成績概要書(作成 平成12年1月)

課題の分類
研究課題名:北海道における籾調製貯蔵技術
      (バラ籾調製・貯蔵技術の確立)
予算区分:道費
担当科 中央農試 農業機械部 機械科、経営部 経営科
研究期間:平成8〜10年
協力・分担関係:北大 農学研究科 農産物加工工学研究室

1.目  的
 北海道のカントリーエレベータにおける籾精選別技術と寒冷気候を利用したサイロ内籾低温貯蔵技術および貯蔵後の安全な籾摺条件を明らかにするとともに小規模貯蔵技術の可能性について検討し、代表的な施設事例の実態調査からカントリーエレベータの経済性と運営方式を明らかにする。

2.方  法
1)籾の精選別 ①供試施設 上川ライスタ-ミナル鷹栖工場CE、JA当麻CE、JA栗山RC ②供試機 各施設内選別システムの選別機 ③試験年次平成8〜9年、④調査項目 選別精度、各部流量、籾摺歩留
2)サイロ内籾貯蔵 ①供試施設 上川ライスタ-ミナル鷹栖工場CE、JA当麻CEのサイロ ②供試籾 鷹栖町産きらら397(H8、H9)、当麻町産籾 ③貯蔵期間 自然放冷(361t):H8.11下〜H9.7上、冬期通風冷却(378t):H9.11下〜H10.8中、冬期籾精選別:H10.1上〜H10.8上 ④調査項目 各部温湿度、品質
3)小規模籾貯蔵 ①貯蔵容量 場内300kg、現地約1トン ②供試籾 場内:深川市産きらら397、現地:厚真町産きらら397 ③貯蔵期間 収穫後〜翌年収穫期④調査項目 各部温度、品質など
4)広域農協(会社)営及び個別農協営カントリーエレベータ、農協営RC、集団営ミニRCを対象に、運営方式の特徴と経済性を検討する。

3.結果の概要
1)比重選別機、風力選別機、インデントシリンダ型選別機を組み合わせた籾精選別工程により、品質低下原因となる脱ぷ粒などを除去し、整粒割合を上げ、貯蔵効率や籾摺歩留、品質を向上させることができる。
2)北海道におけるサイロ内籾貯蔵では、自然放冷でも7月までは低温倉庫と同様の品質保持効果が得られた。サイロ内籾への冬期冷気通風により籾全体を氷点下に冷却可能であり、8月中旬の排出時点まで低温貯蔵より高い品質の保持が可能である。また、冬期間の籾精選別により、冬期通風と同様の冷却が可能である。
3) 自然放冷、冬期通風冷却のいずれも貯蔵中サイロ内に結露の発生はなかった。
4)排出時の籾温度が気温に近い時は直接籾摺でも玄米に胴割は生じない。籾温度が低い時でも揺動選別前後の玄米温度が籾摺機周辺空気の露点温度よりも高ければ胴割は発生せず、低い場合は籾の昇温が必要である。胴割を防止するには露点温度計で籾摺機周辺の露点温度を直接測定して判断することが望ましい。
5)小規模貯蔵では籾量が少ないため外気の影響を受けやすく、ビン断熱の効果も小さい。
6)農家の個人乾燥、営農倉庫での貯蔵とカントリーエレベータによる乾燥調製貯蔵のコストを比較すると、カントリーエレベータは貯蔵コストは高いが、乾燥調製コストが低くなり、乾燥から貯蔵、出庫までのトータルのコストが低くなる事例もあり、今後の米の物流改善に役立つことが明らかとなった。
7)トータルのコスト低減に結びつく運営方式としては、カントリーエレベータの利用に関わる水稲の栽培・収穫作業の組織化指導や籾殻堆肥化事業などを組み合わせ、費用割合の多い人件費の節減を図ることが大切である。このようなカントリーエレベータを軸にした水稲の栽培・収穫作業の組織化は、コスト低減のみならず、米の食味や品質改善の基盤となり、カントリーエレベータの性能を活かした高付加価値販売につながる。

 


注:図1 −5℃、図2 サイロおよび-5℃ 冷蔵庫(3〜5℃)で
玄米貯蔵した滋賀県産日本晴を基準米としたため、貯蔵中の
品質低下により、食味が相対的に貯蔵前より良くなった。

 


 


注:CE、A農協RCの費用は補助額を除いた圧縮計算

 

4.成果の活用面と留意点
1)北海道のカントリーエレベータのサイロにおける籾貯蔵方式に適用する。
2)サイロ貯蔵籾の冷却は初夏以降まで籾貯蔵予定のサイロに適用する。
3)安全な籾摺り温度条件の目安は今後の試験結果により変更の可能性がある。
4)比較検討のRCは貯留ビン活用の古い施設であり、最近のRCとは異なる。 5.残された問題点とその対応
1)貯蔵開始から翌年9月以降の長期籾貯蔵技術の検討が残されている。
2)貯蔵に要するエネルギ評価はしていない。
3)サイロ内籾の温度分布が品質に与える影響は解明していない。
4)カントリーエレベータ利用米の販売面のメリットの解明