成績概要書 (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:施設野菜に対する塩類集積回避型肥料の施用効果
(環境負荷軽減をめざした園芸作物の高度肥料利用技術の確立
1)塩類集積回避型肥料を用いた施設野菜の施肥法改善)
予算区分:国費(補助) 担当科:道南農試 研究部 園芸環境科
研究期間:平成10〜12年度 協力・分担関係:なし |
1.目的
施設土壌の塩類集積を回避するため、副成分の作物及び土壌への影響と、副成分を含まない塩類集積回避型化成肥料の施肥効果を検討する。
2.方法
1)肥料形態および塩類濃度の影響(平成10〜12年、3カ年継続)
供試作物:長ねぎ(5月定植)、場所:道南農試内ハウス枠圃場(中粗粒質褐色低地土)
(1)肥料形態の検討
肥料形態の種類:①対照(副成分含有):硝酸カルシウム、硫安、塩化カリウム、過石
②全吸収型(副成分無):リン酸水素2アンモニウム、尿素、硝酸カリウム
(2)塩の添加が長ねぎの生育と土壌におよぼす影響
塩の組成:硫酸カリウム、塩化カリウム、過石、塩化ナトリウム、硫酸苦土=重量比2:2:2:1:1
塩添加量 ①対照(無添加) 、②中塩添加(目標1mS/cm上昇)、 ③高塩添加(同2mS/cm)
共通施肥量:基肥はN−P2O5−K2Oを15-15-15kg/10a、追肥なし
2)農試ハウスにおける塩類集積回避型化成肥料の施肥効果(平成11年)
供試作物:トマト 品種:ハウス桃太郎、夏秋穫り7段摘芯、(中粒質褐色低地土)
処理:①対照(基肥は硫安、過石、硫加で施用、追肥は硫安、硫加で施用)
②塩類集積回避型化成肥料[基肥は化成肥料(燐安、硝安石灰、重炭酸加里、珪酸加里を含有)+リン酸水素アンモニウムで施用、追肥は液肥用化成肥料で施用]
共通施肥量:基肥はN−P2O5−K2Oを10-20-20kg/10a、追肥はN-K2O各4kg/10a×4回
3)現地ハウスにおける塩類集積回避型化成肥料の施肥効果(平成12年)
供試作物:ホウレンソウ(夏作、3〜4作目)、場所:大野町(中粒質褐色低地土)
処理:①慣行(S555)
②緩効性塩類集積回避型化成肥料(ウレアホルム態N、ク溶性P・K)
③速効性塩類集積回避型化成肥料(試験2-②と同一)
共通窒素施肥量:7.5kg/10a(3作目)+6.0kg/10a(4作目)、②は3作目に全量施用
3.結果の概要
1)副成分を含有しない肥料を施用することによって土壌のEC値は低く維持され、作物(長ねぎ)の窒素吸収効率も高まった(表1)。
2)副成分添加に伴う土壌EC値の上昇は顕著で、作物(長ねぎ)の窒素吸収阻害と生育抑制が認められた(表2)。
3)比較的塩類集積が進んでいない場内ハウスでは、塩類集積回避型化成肥料の使用によって土壌EC値が低く保たれ、作物(トマト)の生育は良好であった(表3)。
4)塩類集積の進んだ農家ハウスでは、塩類集積回避型化成肥料の特徴は判然とせず、肥効は緩効性・速効性ともに、一般化成と同程度であった(表4)。
5)EC値が高まるにつれて窒素吸収量が低下することから(図1)、施設野菜の持続生産のためには土壌EC値の上昇を抑制することが重要であり、その一手段として塩類集積回避型肥料が有効と考えられた。
表1.肥料形態が長ねぎの収量および跡地土壌におよぼす影響
処理/ 調査年 |
全収量(t/10a) |
pH |
EC(mS/cm) |
平10 |
平11 |
平12 |
平均 |
平10 |
平11 |
平12 |
平10 |
平11 |
平12 |
対照(副含 全吸収型 |
10.8 |
9.5 |
8.1 |
9.5 |
5.7 |
6.1 |
6.1 |
0.52 |
0.14 |
0.27 |
12.9 |
9.8 |
9.1 |
10.6 |
6.5 |
6.4 |
6.2 |
0.16 |
0.10 |
0.11 |
表2.塩添加が長ねぎの収量および跡地土壌EC値におよぼす影響
処理/ 調査年 |
全収量(t/10a) |
EC(mS/cm) |
平10 |
平11 |
平12 |
平均 |
平10 |
平11 |
平12施肥直後 |
平12跡地 |
対照 中 塩添加 高 塩添加 | 10.8 |
10.4 |
9.4 |
10.2 |
0.34 |
0.10 |
0.12 |
0.10 |
9.9 |
8.5 |
7.5 |
8.7 |
1.01 |
0.19 |
0.41 |
0.24 |
8.8 |
8.2 |
7.1 |
8.0 |
1.33 |
0.67 |
0.83 |
0.36 |
表3.EC値が低い土壌における塩類集積回避型化成肥料のトマトに対する施肥効果
処 理 |
収量(t/10a) |
N吸収量 (kg/10a) |
施肥N 利用率 |
EC(mS/cm) |
規格内 |
全収量 |
6/22 |
7/1 |
7/12 |
7/22 |
対照 塩類集積回避 |
9.74 |
11.2(100) |
21.7 |
72.4 |
0.62 |
0.48 |
0.52 |
0.77 |
9.92 |
11.3(101) |
24.0 |
79.9 |
0.37 |
0.14 |
0.28 |
0.12 |
表4.EC値が高い土壌における塩類集積回避型化成肥料のホウレンソウに対する施肥効果
処 理 |
全収量 (t/10a) |
窒素吸収量 (kg/10a) |
平均欠株率 (%) |
EC(mS/cm) |
7/6 |
7/24 |
8/21 |
9/13 |
慣行高度化成 |
3.22(100) |
12.45(100) |
31.7(100) |
1.20 |
1.28 |
1.20 |
1.37 |
集積回避(緩効) |
3.24(101) |
12.49(100) |
18.9(60) |
1.25 |
1.40 |
1.20 |
1.32 |
集積回避(速攻) |
3.45(107) |
12.37(99) |
20.4(64) |
1.07 |
1.21 |
1.20 |
1.35 |
図1.ねぎ定植直後の土壌EC値と窒素吸収量との関係
4.成果の活用面と留意点
①施設栽培に適用する。
②施肥量は道の施肥標準に準ずる。
5.残された問題とその対応
①高塩類集積施設土壌への対応。
②肥料の原材料に対応した肥効の確認。