成績概要書 (作成 平成12年1月)
1. 課題の分類 分類番号 整理番号 2. 場所名 北海道立中央農業試験場 3. 系統名 りんご新品種候補「HC15号」 |
4.育成経過
本道に適応し、早生で日持ち性のある優良な品種の育成を目標とした。北海道立中央農業試験場が、極早生品種の「マンテット」に、果肉質の優れた中生の「HAC6」を交配し、得られた実生の中から個体番号「44-23」を付して検討を行った結果、平成2年に食味が良好であることにより「HC15号」の系統番号を付けた。平成4年からは生産力検定試験及び地域適応性検定試験に供試してきた。
5.特性の概要(対照品種「きたかみ」、参考品種「きざし」「つがる」との比較)
(1)樹性及び形態的特性
樹姿はやや直立し、樹勢は「きたかみ」よりやや強い。葉の形は長形で、「きたかみ」より長い。花は淡桃色で、大きさは「きたかみ」よりやや大きい。
耐寒性については、適正な樹勢を維持すれば問題ないが、樹勢が強すぎる場合などは凍害が発生することがある。
(2)生育相
発芽期〜落花期まで「きたかみ」とほぼ同時期であり、「つがる」より2日程度早い。
(3)収穫期
収穫期は9月上旬の極早生で、極早生の「きざし」より5日程度遅く、早生の「きたかみ」より2週間、「つがる」より3週間程度早い。なお、熟期は、同一樹内でもばらつきがみられる。
(4)花芽の着生
花芽の着生は、「きたかみ」と同等に良好である。腋花芽の着生は「きたかみ」と同等にやや多い。
(5)生理落果
早期落果はほとんどなく、収穫適期での後期落果もほとんどない。
(6)生産性
結実樹齢に達するのは、4年生で、「きたかみ」並である。生産性は「きたかみ」と同程度に高い。
(7)果実品質
一果重は250〜300gで、「きたかみ」や「きざし」より大きく、極早生として大果である。収穫適期の果皮の色は、地色が緑色で、陽向面が鮮紅色にわずかに着色する。果皮面のさびはこうあ部にわずかに発生する。心かび、裂果はほとんど発生しない。果肉の硬さときめは「きたかみ」と同程度であるが、肉質は「きたかみ」、「きざし」より優れる。糖度は12.5〜13.5%、酸度は0.7g/100ml前後とやや酸味が多いが香りが良く、夏に食べる果物としてはさわやかである。
(8)食味
食味アンケートの結果から、外観は「きざし」と同等であるが、食味は「きざし」より優っている。
(9)適食期及び日持ち
収穫適期は果実の地色が2.0〜2.5であり、この場合、室温下でも果肉が軟化しにくく、収穫直後から6〜7日間が適食期間である。
(10)交配親和性
本道で栽培される主要な品種とは交配親和性がある。また自家結実性は有していない。
(11)耐病虫性
黒星病に対して抵抗性は有していないが、一般防除下で特に問題となる病害虫は認められない。
6.試験成績概要
第1表 樹体生育、収穫、生育相、果実品質
注)樹齢、樹体生育、積算収量は平成11年の値。満開期、収穫期、平均果実、果実品質は
平成8〜11年の平均値。
−:欠測
地色は「ふじ」のカラーチャートによる。
第2表 「HC15号」収穫時の地色別果実品質
(平成11年 中央農試産の果実使用)
注)地色は「ふじ」のカラーチャートによる。
第1図 室温下での果実硬度の変化(平成11年 中央農試産果実)
7.普及対象地域及び普及見込み面積
全道一円、全栽培面積の約5%、約50ha
8.保有種苗
M26台使用9年生樹 2樹 (穂木 5kg)
9.栽培上の留意点
(1)樹勢がやや強いため、新梢が遅伸びするような条件では凍害が発生する場合があるので、樹勢が強くなりすぎないように努める。
(2)同一樹内でも果実の熟期がばらつくので果実の地色2.0〜2.5を目安にすぐり収穫をする。着色を待って収穫すると、果実が樹上で軟化し食味が低下してくるので、取り遅れないようにする。