成績概要書   (作成 平成12年1月)
課題の分類:
研究課題名:水田におけるメタン(CH4)発生抑制のための圃場管理技術
       (環境に配慮した農耕地におけるガス発生抑制技術の開発
         3.メタンの発生抑制技術の確立と圃場管理基準の策定)
予算区分:補助(土壌保全)
担当科:上川農業試験場 研究部 土壌肥料科
研究期間:平成7ー11年
協力・分担関係:なし

1.目 的
 稲わらの圃場内における酸化的分解の促進と間断灌漑などによる土壌還元の抑制、および土壌酸化容量の拡大や圃場縦浸透能の向上によるメタン発生抑制効果を検討し、水田由来のメタンガス削減のための圃場管理技術を開発する。

2.方 法
1)試験地:上川農試水田圃場(褐色低地土)およびコンクリート枠、
     旭川市永山(褐色低地土)・東鷹栖(灰色台地土)および鷹栖町(灰色低地土)現地圃場
2)調査方法:水稲を覆えるチャンバー(透明なポリカーボネイト製の無底角箱型、底面60×60cm、高さ1.0m)を使用し、ガスの採取および保管にはテドラーバッグを使用した。分析には水素炎イオン化検出器(FID)のついたガスクロマトグラフを用いた。
3)稲わら腐熟化試験:(秋散布春混和・秋混和)×(肥料施用処理)×(微生物資材施用処理)
  水管理法試験:(稲わら施用、無施用)×(連続湛水、中干、間断灌漑強、間断灌漑弱)
  稲わら腐熟化処理と水管理法の組み合わせ試験
  不耕起・無代かき栽培等試験:(稲わら施用、無施用)×(慣行代かき、不耕起、無代かき)
  酸化鉄施用等試験:酸化鉄施用もしくは遊離酸化鉄高濃度土壌の客土処理

3.結果の概要
1.稲わら処理
 1)秋収穫後に回収・搬出し、圃場還元しないのが最もメタン抑制に有効的である。
 2)稲わら施用するには、秋収穫後に回収し、堆肥化後に水田還元するのが望ましい。
 3)堆肥化が困難な場合には、秋すき込みを徹底する。この場合、簡易な5〜8cm深程度のロータリー混和が有効であり、窒素肥料や市販微生物資材の併用が分解促進に有効である(図1,表1)。
 4)秋混和が困難な透水不良田では、メタン発生が顕著に高まるため、基盤整備や無代かき・不耕起栽培、心破・溝きりなどにより透排水性を改善し、秋混和が可能な条件整備が必要となる。
2.水稲栽培管理
 1)無代かき栽培では慣行の代かき栽培と比較して顕著にメタン発生を抑制するとともに、圃場透水性改善にも有効である(図2)。
 2)幼穂形成期前の中干処理は土壌還元の進行を抑制し、メタン発生削減にも有効である。
 3)幼穂形成期前および出穂後の間断潅漑がメタン発生削減に有効である。その際、表面水が除去され、作土水分がpF1.8程度になるとほぼ中干に近い効果が得られる(表1)。
3.水田圃場基盤
 1)日減水深(縦浸透)が小さな(2mm以下)透水不良田ではメタン発生が助長されるため、暗渠排水・心破等の処理による改善が必要である。
 2)含鉄資材の施用および客土(鉄含量の高い土壌)は土壌の酸化容量を高め、還元進行が緩和され、メタン発生の抑制にも有効である(図3)。
 以上の圃場管理技術の組みあわせにより、IPCCで示されたメタンガスの20〜60%削減や1990年レベル以上に増加させないことを、北海道水田作に限り、達成できるものと判断された(図4)。


4.成果の活用面と留意点
 1.水田からのメタン発生を抑制するための参考とする。

5.残された問題点とその対応
 1.メタン生成菌の動態に及ぼす競合土壌微生物群の影響
 2.稲わら秋混和や間断灌漑が容易な圃場条件の整備