成績概要書                                   (作成 平成12年1月)
課題の分類
研究課題名:豆類の長期貯蔵条件とこれに伴う加工適性の変動および煮熟特性の評価法
     (豆類の加工適性向上試験 ③豆類の貯蔵に伴う品質変動解析試験)
予算区分:道 費
担当科:中央農試農産化学部品質評価科
研究期間:平成7−11年度
協力・分担関係:

1.目 的
 北海道産の小豆および菜豆類について、収穫後2年間にわたる長期貯蔵過程における加工適性の変動について検討するとともに、貯蔵温度や包装形態が加工適性に及ぼす影響について検討し、高品質かつ良好な加工適性を維持した豆類の長期貯蔵技術を確立するための指針を得る。また、分析に煩雑な操作を要する煮熟特性の迅速な評価方法を確立する。

2.方法
1)供試試料
 「エリモショウズ」(H7・H9年産)、「大正金時」(H8年産)、「雪手亡」(H9年産)
2)貯蔵条件
 貯蔵庫 :5℃恒温庫、低温倉庫(15℃以下)、道内常温倉庫(96年7-9月平均温度19.3℃)、
      東京常温倉庫(H7年産小豆1年目のみ;96年7-9月平均温度24.0℃)
 包装形態:紙袋区;30kg紙袋、密封区;樹脂包装、真空区;樹脂真空包装(脱酸素剤封入)
 分析時期:収穫後2年間にわたり3月毎に調査・分析(貯蔵庫内の温度・湿度は30分毎に記録)
3)近赤外分光分析装置:インフラライザー500型(全粒分析用に回転ドロワーを装着)

3.結果の概要
1)小豆については、収穫後1年目までは、東京の常温倉庫に比べ道内の常温倉庫での品質低下が小さく、アン収率の大きな低下も認められなかった。低温倉庫では、収穫後1年以上経過すると品質 低下がややみられるものの、アン収率の大きな低下はみられなかった。5℃恒温庫では、収穫後2年まで子実品質およびアン収率の低下はみられなかった(図1)。
2)手亡については、常温倉庫では収穫後1年以内でも品質低下が大きかったが、低温倉庫では収穫後1年程度まで、5℃恒温庫では収穫後2年まで、子実品質およびアン収率の大きな低下はみられなかった(図2)。
3)金時については、常温倉庫では収穫後1年以内でも品質低下が大きかったが、低温倉庫では収穫後1年程度まで、5℃恒温庫では収穫後2年まで、子実品質の低下および煮熟粒硬度の大きな上昇はみられなかった(図3)。
4)通常の流通形態である紙袋包装を対象として、小豆、手亡および金時の高煮熟特性を維持し得る貯蔵条件についての総括表(表1)を作成した。
5)包装形態による影響としては、小豆、手亡、金時のいずれについても、真空包装または密封包装することにより、水分の変動を抑えることができた。また、真空包装することにより、小豆および金時では種皮色のL値(明度)の低下をやや抑制する効果が認められた。
6)小豆、手亡、金時のいずれについても、長期貯蔵により煮熟性の劣化したものでは、浸漬液の電気伝導率(EC)および浸漬液固形分の上昇がみられ、これらの項目は、小豆および手亡のアン収率とは高い負の相関が、金時の煮熟粒硬度とは高い正の相関が認められた。
7)近赤外分光法により測定した小豆全粒の反射スペクトルと、水分、タンパク質、煮熟増加比との重回帰分析により、精度の高い検量線を作成でき、小豆の煮熟特性を非破壊的に迅速評価することが可能であった(表2)。

4.成果の活用面と留意事項
1)良好な加工適性を維持した豆類の長期貯蔵条件の指針として活用し得る。
2)小豆の貯蔵条件に関しては、低温倉庫での品質劣化は小さかったが、長期にわたる貯蔵の場合には、5℃貯蔵が望ましい。

5.残された問題とその対応
1)包装形態の違いが食味に及ぼす影響の検討。
2)実需者による長期貯蔵した豆類の加工適性の評価。
3)電気伝導率(EC)による煮熟性評価の適応性の検討。