成績概要書 (作成 平成12年1月)

課題の分類
研究課題名:北海道における暗きょ排水の実態と機能向上対策
(北海道における高度排水改良法の開発と基準策定)
予算区分:道単
担当科:中央農試 農業土木部 生産基盤科
研究期間:平9-13年(中間)
協力・分担:道立林産試験場 利用部 成分利用科

1.目 的
北海道の暗きょ排水の施工実態と機能低下要因を明らかにし、改善対策を提案する。また、地域資源の暗きょ資材としての利用促進に寄与する。

2.方 法
1)暗きょ排水の施工実態
道営事業のうち暗きょ排水の事業実施が明らかな地区について検討した。
(1)水田:15976ha(昭60年〜)、(2)畑地:41652ha(昭46年〜)、(3)草地:5503ha(昭60年〜)

2)暗きょ排水の機能低下要因調査
道内各地において暗きょ排水の断面調査を行った。
(1)調査項目:暗きょ断面及び土壌断面調査(253断面)
(2)土壌理化学性(71地点):容積重、三相分布、飽和透水試験、山中式硬度、団粒分析
(3)暗きょ管埋設深調査(7地点):レベル測量

3)暗きょ排水疎水材利用試験
試験圃場で利用した各疎水材の調査と過去の試験圃場の追跡調査を実施した。
(1)モミガラ、(2)針葉樹・樹皮付き・伐根チップ、(3)火山礫・火山灰、(4)砂利
(5)ホタテ貝殻、(6)スト−カ粗粒物(石炭焼却粗粒物)
①理化学性(粒度分布、飽和透水係数、クリープ圧縮、電子顕微鏡画像解析(NIH-Image))
②暗きょ排水水質(BOD、COD、SS、pH、フェーノール類、抽出液の重金属など)
③疎水材の構成成分(成分組成、重金属、汚染物質を含む)

3.結果の概要

1)北海道の暗きょの疎水材使用率は調査対象期間全体で43.4%と低い。しかし、近年では暗きょの間隔が狭く、吸水きょの深さが浅くなり、新たな疎水材の使用も増え改善されてきた。
2)実施状況は地目や支庁ごとに暗きょの水準が違った(図1)。水田は整備水準が比較的高いが遅れている地域もあった。畑地では疎水材の有無により整備水準に差があった。草地は土戻し暗きょが主流であった。
3)暗きょ排水機能低下の直接的要因は埋め戻し土の土壌構造の消失などの土壌物理性の低下や疎水材の投入量不足が起因していた。また、間接的要因としては粘土客土や土壌圧縮による耕盤層の生成により圃場の排水性が低下があげられた。さらに、暗きょの維持管理や営農による排水対策が充分でなく、市町村で実施状況に差があった(表1)。
4)暗きょ排水の機能向上のための改善対策を表2に示した。
5)北海道で利用可能な疎水材を新たな資材を含めて総合的に提案した(表3)。

 

 

 

     図1 疎水材使用状況

 

 

4.成果の活用面と留意点
1)既存の暗きょ排水の機能維持向上および地域の排水対策の取り組みの参考となる。
2)暗きょ排水の計画・設計・施工のための参考となる。
3)北海道で利用可能な疎水材について提案した。

5.残された問題点とその対応
1)暗きょ排水の地形・土壌・地目に対応した計画・設計方法、営農による排水改善対策法、 北海道の排水不良土壌の要因区分について今後検討する。
2)低コスト排水改良法の開発は今後検討する。