成績概要書                 (作成平成12年 1月)
課題の分類
研究課題名:ホウレンソウケナガコナダニの薬剤感受性検定
        (農作物病害虫診断試験)
予算区分:道費
担当科:中央農試 病虫部 害虫科
研究期間:平成10〜11年
協力・分担関係:北檜山町農業センター
          檜山北部地区農業改良普及センター
          札幌市農業指導センター

1.目 的
 指導薬剤の効果が低下しているとの問題点が指摘されているため,薬剤の感受性検定を実施し効果を確認し,有効な薬剤の防除組み合わせを検討する。

2.方 法
 1)薬剤感受性検定試験
 (1)ディッピング法(薬液直接浸漬)による薬剤感受性検定
  ①供試個体群:1997年10月8日に深川市ほうれんそうハウスより採集。
  ②供試薬剤:DDVP乳剤(50),MEP乳剤,マラソン乳剤,PAP乳剤,ジメトエート乳剤,カルタップ水溶剤,ペルメトリン乳剤,シペルメトリン乳剤。
  ③検定方法:検定用ゲージを作成し,ビーカー内の薬液に容器ごと15秒間浸漬し,餌を少量入れ,KCL飽和液を入れたデシケーター内に置き,24,48時間後に生存数を調査した。
 (2)ろ紙接触法による薬剤検定
  ①供試個体群:ハウス内ほうれんそうの芯に寄生したホウレンソウケナガコナダニ。
  ②試験方法:プラスチックシャーレ(9㎝)にろ紙をしき,薬液を1.5ccしみ込ませ,芯に寄生しているホウレンソウケナガコナダニを払い落として放飼した(各処理2反復)。
  ③調査方法:供試コナダニ数を払い落としたのちに計数し,3日後に生存コナダニ数,死亡コナダニ数を計数した。
  ④供試薬剤:27薬剤
 2)防除試験
  1998年:エントマイト(生物農薬;捕食性トゲダニ),DDVP乳剤(50)1回散布
  1999年:エントマイト,DCIP粒剤処理+DDVP乳剤(50)2回散布

3.結果の概要
 1)薬剤感受性検定試験
  (1)ディッピング法(薬液直接浸漬)による薬剤感受性検定
   ほうれんそうに登録のある8薬剤のうち,ホウレンソウケナガコナダニに効果が認められた薬剤はDDVP乳剤(50)で,感受性の低下は認められなかった。
  (2)ろ紙接触法による薬剤検定
   供試した27薬剤のうち,3薬剤が実用濃度で効果が高かったが,いずれもほうれんそうに登録はない。
 2)防除試験
  (1)DDVP乳剤の2葉期1回散布の効果は認められるが,ホウレンソウケナガコナダニの発生が多い場合には,収穫期までの被害をおさえることはできなかった。
  (2)エントマイト(生物農薬:トゲダニの一種:未登録)による防除効果が認められる場合もあったが,効果は安定していない。放飼数,放飼時期,放飼方法の検討が必要である。
  (3)ほうれんそう残渣をハウス内にすき込むとホウレンソウケナガコナダニが多発するので,圃場に残渣等を残さない。
  (4)DCIP粒剤処理とDDVP乳剤2回散布を組み合わせると防除効果は安定する。
  (5)DCIP粒剤(30%)30Kg/10a,登録有り,播種前,全面土壌混和,1回。
  (6)DDVP乳剤(50%)1,000倍茎葉散布,登録有り,収穫14日前,3回以内。

表1 ホウレンソウケナガコナダニのディッピング法による薬剤感受性検定

表2 ろ紙接触法による薬剤検定

*:下線は供試数より死亡数が越えているので死亡率は100%とした.○:ほうれんそうに登録有り

表3 防除試験

 *:中心の葉にコナダニによる褐変した食痕が認められた株を被害株とした。
**:中心の葉にコナダニによる褐変した食痕が認められた株と見取りで外見的に奇形が
認められた株の合計とした。

4.成果の活用面と留意点
 1)本種に対する防除対策は「昭和62年度指導参考事項」に準拠し,DCIP粒剤処理と生育中のDDVP乳剤2回散布を組み合わせると防除効果はより安定する。
 2)DDVP乳剤の効果は高く薬剤感受性の低下は認められないが,散布にあたっては直接コナダニにかかるよう注意する。

5.残された問題点とその対応
 捕食性天敵による防除の可能性の検討