成績概要書 (作成 平成13年1月)
課題の分類 研究課題名:蒸気土壌消毒処理によるハウス栽培スイカ半身萎凋病の軽減効果 (ハウス栽培における土壌環境改善によるスイカ半身萎凋病の軽減対策試験) 予算区分:道 費 研究期間 : 平成9〜12年度 担当科:原環センター 農業研究科 協力・分担関係:中央農試 クリーン農業部 病虫科 |
1.目 的
土壌環境改善によるスイカ半身萎凋病の軽減対策技術の確立を目的に、蒸気土壌消毒処理による同病の軽減効果について検討する。さらに、育苗床土に対する蒸気土壌消毒の利用方法を策定する。
2.方 法
1)供試蒸気土壌消毒機:丸文製作所製SB200型、0.9㎡(86cm×105cm)のスチームスパイク使用。
2)処理時間の検討:V. dahliaeの含菌懸だく液2mLの入った試験管を地中深5,10,15,20,25cmに埋没
させ、蒸気土壌消毒を行い、経時的に試験管を取り出し、PDA培地を用いて死滅状況を調査した。また、蒸気土壌消毒に伴う地温の推移と土層別に土壌糸状菌数(ロースベンガル培地)の変化を調査した。
3)軽減効果の検討:1997年にセンター内のハウス1棟にV. dahliaeの病圃を造成後、①無処理区、②蒸気土壌消毒区(1997年秋に12分処理)、③同区(1998年秋に12分処理)、④太陽熱消毒区の計4処理区(各20㎡)を設置した。1998〜2000年の3カ年に渡りすいかを無加温半促成栽培し、スイカ半身萎凋病の軽減効果とすいかの生育・収量性を経時的に検討した。
4)局所処理効果の検討:1998年に共和町内の現地スイカ半身萎凋病発生圃場3筆において、1筆当たり発病株が偏在していた2箇所を選定し、①蒸気土壌消毒区(処理時間12分)、②無処理区の計2処理区を設置した。1999〜2000年の2カ年にわたりすいかを無加温半促成栽培し、同病の軽減効果とすいかの生育・収量性を経時的に検討した。
5)蒸気処理に伴う土壌化学性の変化:土性の異なる計6土壌を供試し、風乾、砕土後250μmの篩に入れ、それをセイロウ(蒸し器)で10分間蒸した。処理後の土壌化学性の変化を調査した。
6)育苗床土に対する利用方法の検討:ポリフィルム上に床土を高さ25cm程度に土盛りし、15分間蒸気土壌消毒を行い、床土温度の推移を調査した。また、ポリフィルム被覆の有無について比較した。
3.結果の概要・要約
1)作土層内(0〜25cm)のスイカ半身萎凋病菌(V. dahliae)を含む糸状菌の死滅に要する蒸気土壌消毒処理時間は90℃以上になってから9分であった(表-1、2)。なお、本試験の結果では処理開始後12分に相当した。
2)蒸気土壌消毒の全面処理によるスイカ半身萎凋病の軽減効果は極めて高く、処理後3作目まで持続効果があった(表-3)。
3)蒸気土壌消毒処理によりすいかの収量性は向上した。また、果実糖度は優る傾向にあった。
4)蒸気土壌消毒処理によるスイカ半身萎凋病の軽減効果は現地局所処理圃場においても認めら
れ、局所処理の持続性は処理後2作目まで確認された。
5)蒸気土壌消毒処理に伴う土壌化学性の変化は、有機態窒素の無機化によるアンモニア態窒素の増加と交換性マンガンの増加であった(図-1)。これらは蒸気処理に伴い一時的に形態変化を起こして急増するが、時間の経過ととも減少する傾向にあった。
6)育苗床土に対する蒸気土壌消毒の利用方法を地温の推移から次のように作成した。
<スパイク法(スパイク長19cm)を用いて育苗床土を蒸気土壌消毒する場合> |
①ポリフィルム上に床土を高さ25cm以内に土盛りし、その上にポリフィルムを被覆し、裾から蒸気 |
が漏れないように周りに重しをする。 |
②1回の消毒時間は15分程度とし、次々にスチームスパイクを移動して隙間なく消毒する。 |
なお、床土の温度が低い場合には消毒時間を延長する。 |
③消毒後、土壌が過湿になった場合は地温低下後、速やかに被覆したポリフィルムを除去する。 |
7)蒸気土壌消毒機を1日当たり8時間稼働させた場合の処理面積は消毒時間12分/回で31.5㎡、灯油(税込単価50円)を用いた燃料代は6,400円と試算された(表-4)。また、育苗床土1m3当たりに対する蒸気土壌消毒の所要時間は消毒時間15分/回で1.3〜1.8時間、燃料代は1,051〜1,400円と試算された。
4.成果の活用面と留意点
1)蒸気土壌消毒法は他の土壌消毒法に比べて、実施時期が限定されない、消毒後直ぐに作付けできるなどの利点がある。また、蒸気土壌消毒は小規模からの消毒が可能であることから、少発生圃場で積極的に利用されることが期待される。
2)蒸気土壌消毒に当たっては作土層(0〜25cm)をよく耕起し、土層全体に蒸気が均一に行き渡るようにする。
3)蒸気土壌消毒の局所処理に当たっては、消毒箇所を特定するために、すいか栽培中に本病の発生程度や発生箇所の把握につとめる。
4)マンガン過剰症の発生が危惧される圃場では土壌診断を実施し、その結果に基づいて蒸気土壌消毒を行うとともに、透水性の改善や土壌pHの矯正を行う。
5)蒸気土壌消毒直後にすいかを作付けする場合には、土壌診断に基づき適正な窒素施肥管理を行う。また、蒸気土壌消毒後には土壌有機物が減耗しやすいので、完熟堆肥などの有機物を施用して地力の維持につとめる。
5.残された問題とその対応
1)蒸気土壌消毒処理の効率化に関する検討。
2)スパイク法以外のアタッチメントを使用した蒸気土壌消毒法の検討。
3)その他の土壌病害に対する蒸気土壌消毒の軽減効果の検討。