成績概要書                          (作成 平成13年1月)
課題の分類 北海道 作物 園芸 花き−球根類 栽培
研究課題名:寒冷しゃを利用した小球根類の省力掘上げ法       
       (花き遺伝資源の導入及び特性の解明)
予算区分:バイテク(ジーンバンク)
研究期間:平成6〜12年度
担当研究室:北海道農試・作物開発・野菜花き研
担当者:篠田浩一・村田奈芳
協力・分担関係:な し

1.目 的
 アリウム等の小球根類は、球径が1〜2cmと小型で、さらに1〜数mmの仔球を多数形成するため、球根の掘上げに時間を要するとともに、掘残しが生じやすいことから、寒冷しゃ等ネット資材を用いた簡便で掘残しのない省力掘上げ法を検討した。

2.方 法
 試験1 寒冷しゃの埋設方法の検討:寒冷しゃ(テイジンテトロン寒冷しゃ、T600(黒)、目合い1.2mm)を供試し、対照区(無処理)、寒冷しゃ一重区(球根の下部のみ寒冷しゃを埋設)、寒冷しゃ二重区(球根の上下に寒冷しゃを埋設)の3区を設け、球根の掘上げ時間、球根収量、球根形成位置等の調査を行った。
 試験2 ネット資材の検討:寒冷しゃ(T600(黒))、割繊維不織布(タフベル4000N)、防風網(スカイラッセル防風網、目合い4mm)の3種類のネット資材を用いて定植時に球根の上下に資材を埋設し、ネット外の球根形成の有無を調査した。
 試験3 寒冷しゃを用いた栽培に適した種類のスクリーニング:上記試験で良好な結果が得られた寒冷しゃ二重区について、アリウム、クロッカス、シラー、ムスカリ等125種を供試しネット外の球根形成の有無を調査した。
 なお、試験1、2では90cm×100cmに区画した畝を作り、図1に示した4種の球根を1区当たり100球供試した。試験3では、1種当たり200〜1000球を供試した。球根の定植は10月中旬、掘上げは翌年の8月中旬に行った。

3.結果の概要
(1)寒冷しゃの埋設方法の検討:慣行法では小球種ほど掘上げに時間を要したのに対し、寒冷しゃを球根の上下に埋設した場合(二重区)の掘上げ時間は球種に関係なくほぼ同一で、慣行法の1/4〜1/6と大幅に短縮した(図1)。球根の下部のみに寒冷しゃを埋設した場合(一重区)の掘上げ時間は慣行法と二重区のほぼ中間の値を示した。寒冷しゃ区の掘上げ球数は対照区とほぼ同一であったが、球肥大が若干抑制されたため掘上げ球重は対照区より5〜15%減少した(図2)。
(2)ネット資材の検討:トリテレイア、アリウム・モリー、アリウム・ロゼウムはいずれのネット資材でもネット内に球根が形成された。しかし、アリウム・ユニフォリウムでは寒冷しゃではネット内に全ての球根が形成されたが、タフベルや防風ネットではネットの上下に多くの球根が形成され(図3)、掘上げ時間も寒冷しゃの3倍程度を要した。
(3)寒冷しゃを用いた栽培に適した種類のスクリーニング:供試した125種の小球根類のうち117種は寒冷しゃ内に球根を形成した。しかし、リューココリネはドロッパー(垂下球)が多発し、寒冷しゃの下に多くの球根を形成した。また、サンダーソニア、アリウム・スファエロセファロン、オーニソガラム・ウンベラーツムも寒冷しゃの上下に球根を形成した。
 以上の結果、定植時に球根の上下に寒冷しゃを埋設することにより、球根収量は5〜15%減少するものの掘上げ時間は慣行の1/4〜1/6と大幅に短縮することが示された。ただし、ドロッパーを発生する種類は、本法の利用には適さないことが示された。


図1 寒冷しゃの埋設方法と掘上時間(0.9m2当たり、女性2名による)


図2 寒冷しゃの埋設方法と球根収量


図3 ネット資材の種類と球根収量・球根形成位置

4.成果の活用面と留意点
 小球根類の省力掘上げ技術として利用できる。
 ドロッパーを多発する種類ではネット外に新球が形成されることがある。

5.残された問題点とその対応
 切花生産並びに花壇植栽での利用法の検討