成績概要書            (平成12年1月)
課題の分類  北海道  流通利用
         食品  流通技術
研究課題名:超強力小麦粉のパンへの新利用技術
予算区分:新用途、麦緊急開発
担当科:北農試・畑作セ・流通チーム、麦育種研、
     品質チーム
担当者:山内宏昭・一ノ瀬靖則・高田兼則・桑原達雄
研究期間:平8〜11年度
協力・分担関係:食総研 酵母研

1.目的
 超強力小麦粉(以下、超強力粉)とは、カナダで1つの小麦銘柄として成立している Canada We-stern Extra Strong Wheat (CWES)のような超強力小麦から得られる小麦粉のことである。この小麦粉の特長は、生地ミキシング時の生地形成時間が非常に長い、生地物性が非常に強い、還元剤に対する抵抗性を持っている等である。この特徴的な小麦粉を上手にパンに利用する技術を確立すれば国産小麦のパンへの需要拡大が期待できるため、現在合理化製パン法として注目されている冷凍生地製パン法適性や国産小麦の製パン性向上のためのブレンド粉適性について検討した。

2.方法
 1)冷凍生地、ブレンド小麦粉の製パン評価は、標準的食パン配合でそれぞれイースト5%のノータイム冷凍生地製パン法、イースト2%のノータイム法で行った。
 2)パン、生地の評価は、比容積、パンの内相、生地物性(破断力、破断変形量)、ガス保持力(真空生地膨張量)により行った。

3.結果の概要
 1)超強力粉(Wildcat)の冷凍生地からのパンは、冷凍経時で市販強力粉(日清製粉、カメリヤ)の冷凍生地からのパンに比べ高い比容積を維持し、冷凍生地製パン適性があることが明らかになった(図1,図2)。
 2)超強力粉(Wildcat)に冷凍生地適性がある理由は、冷凍無の超強力粉の生地の破断力(弾性の強い生地物性)、ガス保持性(真空生地膨張量の値の高い生地ほどガス保持力高い)が非常に高く、冷解凍後それらの値は低下はするが、市販強力粉に比べ比較的高い値を維持しているためである(図3、図4)。
 3)超強力粉(Victoria INTA)を適当量ブレンドすることによって、国産中力粉(ホクシン)、準強力粉(ハルユタカ)の比容積、製パン性が向上する(図5,図6)。
 4)超強力粉(Victoria INTA)のブレンドによって、国産小麦粉の製パン性が向上する理由は、生地の破断力、ガス保持性が向上するためである(図7,図8)。

4.成果の活用面と留意点
1)上記の結果から超強力粉は冷凍生地製パン、製パン性の十分でない内麦小麦粉の製パン性向上に利用できることが判明した。
2)超強力粉は生地成形に非常に長時間を有する小麦粉であるため冷凍生地に使用する場合ミキシング時に十分に生地をディベロップさせて製パンを行う必要がある。
3)ブレンド粉として使用する場合には、ブレンドする内麦小麦粉との最適ブレンド比率を製パンテストにより前もって十分に評価しておくことが重要である。

5.残された問題とその対応
 1)国産超強力小麦品種を早期に育成する。
 2)国産超強力粉の特性、品質評価を行う。
 3)超強力粉のパン以外の新用途を開発する。