成績概要書   (作成平成12年1月)
研究課題名:ジャガイモそうか病(Streptomyces scabies)に対する土壌酸度調整と灌水による発病抑制効果
        (ばれいしょのそうか病防除対策)
        (ジャガイモそうか病菌の定量法と発病抑制技術の開発)
予算区分:道費
研究期間:平成8〜11年
担当科:中央農試 病虫部 土壌微生物科
協力・分担関係:十勝農試そうか病プロ 北見農試そうか病プロ

1.目的

 土壌酸度調整資材の施用や灌水によるジャガイモそうか病の発病抑制効果は,指導に移されている(平成8年度指導参考)が,これらはS.turgidiscabiesが優占する道東地方での検討結果である。道央・道南地方に主に分布するS.scabiesに対する効果は未確認であるので,S.scabiesに対する土壌酸度調整資材(フェロサンド)と灌水の発病抑制効果を検討する。

2.方法

1)Streptomyces scabiesによるジャガイモそうか病汚染圃場の造成
   S.scabiesを培養した土壌ふすま培地を約200〜300リットル/10a圃場に散布し,表層約10cmに混和した。収穫期に発病調査を行い接種効果を検討した。

2)ジャガイモそうか病(Streptomyces scabies)に対する土壌酸度調整資材(フェロサンド)と灌水の発病抑制効果の検討
  汚染圃場にフェロサンドと灌水の併用区,フェロサンド区,灌水区並びに無処理区を設けた。フェロサンドの施用量は平成8年度指導参考事項に準拠し,目標pHを5.0とした。灌水は灌水チューブを2畝に1本配置し,萌芽期から7月下旬までpF2.3を越えた時点で実施した。

3.結果の概要・要約

1)Streptomyces scabiesによるジャガイモそうか病汚染圃場の造成
 土壌ふすま培地に培養したそうか病菌を表層約10cmに混和することにより,比較的均一な汚染圃場を造成できた。

2)ジャガイモそうか病(Streptomyces scabies)に対する土壌酸度調整資材(フェロサンド)と灌水の発病抑制効果の検討

 ① 平成9年度は5月中旬と6月上旬にまとまった降雨があったほかは7月下旬まで比較的少なく,pF測定期間中の土壌は乾燥気味に経過し,総灌水回数は20回となった。その後7月末から降雨があり,土壌は湿潤な状態で経過した。平成10年度は周期的に降雨があったが,pF測定期間中の土壌はやや乾燥気味に経過し,総灌水回数は7回であった。

 ② 平成9年度の調査では,ジャガイモそうか病の病いもは,着蕾期にあたる6月下旬に確認され,その後病いも率,発病度共に増加した(表1)。

 ③ Streptomyces scabiesによるジャガイモそうか病に対する発病抑制効果は,フェロサンドと灌水の併用処理およびフェロサンド単独の処理で認められたが,灌水単独の処理では認められなかった。また,フェロサンドと灌水の併用処理はフェロサンド単独の処理に比べ発病抑制効果が優っていた(表2)。

 ④ 収量は,フェロサンド単独の処理で無処理と同等だったが,フェロサンドと灌水の併用処理で無処理よりやや減少した(表2)。

 ⑤ 土壌pHを低下させ,交換酸度yを高める処理(フェロサンドと灌水の併用処理,フェロサンド単独の処理)は,防除価が高かった(表2,図1,2)。

 ⑥ フェロサンド処理初年目の収穫期土壌について,土壌の生物性に関する量的な差は各処理間で認められなかった(表3)。

 

4.成果の活用面と留意点

 Streptomyces scabiesが優占する道央・道南地方のジャガイモそうか病汚染圃場に於いても,「土壌pH調整,土壌水分管理によるジャガイモそうか病の軽減対策」(平成8年度指導参考事項)を準拠することにより,本病の発病を抑制できる。

5.残された問題点とその対応

 輪作,化学的土壌処理などの土壌環境改善並びに抵抗性品種の栽培などを組み合わせた技術の実証