成績概要書
課題の分類 研究課題名 てんさい褐斑病抵抗性“強”品種を利用した減農薬防除法 予算区分 研究期間 平成11年〜12年 担当科 十勝農試 生産研究部 栽培システム科 十勝農試 生産研究部 病虫科 協力・分担 ホクレン農業組合連合会 |
1.目的
褐斑病抵抗性“強”品種の減農薬化に着目した薬剤散布法について検討する。
2.方法
1)モニタリング手法の適用
(1)試験年次、場所:平成11年、12年、十勝農試(以下農試)、清水町下佐幌(以下 清水)、
女満別町湖南(以下湖南)、女満別町住吉(以下住吉)
(2)品種系統名および抵抗性:「ハミング」(弱)、「H126」、「北海82号」(強)
(3)処理区名:モニタリング手法(発病株率50%より薬剤散布開始、以下M)、無処理
(4)薬剤名(濃度)と散布方法:マンゼブ水和剤(500倍)、ジフェノコナゾ−ル(3000倍)の交互散布を基本とした。
(5)調査方法:てんさい褐斑病発病調査基準(北海道法)に準じ、指数1以下について
は、十勝農試と清水町下佐幌では僅かな病斑が認められた場合を0.2、
女満別町では発生程度により0.25、0.5、0.75に区分し1区あたり20株調査した。
2)散布間隔
(1)年次、場所:平成12年、十勝農試、清水町下佐幌
(2)品種系統名:「H126」、「リ−ランド」(抵抗性“弱”、清水町下佐幌のみ)
(3)薬剤名:マンゼブ水和剤500倍(MA)、カスガマイシン銅水和剤800倍(K)
ジフェノコナゾ−ル乳剤3000倍(P)、テトラコナゾ−ル乳剤1500倍(H)
3)薬剤散布開始時期
(1)年次、場所:平成11年、12年 十勝農試
(2)処理区名:50%(モニタリング手法)、70%(発病株率70%より薬剤散布開始)
慣行(初発より薬剤散布開始)
3.結果の概要
1)発病株率50%に到達する日数は、抵抗性“弱”品種より7日以上遅かった(表1)。
2)発生程度が激しくない場合、9月まで発病株率が50%に達しないことがある(表1)。
3)病気の進展は抵抗性“弱”品種に比べ、緩やかで急激に蔓延しないため、最終発病度は低く、糖量に与える影響は小さい(表1)。
4)激発年おいて、マンゼブ水和剤、カスガマイシン銅水和剤、ジフェノコナゾ−ル乳剤、テトラコナゾ−ル乳剤は「てんさいの主要病害虫に対するモニタリング手法の開発−てんさい褐斑病、ヨトウガ」に示された残効期間の目安を十分に満たしていた。一方、抵抗性“弱”品種では同期間、薬剤散布効果が持続しなかった(図1,2,3)。
5)4)より、抵抗性“強”品種は“弱”品種より散布間隔の延長が可能である。
6)発病株率70%の散布開始日は発病株率50%と大差なく、発病度の推移および糖量は発病株率50%、慣行とほぼ同様であった(表2)。
<褐斑病抵抗性“強”品種の減農薬防除法>
1)薬剤散布開始の目安はモニタリング手法により発病株率50%の到達を目標として行う。
2)激発年でも、各種薬剤の散布間隔は上記成績に示された残効期間を目安として行える。
3)9月上旬まで発病株率が50%を越えない場合は、上記成績に準拠し、薬剤散布を必要としない。
4)以上のことから、薬剤散布回数は、抵抗性“弱”品種のモニタリング手法より1〜2
回、慣行より1〜3回程度減らすことが可能である。
表1 モニタリング手法の適用と発病株率50%日、薬剤散布回数、発病度の推移、糖量
場所・年次 品種系統 ・処理区名 |
発病 株率 50% |
薬剤 散布 回数 |
発病度 | 糖量 kg/10a |
||
8月下旬 | 9月中旬 | 10月上旬 | ||||
農試平成11年 | ||||||
ハミング無 | − | − | 15 | 57.6 | 74.8 | 748 |
M | 8月17日 | 3 | 17.8 | 25.6 | 31 | 843(113) |
H126無 | − | − | 6.4 | 15.6 | 19.4 | 882 |
M | 8月25日 | 2 | 6.4 | 9.8 | 10.8 | 947(107) |
農試平成12年 | ||||||
ハミング無 | − | − | 42 | 96.5 | 100 | 682 |
M | 8月1日 | 3 | 27.1 | 51.5 | 58 | 971(142) |
H126無 | − | − | 25.5 | 53.3 | 76.3 | 943 |
M | 8月8日 | 3 | 13.3 | 30.5 | 35.3 | 1072(114) |
北海82号無 | - | - | 24 | 50 | 75.8 | 828 |
M | 8月8日 | 3 | 10 | 22.7 | 37.3 | 1028(124) |
湖南平成11年 | ||||||
ハミング無 | − | − | 1 | 24.2 | 34.2 | 1282 |
M | 8月27日 | 2 | 0.8 | 2.4 | 2.4 | 1308(102) |
H126無 | − | − | 0 | 1.2 | 2.8 | 1461 |
M | 9月19日 | 1 | 0 | 1 | 1.4 | 1383(95) |
湖南平成12年 | ||||||
ハミング無 | − | − | 4.4 | 33.5 | 70 | 790 |
M | 8月22日 | 2 | 3.5 | 4.9 | 9.3 | 922(117) |
H126無 | − | − | 0.4 | 5.7 | 11 | 965 |
M | 9月4日 | 1 | 0.3 | 2.8 | 4 | 1017(105) |
住吉平成12年 | ||||||
ハミング無 | − | − | 38.9 | 69.9 | 90.3 | 630 |
M | 8月3日 | 3 | 4.9 | 12.5 | 16.7 | 936(149) |
H126無 | − | − | 5.7 | 12.7 | 19.2 | 937 |
M | 8月18日 | 2 | 2.9 | 5.3 | 6.1 | 1029(110) |
清水平成11年 | ||||||
H126無 | − | − | - | - | 28 | 964 |
M | 8月23日 | 2 | - | - | 22.4 | 952(99) |
清水平成12年 | ||||||
H126無 | − | − | - | - | 52.3 | 693 |
M | 8月10日 | 3 | - | - | 26.7 | 750(108) |
表2 抵抗性“強”系統における散布開始日、最終発病度、糖量
試験年次 ・処理区名 |
散布 開始日 |
最終 発病度 |
糖量 kg/10a |
平成11年無 | − | 19 | 1061 |
50%(M) | 8月25日 | 8 | 1074(101) |
70% | 8月30日 | 5 | 1024(97) |
慣行 | 8月11日 | 8 | 1036(98) |
平成12年無 | − | 76.3 | 891 |
50%(M)、70% | 8月10日 | 35.3 | 1067(120) |
慣行 | 8月1日 | 34.5 | 1095(123) |
4.成果の活用面と留意点
てんさい褐斑病抵抗性“強”品種の薬剤散布法に適用する
5.残された問題とその対応
激発年における抵抗性“弱”品種のモニタリング手法(薬剤散布開始時期)および残効期間の検討