成績概要書  (作成平成12年1月)
研究課題名:早期受胎を目指した乳用牛育成前期の飼養法
           (大規模土地利用型における省力的群管理技術の開発)
予算区分:国補(地域基幹)
研究期間:平成6〜10年度
担当研究室:新得畜試 家畜部 酪農科, 根釧農試 研究部 酪農第一科
協力・分担関係:なし

1.目的

 粗飼料にサイレ−ジを用いて日増体量を0.9㎏に高める時の飼料中タンパク質水準・タンパク質源と摂取量・発育との関連について検討する。

2.試験研究構成

  1. 試験Ⅰ:飼料中タンパク質量の違いによる月齢別摂取量および発育成績の比較
  2.    処理 高CP区(3〜6か月齢:TDN72%、CP20%,7か月齢〜受胎:TDN72%、CP16%)

       標準区(3〜6か月齢:TDN72%、CP16%,7か月齢〜受胎:TDN72%、CP12%)

       調査項目 月齢別乾物摂取量、発育成績、血液性状

  3. 試験Ⅱ:飼料中タンパク質源の違いによる月齢別摂取量および発育成績の比較

①とうもろこしサイレ−ジ主体飼養時の検討

②牧草サイレ−ジ主体飼養時の検討

       処理  魚粉区(タンパク質源:大豆粕+魚粉、TDN72%、CP16%)

       大豆粕区(タンパク質源:大豆粕、TDN72%、CP16%)

       調査項目 月齢別乾物摂取量、発育成績、血液性状、第一胃内性状

3.結果の概要・要約

  1. 粗飼料主体飼養(NDF含量40%以上)では、ほとんどの月齢でNRCに示された乾物摂取量を満たすことはできなかった(表1)。目的の日増体量0.9㎏はTDN72%で達成された。またこのときの月齢別乾物および養分摂取量を提示できた。

  2. 飼料中タンパク質濃度を高めることで、7か月齢以降体高が大きくなる傾向が見られた(p<0.10)。

  3. 乾物摂取量および飼料中TDN含量とも日本飼養標準と極めて近似した値となったため、この2つに関しては日本飼養標準の活用は飼料設計に有効と考えられた。

  4. タンパク質水準の違いに関係なく、乳腺発達に影響を及ぼす期間では体重/体高比の値はホル協の値よりも低かったことから、日増体量の増加に伴い体重だけでなく体格も大きくなったと考えられた。

  5. 3〜6か月齢では、TDN・CP含量が72、16%と適切であれは、粗飼料割合を70%から55%に下げても同様な発育が期待できた(表2)。

  6.  魚粉添加による明確な発育改善効果は見られなかった。
  7.  NRCの設定した飼料中タンパク質含量でも13か月齢程度で交配基準に達し、15か月齢までの受胎が可能だった(表3)。しかしながら、このような高エネルギ−飼料を給与する場合、特に7か月齢以降で飼料中タンパク質含量12%は、血漿中BUN濃度の推移から第一胃内アンモニア態窒素が低くなる傾向が窺えた(図)。飼料の利用効率が低下するおそれがあるため、飼料中タンパク質含量は16%が適当である。

 

4.具体的数字

表1 NRCの設定量に対する乾物摂取量割合と体高値 単位:%
  4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
試験1 高CP区 乾物摂取量割合 89 92 94 94 93 105 101 100 87 87
n=5 体高値(cm) 94.1 99.3 105.3 110.1 113.8 116.8 121.0 123.8 124.8 127.0
標準区 乾物摂取量割合 74 96 91 89 91 104 104 90 87 88
n=4 体高値(cm) 91.4 96.8 102.8 107.5 111.8 114.4 118.5 121.0 123.4 125.0
試験2 魚粉区 乾物摂取量割合 80 105 90 92 88 99 93 92 87 84
n=6 体高値(cm) 94.1 98.8 103.8 108.0 113.5 117.3 120.7 124.1 126.4 129.4
大豆粕区 乾物摂取量割合 79 104 91 92 90 97 93 94 89 86
n=5 体高値(cm) 92.5 96.5 100.7 105.4 109.7 113.8 117.8 120.1 123.6 126.4


図 月齢別血漿中BUN濃度の推移

 

 

表3 基準到達月齢時の体格値および受胎月齢
 

到達

体高(A)

体重(B)

B/A

受胎

月齢

(cm)

(kg)

月齢

高CP区

12.4

126.0

361

2.87

14.3

標準区

12.7

125.0

369

2.95

13.2

魚粉区

12.2

127.2

366

2.88

14.0

大豆粕区

13.0

126.7

382

3.01

14.4

ホル協値

14.0

126.5

375

2.97

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5.成果の活用面と留意点

1) 本成績は、主に育成牧場などの飼料計算の基礎デ−タとなる。

6.残された問題点とその対応

1)乳腺発達に対する直接的なデ−タがなため、乳腺発達における早期診断技術の開発が必要である。

2)カ-フハッチから群管理移行時に摂取量が低下する。移行時の飼料馴致期間と量、群行動の検討する必要がある。

3)早期分娩および初産乳量向上のための育成期飼養ガイドライン(本成績、平成5年度成績資料)ができたが、初産次飼養法に関しては未検討。育成期から初産泌乳期までの一貫した飼養法の確立が必要。