成績概要書                           (平成13年1月)
1.課題の分類  分類番号  整理番号
2.場所名 北見農試作物研究部畑作園芸科
         花・野菜技術センター研究部野菜科
         北農試作物開発部野菜花き研究室
3.系統名 たまねぎ「T-418」

4.育成経過
 「T-418」はタキイ種苗株式会社において、種子親を「札幌黄」×「早生 Early Yellow Globe 群」の後代から選抜した系統とし、花粉親を「札幌黄」の北見在来から選抜した系統とする中生の早の単交配一代雑種である。
 ホクレン農業協同組合連合会の委託を受けて、北見農業試験場、花・野菜技術センター並びに北海道農業試験場において、平成10年から3ヵ年、北海道の春播き露地移植栽培に対する適応性の検定を実施してきた。平成11年からは、北見市、留辺蘂町、上湧別町、富良野市、岩見沢市並びに札幌市において、現地試験を実施した。この間、北見農試において、病害抵抗性検定、内部品質調査及び食味試験を実施した。
 「T-418」は中生の早で球肥大性が良く、規格内率の高い多収品種であり、皮色・皮張りにも優れている。また、「ウルフ」など既存中生の早の品種より貯蔵性が高いなどの優点を有する系統である。

5.特性の概要 (標準品種「ツキサップ」、対照品種「ウルフ」、参考品種「スーパー北もみじ」との比較)
 1)種子特性および苗生育 発芽勢は「ツキサップ」、「ウルフ」、「スーパー北もみじ」より高く、発芽率はこれらと同等である。苗の草丈は「スーパー北もみじ」よりやや高く、「ウルフ」と同等である。葉数及び葉鞘径は「ウルフ」と同等である。
 2)葉部生育 圃場における初期生育及びその後の草勢も「ウルフ」並に旺盛である。葉色は「ウルフ」より濃く、草姿は「ウルフ」よりわずかに開張するが、「スーパー北もみじ」並である。均一性は「ウルフ」とほぼ同等で、葉先枯れは少ない。生育盛期の草丈は、「ウルフ」と同等で、「スーパー北もみじ」より高い。葉数、葉鞘径は「ウルフ」と同等である。
 3)早晩性 倒伏期は「ウルフ」と同等で、「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より3日早く、中生の早に属する。枯葉期はこれら3品種よりやや早い。
 4)耐病性 乾腐病の発生程度は「蘭太郎」(発生程度が中)よりも低いが、「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より高く、「ウルフ」よりやや高い。灰色腐敗病などボトリチス属菌による病害に対しては、「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より発生率がやや低い。
 5)耐抽台性 不時抽台は「ツキサップ」と同等である。「ウルフ」との差異は明らかではない。
 6)収量性 平均一球重は「ウルフ」並で、「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より優る。規格内率は「ウルフ」と同等であり、規格内収量も「ウルフ」並に高い。また、L大球以上(球径が8cm以上)比率は「ウルフ」より高い。
 7)貯蔵性 貯蔵後健全率は高貯蔵性の「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より劣るが、「ウルフ」より優る。
 8)球品質 球は「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より軟らかいが、「ウルフ」よりやや硬い。外皮色は「ウルフ」より濃く、「スーパー北もみじ」並で ある。皮張り程度は「ウルフ」並である。

6.試験成績概要


品 種
および
系統名
倒伏期

(月日)
乾腐
病率
(%)
その他
病害率
(%)
規格内
収量
(kg/a)
同左比

(%)
L大以上
比率
(%)
平均
一球重
(g)
規格
内率
(%)
貯蔵後
健全率
(%)


T-418
ツキサップ
ウルフ
S.北もみじ
8. 6
8. 9
8. 4
8. 8
0.5
0.0
0.2
1.0
8.1
11.5
5.1
16.0
491
458
534
432
107
100
117
94
35.2
36.2
46.4
32.9
193
185
195
182
85
84
89
87
12.5
50.5
3.5
67.5



T-418
ツキサップ
ウルフ
S.北もみじ
8. 1
8. 3
7.31
8. 1
1.9
2.2
2.7
0.9
2.5
3.5
1.8
2.5
548
426
572
416
129
100
134
98
14.6
7.7
14.7
7.5
189
165
200
160
97
94
95
90
61.5
83.2
19.3
80.3



T-418
ツキサップ
ウルフ
S.北もみじ
7.29
8. 5
7.30
8. 6
1.2
0.6
0.6
1.1
2.0
1.4
2.3
0.8
488
452
512
515
108
100
113
114
19.2
11.7
19.5
16.9
175
172
185
183
92
85
91
91
21.6
84.1
10.8
85.1


T-418
ツキサップ
ウルフ
S.北もみじ
7.26
7.29
7.26
7.26
3.0
1.5
1.5
2.0
0.8
0.0
0.5
0.3
643
523
631
572
123
100
121
109
44.3
19.9
33.8
21.2
227
186
216
201
94
90
94
92
35.9
80.1
12.9
75.2



T-418
ツキサップ
ウルフ
S.北もみじ
7.30
8. 4
8. 2
8. 3
1.3
4.1
0.9
1.1
0.7
0.0
0.5
0.0
573
548
573
557
105
100
105
102
47.3
43.2
42.6
37.2
224
215
222
211
93
93
93
94
90.2
93.1
68.8
95.6


T-418
S.北もみじ
8. 6
8. 6
7.4
11.7
2.7
1.4
473
441
(107)
(100)
16.5
51.7
191
220
96
81
-
-



T-418
ツキサップ
ウルフ
S.北もみじ
7.29
8. 3
7.30
8. 5
1.0
0.0
1.3
0.0
0.0
0.3
0.0
0.8
699
569
714
619
123
100
125
109
56.7
32.2
46.8
39.4
234
214
230
209
91
80
95
90
4.3
52.8
4.1
80.0



T-418
ツキサップ
ウルフ
S.北もみじ
7.31
7.29
7.28
7.30
9.2
4.2
5.6
2.2
0.0
0.4
0.0
0.2
449
366
417
356
123
100
114
97
24.7
5.2
13.2
2.8
179
137
163
146
91
95
88
83
34.4
76.9
9.4
71.1


T-418
ツキサップ
S.北もみじ
7.30
7.31
8. 3
2.5
2.9
3.3
0.0
0.0
0.4
555
469
472
118
100
100
29.2
14.1
16.1
198
175
185
95
91
88
48.0
90.0
91.0


T-418
ツキサップ
ウルフ
S.北もみじ
7.31
8. 3
7.31
8. 3
2.8
1.9
2.0
1.2
2.3
2.9
1.6
3.5
546
466
554
478
117
100
119
103
29.7
19.5
26.3
17.5
200
178
199
181
92
90
92
89
36.9
73.1
16.1
77.4

 注)札幌市は平成11年値、上湧別町は平成12年値。北農試、花野セの貯蔵後健全率は平成10・11年産の平均、他は平成11年産。全平均(10〜12年)は供試品種の欠けていない17試験例の平均(貯蔵後健全率は10例)。
L大以上(球径が8cm以上)比率(%):L大規格以上の球重/規格内球重×100。

7.用途および適応地域
 中生の早で球肥大性に優れ、既存中生の早品種よりも優れた貯蔵性を備えていることから、年内から翌年早春までの出荷期間に対応した一般青果用品種として、全道のたまねぎ栽培地帯に導入可能である。

8.保有種子量 4,000kg

9.普及見込み面積 1,500ha

10.栽培上の留意点 乾腐病の発生程度はやや低い程度であるので、同病多発圃場での作付けは避ける。