成績概要書                                  (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:幌加内町南部地域における農地利用形態の変化とその要因
予算区分:経常研究費
担当科:開発土木研究所土壌保全研究室
担当者:
研究期間:平成6〜10年度
協力・分担:無し 

1.目的
 北海道での耕地面積の減少や耕作放棄地の増加は現時点では都府県に比べ進行していない。しかし、今後、耕作放棄地が急速に増加することも懸念されている。そこで、農業地域類型では山間農業地域に属し、過疎化が進行している地域でありながら、耕地面積が増加してきた幌加内町南部地域を対象に、1970年と1992年での農地利用の変化を統計資料等を併用して明らかにするとともに、農地利用の変化と自然立地条件や農業基盤整備条件等との関係を解明する。

2.方法
 以下の統計資料や既往の調査報告書を利用し、現地聞取調査で補完をした。
 1)農地利用形態:北海道開発局「中山間地域農地等保全管理手法検討調査幌加内地区報告書」の中の1970年および1992年の農地利用状況図を利用した。
 2)農業集落別農家数、農家人口、基幹的農業従事者数、経営耕地面積、収穫 面積、耕作放棄地面積:農業センサスを利用した。
 3)地域の土壌:地力保全基本調査成績書に準じた「平成2年度幌加内町土壌特性調査報告書」を利用し、土壌区分ごとの面積は土壌図のプラニメータ計測した。
 4)農業基盤整備状況:「国営総合農地開発事業南幌加内地区事業計画書及び一般計画平面図」および「北海道営ほ場整備事業上幌加内地区・平和地区事業計画書及び計画一般図」を参考にした。

3.結果の概要
 1)減反政策により農地の大部分を占めていた水田が大きく減少するとともに、一般畑も減少しソバ畑と牧草地が増加した(図1)。耕作放棄地は生じていなかった。
 2)水田が残っている地域は大規模な農業基盤整備(図2)がなされ、その土壌は低地土であり、反対に、台地土に分布した水田はほとんどがソバ畑や牧草地に転換されていた(図3)。低地土の水田で転換された場所は、農家数の減少が特に著しい集落に属す所か、または通作距離が長い所であった。
 3)ソバは所要労働時間が短く、稲作との労働競合が生じないこと等の理由により、転作作物に選定された。現在は、特産品として町ぐるみでソバの栽培振興につとめている。
 4)水田として継続利用される地域の存在には、自然立地条件(土壌型)に関する要因と社会的要因(農業基盤整備や通作距離)の両方が深く関係する(図4)。
 5)農業基盤整備による水田としての継続利用と、転換畑や離農跡地でのソバの栽培規模拡大が、耕作放棄地の発生を抑制し、農地の有効利用に結びついていると推定される(図4)。


図1 農地利用状況の変化 (1970〜1992年)


図2 農業基盤整備事業の実施位置図


図3 土壌類型ごとの農地利用状況 (1992年)


  (A):幌加内町、 (B):規模拡大しない場合
 図4 土地利用の変化とそれに関わる要因

4.成果の活用面と留意点
 本研究成果は、水田の転換されやすい条件や耕作放棄を抑制する条件等を明らかにしており、行政などが農地の継続利用を図る場合の研究事例として活用され得る。

5.残された問題とその対応
 1)1992年以降、更なる減反が進行しており、現(2000年)時点での土地利用の変化については、上記の調査結果が適用されない地域の存在も考えられる。
 2)農家戸別の理由(後継者の有無や経済的事情)による離農等の影響は考慮されておらず、残された課題である。