課題の分類 研究課題名:菜豆・花豆の遺伝資源特性情報 (インゲンマメ及びベニバナインゲンの遺伝資源としての特性調査と増殖) (自殖性植物の特性調査) (バイテク技術応用による高級菜豆の早生・極大粒系統の選抜強化) 予算区分:道費(豆基)、道費 担当科:植物遺伝資源センター 研究部 資源利用科 研究期間:平成4〜12年度 協力・分担関係: |
1.目的
植物遺伝資源センターで道外・道内から収集した、菜豆・花豆の遺伝資源について特性調査を実施し、遺伝資源情報の充実と活用を促進する。
2.方法
1)試験実施場所:現地圃場(妹背牛町、滝川市江部乙)、場内圃場(ただし平成10〜12年度)
2)供試材料等:平成4〜12年の9年間に、菜豆(金時類、大福類、虎豆類、貝殻豆類、鶉豆類等)1,090点、花豆(白花豆、紫花豆等)285点、比較品種9〜26点を供試して主に一次評価項目を調査した。
なお、平成6年は成熟期等の重要形質の調査が十分できなかったため、次年度再調査した。
(1)供試材料の分類:種皮地色(白と有色)と斑紋の種類および豆の種類により11種類となり、花豆類が全体の20%で最も多く、次に金時類が多く、ともに200点を超えた。虎豆類は136点であった。大福類、手亡類は少なかった。
(2)収集地域別の供試点数:菜豆では、道外316点、道南101点、道央343点、道東109点、道北166点。花豆では、道外62点、道南18点、道央84点、道東76点、道北31点。
3.結果の概要
1)特性調査点数は、菜豆1,067点、花豆278点であった。これ以外に、不出芽等により調査できなかったものは30点であった。
2)観察による調査項目を集計した結果、花豆では、その種類の特徴を示すものが殆どであったが、菜豆では、草型、莢の硬軟、子実の形等で多様な変異が認められ、特に金時類で顕著であった。
3)菜豆の成熟期は、「大正金時」に比べて51日以上遅いものは少なく、百粒重は「大正金時」対比で80〜100%を中心として正規分布をしており、150%に近いものも認められた。
4)花豆の成熟期は、「大白花」に比べて21日以上遅いものがいくつかみられ、百粒重は「大白花」対比で60〜130%のものが殆どであったが、150%に近いものも認められた。
5)主な調査形質について特性値の分布を明らかにするとともに、成熟期と百粒重により有望な遺伝資源を選抜した(表1)。
6)菜豆では、矮性の金時類で、百粒重が「大正金時」よりも重い遺伝資源として2点、蔓性の虎豆類で、「福虎豆」よりも早生又は百粒重が優る3点が有望であった。花豆では、「大白花」よりも早生又は百粒重が優るものとして、白花豆で8点、紫花豆で6点が有望であった(表1)。
表1 有望遺伝資源の特性調査結果
種類名 | 収集 番号 |
試験 年次 |
収 集 地 | 胚軸色 | 花色 | 若莢 地色 |
莢の 硬軟 |
開花 期差 |
成熟 期差 |
百粒 重比 |
子実 の形 |
種皮 地色 |
種皮 斑紋 |
金時 | 1897B 1901 |
7 4 |
青森県市浦村 青森県市浦村 |
淡赤紫 淡赤紫 |
淡赤紫 淡赤紫 |
緑 緑 |
硬 硬 |
±0 ±0 |
+1 +8 |
124 123 |
長楕円 楕円 |
赤紫 赤紫 |
無 無 |
大正金時(平成4年) 大正金時(平成7年) |
淡赤紫 淡赤紫 |
淡赤紫 淡赤紫 |
緑 緑 |
硬 硬 |
7. 6 7.20 |
8.22 9. 7 |
66.2 55.7 |
楕円 楕円 |
赤紫 赤紫 |
無 無 |
|||
虎豆 | 5797 5798 5802 |
7 7 7 |
岩見沢市稔町 北村栄町 北村中央 |
緑 緑 緑 |
白 淡赤紫 淡赤紫 |
淡緑 淡緑 淡緑 |
ヤヤ硬 ヤヤ硬 ヤヤ硬 |
+3 −4 −2 |
+16 −3 −4 |
107 100 101 |
短楕円 短楕円 短楕円 |
白 白 白 |
偏多 偏多 偏多 |
福 虎 豆(平成7年) | 緑 | 多色 | 緑 | 硬 | 7.30 | 9.11 | 62.1 | 短楕円 | 白 | 多色 | |||
花豆 (白) |
0530 1410 1669 1673 4462 4602 7117 7118 |
5 5 10 10 8 8 12 12 |
椴法華村銚子 厚岸町太田 利尻町政泊 利尻町沼浦 厚岸町尾幌 倶知安町 置戸町雄勝 置戸町幸岡 |
緑 緑 緑 緑 緑 緑 緑 緑 |
白 白 白 白 白 − 白 白 |
濃緑 濃緑 緑 緑 緑 緑 緑 緑 |
硬 硬 硬 硬 硬 硬 硬 硬 |
+7 −1 +1 +1 − − −1 −1 |
+6 −21 +2 +2 −13 −6 −2 +4 |
133 91 136 133 107 125 133 121 |
腎臓 腎臓 腎臓 腎臓 腎臓 腎臓 腎臓 腎臓 |
白 白 白 白 白 白 白 白 |
無 無 無 無 無 無 無 無 |
大白花(延べ7ヶ年平均) | 緑 | 白 | 緑 | 硬 | 7.18 | 10. 9 | 142.0 | 腎臓 | 白 | 無 | |||
花豆 (紫) |
1325 1345 1347 5818 6712 6832 |
9 8 11 12 12 12 |
鶴居村下久著呂 豊浦町大岸 豊浦町大岸 北村幌達布 長野県浪合村群馬県吾妻町 |
紫 緑 紫 赤紫 紫 赤紫 |
赤 − 赤 赤 白 赤 |
緑 緑 緑 緑 緑 緑 |
硬 − − 硬 硬 硬 |
−1 − ±0 +1 −1 ±0 |
−17 達せず 達せず 達せず 達せず 達せず |
82 131 105 141 119 128 |
腎臓 腎臓 腎臓 腎臓 腎臓 腎臓 |
紫 淡紫 紫 紫 紫 紫 |
− 偏大 偏大 偏斑 偏斑 偏斑 |
4.成果の活用面と留意点
1)菜豆・花豆の遺伝資源の分類・整理のための基礎データとして利用する。
2)試験年次により生育等が異なるので、それを考慮した上で利用する。
5.残された問題とその対応
1)一次評価が未実施の遺伝資源については、「自殖性植物の特性調査(第三次計画)」で対応する。
2)遺伝資源の特性情報をより充実させるため、貯蔵遺伝資源の再生産時に再度特性調査を行い、データの蓄積を図る。
3)有望遺伝資源については、二次評価項目の特性調査を進めることが必要である。