成績概要書        (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:授乳母豚に対する高蛋白質飼料の給与効果     
          (配合飼料の高品質化による豚の生産性向上試験Ⅲ)
予算区分:受託
研究期間:平成9〜11年度
担当科:道立畜産試験場 家畜生産部養豚科
協力分担:

1.目的 授乳期間における蛋白質の出納を調査し、授乳豚の蛋白質要求量を推定するとともに、高蛋白質含量飼料給与の繁殖性への影響を調査する。

2.方法
1)授乳期間の窒素出納  授乳中の母豚および哺乳子豚における窒素出納を明らかにする。
供試豚 :授乳母豚(初産、2産)16頭
試験処理:飼料中CP(リジン)含量(%);15.2(0.70)、17.2(0.85)、19.8(1.00)
試験期間:授乳期21日間
調査項目:母豚窒素摂取量、母豚および子豚の窒素排泄量、子豚の窒素蓄積量(比較屠殺法)

2)授乳期飼料の適正蛋白質含量の検討
試験1  供試豚:授乳母豚29頭(初産、2産、3産)、
試験処理・試験期間:1)に同じ、
調査項目:哺乳子豚発育、母豚発情再帰
試験2  供試豚:授乳母豚50頭(初産、2産)、
試験処理・試験期間:1)に同じ、
調査項目:哺乳子豚発育

3.成果の概要
1)母豚の粗蛋白質摂取量と母豚および子豚への窒素蓄積量の関係を回帰式により求めた。
窒素蓄積量(g/3週間)、CP:粗蛋白質摂取量(kg/3週間) (データ範囲 CP:12.7〜23.4kg)
  総窒素蓄積量   Y= 99.24×CP−316.6   R2=0.87    RSE=119.2   
   子豚窒素蓄積量  Y= 56.56×CP+ 42.0   R2=0.49    RSE=179.9
  母豚窒素蓄積量  Y= 42.68×CP−358.6   R2=0.39    RSE=166.0   
2)母豚の授乳期の一日当たり窒素摂取量と子豚の日増体重との間にも窒素蓄積と同様に摂取量の増加に伴い日増体重が高くなる関係が(r=0.71)認められた。哺乳頭数10頭で期待増体量を2kgとした場合、これに必要な母豚CP摂取量は0.83kg/日と推定され、母豚の飼料摂取量を4.76kg/日(100kg/3週間)とすると飼料のCP含量は17.4%必要となり、現行のCP15%程度の飼料では蛋白質が不足する可能性があると考えられた(図1)。
3)授乳期の母豚に、CP含量15%、17%、20%の飼料を給与した時の哺乳子豚の増体重は、15%飼料に比較して17%または20%飼料給与で高くなる傾向にあった(表1,表2)。
4)CP17%飼料給与時の母豚飼料摂取量に対する哺乳子豚のDGの回帰の高さは、CP15%飼料給与給与時に比較して有意に高かった。以上より、授乳母豚用飼料のCP含量は17%程度が適正と判断された。
5)給与飼料のCP含量と離乳母豚の発情再帰日数の関係は明かではなかった。


4.成果の活用面と留意事項
(1)試験成果は、初産および2産の母豚に適応する。
(2)高蛋白質飼料の設計はアミノ酸バランスを考慮する。
(3)エネルギー摂取量が不足しないように飼料給与する。
(4)本試験の結果は、子豚に人工乳を給与しない条件で行われたが、実際の飼養管理では、慣行に従って、餌付けのための人工乳給与は必要である。

5.残された問題とその対応
(1) CP摂取量と発情再帰のメカニズムの解明