成績概要書                                   (作成 平成12年 1月)
課題の分類
研究課題名:ジャガイモそうか病の発病におよぼす有機物施用および耕土処理の効果
(ジャガイモそうか病総合防除法開発試験 Ⅱ.土壌環境改善による発病抑制技術の開発)
予算区分:受託
担当科:北見農試 研究部 土壌肥料科
研究期間:平 9〜11年度
協力・分担関係:

1.目 的
  有機物施用、軽石流堆積物客土や天地返しなどの耕土処理がジャガイモそうか病の発病におよぼす効果を検討し、総合防除法の指針を得る。

2.方 法
 1)ジャガイモそうか病の発病に対する有機物施用の効果
① バ−ク堆肥およびピ−トモスの施用効果;無底枠(直径30㎝)に病土や上記の有機物を充填し、ばれいしょを栽培して発病度、交換酸度(y)などを調査した。
② 各種有機物とフェロサンドの添加による土壌pH・yの変化;生土100g当たりピ−トモス、牛糞堆肥、バ−ク堆肥をそれぞれ3.5g混和したものにフェロサンドを段階的に添加して、畑状態で1週間培養した。
2)ジャガイモそうか病に対する耕土処理の効果
① 発病作土に対する軽石流堆積物および無病土混合の影響;発病土と軽石流堆積物を比② 発病土に対する軽石流堆積物混合およびフェロサンド添加の影響;発病土および発病土に軽石流堆積物を1:1で混合後フェロサンドを添加した土壌を無底枠に充填し、発病度、yなどを比較した。
③ そうか病発病圃場での天地返し処理;表層0〜50㎝と下層50〜90㎝土層を反転する処理を行い、翌年ばれいしょを栽培して発病程度を調査した。

3.結果の概要
 1)ジャガイモそうか病の発病に対する有機物施用の効果
① 有機物施用がそうか病の発病におよぼす影響は土壌pHよりもyによって良く説明された。バ−ク堆肥の施用はyを減少させ、発病度を高めた(図1)。
② 培養実験の結果から、牛糞堆肥の施用もバ−ク堆肥と同様にyの減少をもたらし、そうか病の発病を助長する可能性があると考えられた(図2,図3)。
 2)ジャガイモそうか病に対する耕土処理の効果
① そうか病発病圃場の土層は、耕起深よりさらに10㎝ほど下まで発病に十分な病原菌密度を有していることが示された。
② 発病土にyが極めて小さい軽石流堆積物を混合して10倍に希釈しても発病度は低下しなかった。無病土の混合によりyが増大した場合には発病度の低下が認められた(表1)。
③ 軽石流堆積物はpH緩衝力が小さいため、客土時に少量の土壌酸度調整資材を併用することで、発病軽減効果を得ることができた(表2)。
④ 現地圃場における天地返し処理では、発病軽減効果は見られなかった。原因は下層土のyが小さいことにあると考えられた。
 3)北海道の耕地土壌におけるyの実態
① 地力保全基本調査による作土のpHとy1の関係から、網走・十勝管内の火山性土では、pH5.0におけるy1の平均的な値は2以下と推定された(図4)。
② 土壌酸度調整資材の防除効果は、pH5.0付近のy1が1未満の土壌では低いことから、火山性土におけるpHとy1の関係式を参考にして、土壌酸度調整資材のy1増加効果(対象土壌のpH5.0におけるy1の値が1に達するか否か)を判定する指標を作成した(表3)。

表1 軽石流堆積物および無病土の混合処理がそうか病
   の発病におよぼす影響
処理(混合割合) 病薯率
(%)
発病度 土壌混合時の
化学性
pH(H2O) y1
対照(病土100%) 100 67 6.0 0.2
軽石60%+病土40% 100 80 6.3 0.1
軽石90%+病土10% 92 64 6.6 0.1
無病土70%+病土30% 61 22 5.6 1.4
無病土90%+病土10% 66 26 5.5 1.7

表2 軽石流堆積物混合およびフェロサンド添加がそうか病の
   発病におよぼす影響
処理 フェロサンド
添加量
(g/㎡)
施肥前の
土壌化学性
病薯率
(%)
発病度
pH(H2O) y1
対照(病土100%) なし 5.7 1.4 88 55
病土+フェロサンド 350 5.1 3.4 79 28**
病土+フェロサンド+軽石 180 5.2 2.8 57* 23**
最小有意差法による対照区との差の検定:**1%有意、*5%有意

表3 土壌酸度調整資材のy1増加効果判定指標
対象土壌のpHとy1の関係 pH5.0における予想y1
y1<488×0.29pH 1未満(施用効果劣る)
判定はpH<5.0でないと精度が悪い
この指標は火山性土に適用する

4.成果の活用面と留意点
 1)そうか病発病圃場では、ばれいしょ作付けにあたって粗大有機物を鍬込まないよう留意する。
 2)そうか病発病圃場に軽石流堆積物を客土する場合には、同時に土壌酸度調整資材を施用することが望ましい。

5.残された問題とその対応