成績概要書                    (作成平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:コスモス白斑病の発生と有効薬剤の探索
         (突発および新発生病害虫の防除対策)
予算区分:道 費
担 当:花・野菜技術センター 研究部 病虫科
研究期間:平成9〜12年度
協力・分担関係:空知北部農業改良普及センター

1.目 的
 コスモスの葉に発生する白斑症状の被害実態、病原菌および発生生態を解明し、本病の防除に有効な薬剤の探索を行う。

2.方 法
1)病原菌の観察および同定
 (1)病原菌の形成器官とその形態観察
 (2)接種試験:平成10年に罹病株から分生子を集め接種。その後の発病推移を24日間調査。
 (3)コスモス種および品種と発病
   平成11年にコスモス3種の計6品種での発病を自然発生条件下で調査。
   平成9年にコスモス品種19品種における品種間差異を調査。調査基準は表1に従う。

2)発生推移
 平成10年に白斑病の発生時期と被害の推移を把握するため、7月中旬〜8月下旬までの計9回に渡って発生推移を調査。また、同圃場に設置したコスモス苗における発病推移を調査。

3)有効薬剤の探索
 (1)平成9年:供試薬剤は3薬剤、8/19,26,9/2の3回散布、9月9日に発病を調査。
 (2)平成10年:供試薬剤およびカルシウム剤は11剤、7/28,8/7,17の3回散布、8月27日に調査。
 (3)平成11年:供試薬剤は1薬剤、7/28,8/4,10の3回散布、8月16日に発病を調査。
 (4)平成12年:供試薬剤は4薬剤、7/28,8/8,17の3回散布、8月28日に発病を調査。

3.結果の概要
 1).コスモスは切り花栽培、鉢苗栽培および景観作物として広く栽培されているが、いずれの場面でも発生する事例が認められ、北海道では常発病害となっている。花野菜センターで4ヶ年栽培した結果、いずれも自然発生が見られた。
 2).症状は葉がはじめ淡黄色の小斑点で病斑が拡大すると病斑表面が白色となるのが特徴である。葉のみに発生する。白色を呈する病斑上にはソーセージ形の分生子が観察される。まれに、針状の分生子も観察される。古い病斑の組織内に球形の胞子が集まった胞子堆が観察される。胞子の特徴は胞子の外部がゼラチン質の被膜に覆われることである。
 3).病原菌の特徴から白斑病菌をエンチローマ(Entyloma)菌の一種と同定した。
 4).本病菌を13植物に接種した結果、発病はコスモスに限られ、また、コスモス種の中では園芸種として広く栽培されているCosmos bipinnatusに限られた(表2)。同種内の品種で感受性に差は認められなかった。
 5).本病の発生推移を調査したところ、初発後から発病株率、発病葉率は急激に増加し、蔓延は早かった(図1)。感染から病斑形成までの期間は9日程度と考えられた(図2)。
 6).本病の防除薬剤としてジフェノコナゾール乳剤、シプロコナゾール液剤およびイミベンコナゾール乳剤が有効であると考えられた(表3)。初期防除を逸すると防除効果は低かった。

表1 コスモス白斑病の調査基準
指数 葉当たりの発病状況
病斑を認めない
わずかに黄白色の斑点認められる
斑点が葉全体に目立つ
葉全体が白斑症状、あるいは褐色
の枯死部現れる
葉の1/2以上が枯死
注)発病度の計算は
Σ(指数×当該葉数)

  4×発病葉数   ×100

表2 コスモス種における発病の差異(平成11年)
種 名 品種名 発病葉率% 発病度
コスモス ベルサイユスペシャル
センセーションピンキー
45.2
18.6
15.0
4.7
黄花コスモス オレンジフレア
ディアポロ
サンライズ
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
チョコレートコスモス   0.0 0.0


図1 コスモス白斑病の発病株率、発病葉率および発病度の推移(平成10年)


図2 圃場に設置したコスモス苗における白斑病の発生推移(平成10年)

  表3 コスモス白斑病に対する薬剤およびカルシウム剤の防除効果試験(平成10年)


供試薬剤
希釈倍数
(倍)
発病葉
率%

発病度

枯死葉率%
有効葉数
(草丈)*

薬害
フルアジナム水和剤 1000 78.5 34.3 28.1 8.5(42.5)
カスガマイシン・銅水和剤 1000 83.0 47.4 30.6 5.2(26.0)
プロピコナゾール乳剤 3000 81.0 34.7 24.0 6.4(32.0)
イミベンコナゾール乳剤 1000 35.4 11.4 22.9 18.9(94.5)
シプロコナゾール液剤 3000 38.3 11.0 22.4 16.5(82.5)
ジフェノコナゾール乳剤 3000 36.8 9.4 19.1 20.8(104)
マンゼブ水和剤 500 78.3 39.4 34.7 5.8(29.0)
クレソキシムメチル水和剤F 2000 76.4 36.2 24.6 10.0(50.0)
カルシウム葉面散布剤(セルバイン) 400 79.8 51.5 37.1 4.9(24.5)
カルシウム葉面散布剤(アクアカル) 400 80.9 52.4 43.7 4.7(23.5)
カルシウム葉面散布剤(クレフノン) 200 84.0 53.5 40.9 4.3(21.5)
無散布 87.9 54.9 43.8 4.0(20.0)  
 *上葉から指数0および1が連続する葉の枚数(1節に葉は2枚、節間長を10cmとした草丈cm)
 なお、コスモスの出荷規格は2L:80cm、L:70cm、M:60cmである。

4.成果の活用面と留意点
 1).本成果はコスモスに発生する白斑病の診断および防除対策に活用する。
 2).供試した薬剤はいずれも未登録である。

5.残された問題とその対応
 1)病原菌の純粋培養
 2)病原菌の種名の提案
 3)伝染経路の解明
 4)有効薬剤の農薬登録