着)
0.3 0.3  







土壌改良資材の全面散布を行う。特に
石灰資材散布により圃場pHを5.5以上
にする。
ライムソアー
トラック
1.3
0.5
1.3
0.5
 



発芽を斉一にするため砕土率70%以
上を目標とするが、過度な砕土は避け
る。
ロータリーハロー 2.6 2.6  



施肥量は移植栽培の施肥基準に準ず
る。極端な早播きは避ける。
殺虫・殺菌剤を混入した改良ペレットを用
い株間15〜20㎝、播種深度1〜2㎝
(土壌水分多:1〜1.5㎝、少:2㎝)に播
種し、8000本/10a以上確保する。
総合施肥播種機
トラック
2.3
0.5
4.6
0.5
作条混和施肥は濃度障
害を回避し、初期生育が
向上する。
総合施肥播種機
混和装置付
(2.3) (4.6)




フェンメディファム乳剤またはレナシル・PAC水
和剤の規定量を、本葉2葉期(雑草発
生初〜揃期)及び中耕後雑草発生揃に
散布する。その場合、単剤2回散布よ
り異なる剤を組み合わせると効果が高
い。
スプレーヤ(1200㍑)
トラック
0.5
1.0
0.5
1.0
フェンメディファム乳剤、レナシル
・PAC水和剤の規定量
1/2現地混用は各単剤処
理より殺草効果が高い
(未登録)。除草目的の
中耕作業を行う場合、株
間除草機構を装着するこ
とにより、株間除草でき
る。

除草目的の中耕作業は省略できる。
除草剤の効果が不十分なときは、
中耕作業によって除草効果を補う。
主に土壌の通気性、排水性を改善する。
カルチベータ 2.8 2.8
除草 種草取り   20.0




防除基準に準じて行う。 スプレーヤ(1200㍑)トラック 1.3
2.5
1.3
2.5
改良ペレットによりテンサイトビ
ハムシ、テンサイモグリハナバエ
の防除は不要。

茎葉切断、掘取、集積 ビートハーベスタ
(タッパ付)
3.4 3.4  
ビートタッパ
ビートハーベスタ
(2.3)
(3.0)
(2.3)
(3.0)
合計     24.0 46.3  

4.成果の活用面と留意点
 1)てんさい直播栽培技術体系(暫定基準)は北海道一円のてんさい栽培地帯、普通畦幅(60㎝以上)に適応する。
 2)直播無間引栽培では、栽植本数の確保が重要となるので、特に砕土整地、施肥播種作業に留意する。

5.残された問題点とその対応
 1)土壌タイプ別の砕土整地法、播種鎮圧法の検討
 2)施肥量、施肥法の検討
 3)低pH圃場における初期生育障害対策
 4)狭畦栽培における技術体系の策定
 5)多畦収穫作業を含めた収穫作業体系の検討
 6)償却費を含めた経営評価の検討
 7)風害対策