成績概要書                   (作成 平成12年1月)
課題の分類:
研究課題名:夏どりほうれんそう収穫後の品質低下実態と改善策
        (移出野菜、花き鮮度保持、輸送技術)
予算区分:道単
担当科:中央農試 農産化学部 流通貯蔵科
研究期間:平成8〜11年度
協力・分担関係:

1.目的
 夏どりほうれんそう流通中のビタミンC含量低下要因について検討し、その改善策を 明らかにする。

2.方法
 1)流通中の品質実態調査 :道外移出(8月収穫)、道内輸送(7月収穫)中のビタミンC含量の変化の調査 品種 トニック
 2)貯蔵温度の影響 : 5、10、25℃貯蔵中のビタミンC含量の変化 産地 C町、
場内  場内貯蔵庫 品種 トニック
 3)収穫時期の影響 : 6、7、8、9月収穫のビタミンC含量と全糖含量 産地 C町、
場内  場内貯蔵庫 貯蔵温度5℃ 品種 主にトニック
 4)収穫時刻の影響 : 早朝(5時)、昼(13時)、夕(17時)収穫のビタミンC含量 と全糖含量  産地
場内  場内貯蔵庫  貯蔵温度5℃ 品種 トニック
 5)現地確認試験:場内で行った収穫時刻の影響を確認するため現地農家で調査 産地
D市 花野センター貯蔵庫 貯蔵温度 5℃ 品種 スターマイン

3.結果の概要
 1)ほうれんそうの移出および道内の流通実態調査の結果、市場到着時の外観は良好であったが、ビタミンC含量は輸送前の時点で70〜75%に、市場到着時点で50%以下に低下していた(表1)。
 2)収穫後の放置を想定した25℃での貯蔵では、ほうれんそうビタミンC含量の低下が5℃貯蔵よりかなり大きく、収穫後速やかな予冷が必要である(表2)。
 3)ほうれんそうの好適な予冷終温、輸送温度を想定した5℃貯蔵のビタミンC含量の低下程度は、6、9月収穫物よりも7、8月収穫物の方が大きく、その要因として収穫時の全糖含量が低いことが影響していると考えられた(表3)(図1)。
 4)ほうれんそうのビタミンC含量、全糖含量は早朝収穫より昼および夕方に収穫した方が高く、貯蔵時にもその傾向を維持した。この関係は現地農家圃場でも確認された(表4)。
 5)以上の結果から、夏どりほうれんそう流通中の品質低下防止対策を次表のように取りまとめた。

         夏どりほうれんそう流通中の品質低下防止対策
収穫時刻 選別・調整 予冷 輸送
夕方
(おおむね16時以降)
収穫後速やかに行
い、包装資材使用
(しおれ防止)
選別・調整後速やかに
5℃以下
5℃の維持

表1 流通中におけるほうれんそうビタミンC
  含量の推移(実態調査)
収穫時 予冷前 予冷後 大阪市場
65.7
(100)
47.7
(73)
42.3
(64)
31.0
(47)
(mg/100gF.W) (  )内残存率(%)

表2 ほうれんそうビタミンC含量に及ぼす収穫
   後の貯蔵温度の影響
収穫
時期
収穫時 5℃ 25℃
1日後 残存率 1日後 残存率
6月 39.8 34.0 (85) 23.4 (59)
7月 30.5 21.1 (69) 12.5 (41)
9月 38.1 36.0 (94) 25.2 (66)
ビタミンC含量:(mg/100gF.W) 残存率:(%)


図1 収穫時全糖含量と貯蔵
  4日後のビタミンC含量
  残存率の関係

表3 収穫時期別ビタミンC含量、貯蔵中の残存率と収穫時全糖含量
収穫
時期
ビタミンC 全糖含量
収穫時
(mg/100gF.W)
残存率(%) (%)
1日後 2日後 4日後 収穫時
6月 40.4 (92) (83) (76) 0.78
7月 30.5 (69) (46) (37) 0.28
8月 34.2 (75) (58) (45) 0.20
9月 34.4 (95) (87) (79) 0.36

表4 収穫時刻別ビタミンC含量、4日後の残存率と収穫時全糖含量
                         (7月15日、農家ハウス)
収穫時刻 ビタミンC含量(mg/100gF.W) 4日後
残存率(%)
全糖含量(%)
収穫時 4日後 収穫時
早朝(5時) 19.1 100 6.0 100 (31.4) 0.03
朝(9時) 21.0 110 9.3 155 (44.4) 0.17
昼 (13時) 23.5 123 12.1 202 (51.5) 0.35
夕(16時) 26.2 137 16.9 282 (64.5) 0.35

4.成果の活用面と留意点
 1)ほうれんそうの品種は、主にトニックを供試した。
 2)雨よけ栽培を対象とする。

5.残された問題点とその対応
 1)現地における体系的な総合実証
 2)他の夏どり葉菜類に対する適用性の検討