成績概要書        (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:りんごに寄生するハダニ類の薬剤感受性       
(総合的病害虫管理技術実証事業)
予算区分:補助
研究期間:平成10-12年度
担当科:北海道病害虫防除所予察課
協力・分担関係:

1.目的
 ハダニ類は薬剤に対する感受性が低下しやすいことが知られ、それに伴い使用される殺ダニ剤も変遷を続けている。本道に生息するハダニ類について、近年使用されている薬剤に対する感受性の現状を調査し、効率的な防除体系の構築に資する。

2.方法
1)ハダニ系統
 ナミハダニ現地系統は仁木町、増毛町、深川市の農家りんごほ場より雌成虫を採集し、インゲン葉で二世代以上飼育して用いた。感受性系統は農林水産省果樹試験場から譲渡された系統を用いた。リンゴハダニは旭川市、増毛町、仁木町の農家より採集した越冬卵からふ化した世代をりんご葉で成虫まで飼育し試験に用いた。
2)成虫試験
 試験はインゲンまたはりんご葉片を用いたリーフディスク法によった。直径2 cm2の円形の葉片に成体後24時間以内の雌成虫を一葉片当たり12頭接種し、一濃度につき3反復を設けた。接種24時間後に検鏡し、正常に活動している成虫のみを残した。散布は回転式散布機を用い、散布量は4mg/cm2とした。風乾後飼育時の条件(20℃)に戻し、24時間に生虫数と、苦悶虫を含む死虫数を計数した。
3)卵試験
 成虫試験と同様のリーフディスクに雌成虫を7-12頭接種し、24時間産卵させた後成虫を除去し、産下された卵を実態顕微鏡下で計数した。さらに24時間後に成虫試験と同様に薬液を散布し、20℃条件下に戻した。ふ化率は産卵開始後7日目から10日目まで調査した。
 なお、卵試験中の飼育箱の湿度は70%前後に保たれていた。

3.結果の概要
・BPPS水和剤に対しては、ナミハダニでは増毛町の3系統および仁木系統が抵抗性を示し、深川市から得られた2系統も感受性が低下していた(図1)。これらの地域においては、毎年BPPS剤の散布を続けることはさらに強い抵抗性の発達につながる可能性が高い。
フェンピロキシメート水和剤に対しては、ナミハダニでは深川2系統および仁木系統で抵抗性が発達していた(図3)。このうち、テブフェンピラドを連続散布していたほ場から得られた深川2系統は、テブフェンピラドに対しても抵抗性を示した(図4)。

フェンピロキシメートに対する抵抗性とテブフェンピラドに対する抵抗性は交差する可能性が高いため、同一年度内に続けて散布することはさらに抵抗性を発達させる危険性がある。
これらの剤の年度を変えてのローテーション散布は、抵抗性回避の上で有効であると考えられた。
・ヘキシチアゾクス水和剤に対しては、ナミハダニの仁木系統および増毛1、増毛3系統で感受性が低下していた。これらの地域においては、これ以上の感受性の低下を防ぐため、ヘキシチアゾクスおよび同系のクロフェンテジンの毎年の散布は避けるべきと考えられた。(図2)。
・リンゴハダニに関しては、増毛町の系統はフェンピロキシメートおよびBPPSに、旭川市の系統はBPPSに対しやや感受性が低下していたが、その程度は低く、実用上は問題ないと考えられた(表2)。

表1 供試ハダニ系統採集ほ場における殺ダニ剤散布履歴


図1 BPPS水和剤に対するナミハダニ雌成虫の感受性


図2 ヘキシチアゾクス水和剤に対するナミハダニ卵の感受性


図3 フェンピロキシメート水和剤に対するナミハダニ雌成虫の感受性


図4 テブフェンピラド乳剤に対するナミハダニ雌成虫の感受性

表2 リンゴハダニ各系統の各種殺ダニ剤に対する感受性

注:網掛けは実用濃度を示す。

4.成果の活用面と留意点
 果樹ハダニ類の薬剤防除計画を立てる上で参考とする。

5.残された問題とその対応
・他の殺ダニ剤に対する感受性の検定
・抵抗性の発達を回避する果樹ハダニ類薬剤防除の体系化