成績概要書             (作成 平成12年1月)
研究課題名:メロンセル成型苗の直接定植栽培技術
予算区分:道費
担当科:原子力環境センター 農業研究科
研究期間:平9−11年度
協力・分担関係:

1.目 的
 メロンの栽培作業は多岐にわたり、10a当たりの労働時間が500時間近くを要する集約型の作目である。本試験では、労働時間の短縮、作業の効率化を図ることを目的に、メロンの育苗段階におけるセル成型苗を利用したほ場への直接定植栽培技術を確立する。

2.方 法
 1)セルの大きさ  大きさの異なるセル(50穴、128穴)の発芽後の生育、根の伸長性、移植後の生育、ほ場における生育・収量について慣行育苗した苗と比較検討。供試培土:スーパーセルトップV。供試品種 「キングナイン」(以下の試験に共通)
 2)セル苗の活着性  定植後の潅水回数(1〜3回)、潅水方法(チューブ、植え穴、株元)の検討。
 3)定植時期と苗齢  定植時期(5月下旬〜6月中旬)と苗齢(子葉、1葉、2葉)の検討。50穴セル苗使用。
 4)品種間差異  品種(ルピアレッド、ニューキングレッド、キングナイン)の検 討。50穴セル苗(子葉苗)使用。
 5)窒素施肥量  窒素施肥量について北海道施肥標準量(1.5kg/a)、同2割増量 (1.8kg/a)、農家慣行量(1.26kg/a)の検討。50穴セル苗(子葉苗)使用。

3.結果の概要
 1)セルの大きさ  セル内の培土量が多い50穴苗は、生育、根張りが128穴よりも良好であった(図1)。移植後の根の伸長も50穴苗が優った。ほ場での生育は50穴苗が良好であった。総体的に収量は低かったが、セル苗の収量は慣行苗に比べて優った(表1)。 なお、慣行苗は開花期に降雨の影響を受けて収量は低かった。
 2)セル苗の活着性  活着および初期生育は、移植後の潅水により向上した。活着の促進には、土壌水分が適正な時期にマルチングを行い、さらに定植前の植え穴潅水(200ml)、または株もと近くへの潅水チューブによる潅水が有効であった(表2)。
 3)定植時期と苗齢  6月上〜中旬に定植したセル苗の生育・収量・品質は慣行苗に比べ同等以上の結果が得られた(表3)。両性花開花期までの期間を慣行育苗した苗と比較すると、播種期が同じならばセル苗は3〜6日早くなり、播種期が遅くなるほど、また苗齢の小さいセル苗ほど短縮された。
 4)品種間差異  草勢の強い「ニューキングレッド」でセル苗の着果節位がやや上昇したが、同一品種内ではセル苗、慣行苗とも肉眼観察による差はなかった(表4)。各品種とも、収量・品質はセル苗が優った。
 5)窒素施肥量  北海道施肥標準の窒素量を施肥した区は農家慣行および増肥区に比較して生育・収量・品質が優った(表5)。特に、北海道施肥標準量を超えた窒素施用区では生育・収量が劣った。
 6)省力化の試算  セル成型苗を利用すると、10a当たりの労働時間が約445時間となり、慣行育苗に比べ約10%の省力化が可能となった(表6)。 


図1 セルサイズ・育苗期間と根張りの関係

4.成果の活用面と留意点
 1) 6月上旬以降に定植となる、露地トンネルの作型に適応する。
 2) 使用するセルトレイは50穴とし、播種後1週間経過(子葉苗の状態)してからほ場へ定植する。
 3) 定植適期(苗齢)が限定されるので、計画的な播種、ほ場の準備を行う。
 4) セル苗を使用することで特に草勢は強くならないが、施肥量、潅水法に留意し、適正な草勢管理に努める。

5.残された問題とその対応
 1) セル培土の崩壊防止法の検討。