成績概要書                (作成 平成13年1月)
研究課題名:「ほしのゆめ」における斑点米カメムシの要防除水準
予算区分:道 費
担当科:中央農試クリーン農業部総合防除科
研究期間:平成11−12年
協力・分担関係:上川農試研究部病虫科

1.目 的
 近年、カメムシ(アカヒゲホソミドリカスミカメ)が起こす斑点米が問題となっているが、同じカメムシの発生量でも斑点米の発生には品種間差が見られ、現在の基幹品種「ほしのゆめ」に対して要防除水準(薬剤防除が必要なカメムシ発生密度の臨界値)の再設定が必要となった。このため、既に要防除水準が設定されている「ゆきひかり」、「きらら397」と対比する形で「ほしのゆめ」の要防除水準の設定を行った。

2.方 法
 平成11、12年、中央農試(岩見沢市)の数圃場において、「ゆきひかり」、「きらら397」および「ほしのゆめ」を慣行法で栽培し、薬剤散布を行わず、出穂後のカメムシの発生推移と収穫期の斑点米率を調査した。また、このような調査データは、平成10年以前および上川農試の成績からも収集した。
 収集したデータを一括して集計し、カメムシの発生密度と斑点米率との関係を、「ほしのゆめ」と「ゆきひかり」、「きらら397」とを対比する形で解析した。幼虫数を成虫数に合計する場合は斑点米産生力を考慮して成虫相当数に換算することとし、斑点米率は精玄米の調査値に統一した。
 収集した「ゆきひかり」19件、「きらら397」29件、「ほしのゆめ」12件のデータを集計したところ、斑点米率との相関関係は、成虫数に幼虫数を算入したほうが高く、また出穂期後30日間のカメムシ数を時期別に分割しないほうがよいことがわかったので、出穂期後30日間合計の成幼虫数を用いて解析した。

3.結果の概要
 X軸に30日間の成幼虫数、Y軸に精玄米の斑点米率をプロットした結果(第1図)、「ゆきひかり」、「きらら397」の回帰直線はY=0.00206X+0.059、「ほしのゆめ」はY=0.00372X+0.173となった。直線は正確には原点を通ってはいないが、その傾きは「ほしのゆめ」のほうが1.81倍大きく、その分「ほしのゆめ」のほうが斑点米が出やすいと考えられた。データを平成11、12年の中央農試に限ってもその傾きは2.01倍となり、また、両変数を対数にとってもほぼ同様の結果となった。
 以上のことから、カメムシの発生密度に対する斑点米の生じやすさは、「ほしのゆめ」が他品種の約2倍であり、「ほしのゆめ」の要防除水準は他品種の1/2とするのが適当であると考えられた。従って、他品種における3回目以降の薬剤散布時(水稲の乳熟期以降)の要防除水準2頭に対しては、「ほしのゆめ」の要防除水準は1頭とするのが適当であると考えられる。


        第1図 カメムシの発生密度と斑点米率との関係

4.成果の活用面と留意点
 (1)本試験の成果は、「ほしのゆめ」栽培時の斑点米カメムシ薬剤防除対策指導の参考とする。
 (2)実際の薬剤防除の要否判断は種々の条件を勘案しなければならないので、本成績の要防除水準は、その判断の基礎となる一資料として位置付ける。

5.残された問題とその対応
 (1)品種間差の発現機作解明による全品種適用可能な条件別要防除水準の設定。
 (2)斑点米が発現し難い水稲新品種(難割籾性品種など)の育成。
 (3)斑点米発生時期の再検討と防除重点時期の設定。