成績概要書                       (平成13年1月)
1.課題の分類  分類番号  整理番号
2.場所名  北見農試作物研究部畑作園芸科
          花・野菜技術センター研究部野菜科
          北農試作物開発部野菜花き研究室
3.系統名  たまねぎ「イオマンテ(T-422)」 

4.育成経過
 「イオマンテ(T-422)」はタキイ種苗株式会社において育成された、種子親を「Northern系 (米国種)」×「EarlyYellow Globe 群」の後代から選抜した系統とし、花粉親を「札幌黄」の北見在来から選抜した系統とする中生の単交配一代雑種である。
 ホクレン農業協同組合連合会の委託を受けて、北見農業試験場、花・野菜技術センター並びに北海道農業試験場において、平成10年から3ヵ年、北海道の春播き露地移植栽培に対する適応性の検定を実施してきた。平成11年からは、北見市、留辺蘂町、上湧別町、富良野市、岩見沢市並びに札幌市において、現地試験を実施した。この間、北見農試において、病害抵抗性検定、内部品質調査並びに食味試験を実施した。
 「イオマンテ(T-422)」は中生で、球肥大性が良く、規格内率の高い多収品種である。また、既存の中生品種「カムイ」と比較してもL大規格以上の収量性が優れる特徴がある。

5.特性の概要 (標準品種「ツキサップ」、対照品種「カムイ」、参考品種「スーパー北もみじ」との比較)
 1)種子特性および苗生育 発芽勢は「カムイ」より高く、「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」と同等で、発芽率はこれら3品種と同等に高い。苗の草丈は「カムイ」より低く、葉数及び葉鞘径はこれら3品種と同等である。
 2)葉部生育 圃場における初期生育及びその後の草勢も比較した3品種より優り、葉色はこれら3品種と同等である。草姿は「カムイ」より開張するが、「スーパー北もみじ」と同等である。葉先枯れは「カムイ」と同等で、「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より少ない。生育盛期の草丈、葉数及び葉鞘径は、「カムイ」と同等である。
 3)早晩性 倒伏期は「カムイ」より1日、「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より2日早、中生に属する。枯葉期はこれら3品種よりやや早い。
 4)耐病虫性 乾腐病の発生程度は「蘭太郎」(発生程度が中)よりも低いが、「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より高く、「カムイ」よりやや高い。灰色腐敗病などボトリチス属菌による病害や「肌腐れ」症状に対しては,「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より発生率がやや低い。
 5)耐抽台性 「ツキサップ」よりも優れるが、試験期間中に不時抽台の発生はみられず、耐抽台性は明らかではない。
 6)収量性 平均一球重及び規格内率は「カムイ」並で、「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より優る。規格内収量も「カムイ」並に高い。また、L大球以上(球径が8cm以上)比率は「カムイ」より優る。
 7)貯蔵性 貯蔵後健全率は高貯蔵性の「ツキサップ」、「スーパー北もみじ」より劣るが、「カムイ」よりやや優る。
 8)球品質 球の硬さは「カムイ」並で、外皮色は「ツキサップ」より濃いが、「スーパー北もみじ」、「カムイ」よりやや劣る。球の揃いは「スーパー北もみじ」、「カムイ」とほぼ同程度で、皮張りの程度はやや劣る。

6.試験成績概要


品 種
および
系統名
倒伏期

(月日)
乾腐
病率
(%)
その他
病害率
(%)
規格内
収量
(kg/a)
同左比

(%)
L大以上
比率
(%)
平 均
一球重
(g)
規格
内率
(%)
貯蔵後
健全率
(%)


イオマンテ
ツキサップ
カムイ
S.北もみじ
8. 5
8. 9
8. 7
8. 8
0.5
0.0
0.1
1.0
7.0
11.5
6.5
16.0
531
458
520
432
116
100
114
94
39.0
36.2
39.0
32.9
194
185
193
182
88
84
87
87
20.4
50.5
24.3
67.5



イオマンテ
ツキサップ
カムイ
S.北もみじ
8. 1
8. 3
8. 3
8. 1
4.4
2.2
2.2
0.9
1.7
3.5
1.8
2.5
498
426
545
416
117
100
128
98
14.9
7.7
8.5
7.5
181
165
187
160
95
94
97
90
59.0
83.2
51.9
80.3



イオマンテ
ツキサップ
カムイ
S.北もみじ
7.30
8. 5
7.31
8. 6
1.5
0.6
0.6
1.1
1.2
1.4
0.8
0.8
463
452
476
515
102
100
105
114
19.2
11.7
12.0
16.9
176
172
164
183
88
85
94
91
43.1
84.1
35.2
85.1


イオマンテ
ツキサップ
カムイ
S.北もみじ
7.26
7.29
7.27
7.27
5.4
1.5
4.2
2.0
1.0
0.0
0.8
0.3
606
523
609
572
116
100
116
109
45.9
19.9
34.6
21.2
218
186
213
201
93
90
96
92
52.7
80.1
38.9
75.2



イオマンテ
ツキサップ
カムイ
S.北もみじ
8. 2
8. 4
8. 4
8. 3
0.7
4.1
0.7
1.1
0.0
0.0
0.0
0.0
550
548
562
557
101
100
103
102
48.9
43.2
42.2
37.2
213
215
216
211
94
93
95
94
95.7
93.1
89.9
95.6


イオマンテ
カムイ
S.北もみじ
8.13
8. 4
8. 6
3.0
0.4
11.7
1.0
4.8
1.4
534
502
441
(121)
(114)
(100)
31.3
15.9
51.7
211
186
220
92
99
81
-
-
-



イオマンテ
ツキサップ
カムイ
S.北もみじ
7.31
8. 3
8. 2
8. 5
0.3
0.0
0.0
0.0
0.0
0.3
0.0
0.8
708
569
648
619
124
100
114
109
46.8
32.2
33.6
39.4
222
214
205
209
96
80
95
90
41.4
52.8
22.9
80.0



イオマンテ
ツキサップ
カムイ
S.北もみじ
7.29
7.29
7.31
7.30
3.2
4.2
6.2
2.2
0.0
0.4
0.2
0.2
437
366
420
356
119
100
115
97
12.8
5.2
9.5
2.8
162
137
160
146
93
95
90
83
42.7
76.9
35.8
71.1


イオマンテ
ツキサップ
S.北もみじ
7.30
7.31
8. 3
1.7
2.9
3.3
0.8
0.0
0.4
487
469
472
104
100
101
12.7
14.1
16.1
176
175
185
94
91
88
67.0
90.0
91.0


イオマンテ
ツキサップ
カムイ
S.北もみじ
8. 1
8. 3
8. 2
8. 3
2.4
1.9
2.1
1.2
1.9
2.9
1.7
3.5
532
466
532
478
114
100
114
103
27.8
19.5
17.5
22.0
192
178
189
181
93
90
93
89
47.7
73.1
41.1
77.4

注)札幌市は平成11年値、上湧別町は平成12年値。北農試、花野セの貯蔵後健全率は平成10・11年産の平均、他は平成11年産。全平均(10〜12年)は供試品種の欠けていない17試験例の平均(貯蔵後健全率は10例)。
L大以上(球径が8cm以上)比率(%):L大規格以上の球重/規格内球重×100。

7.用途および適応地域
 中生であり、既存中生品種よりもL大以上比率が高く、やや高い貯蔵性を備えていることから、年内から翌春までの出荷期間に対応した一般青果用品種として、全道のたまねぎ栽培地帯に導入可能である。

8.保有種子量  7,500kg

9.普及見込み面積  3,000ha

10.栽培上の留意点  乾腐病の発生程度はやや低い程度であるので、同病多発圃場での作付けは避ける。