成績概要書(作成 平成13年1月)
研究課題名:北海道における広域米産地形成の課題と今後の展開方向       
        (広域米産地の販売戦略と運営方式の確立)
予算区分 :道費
研究期間 :平成10〜12年度
担当科:中央農業試験場 生産システム部 経営科
協力・分担関係:なし

1.目的
 本研究では、北海道において形成途上にある広域的な米産地組織の実態から、現状における課題を明らかにするとともに、今後の展開方向を示すことにより、北海道産米の販路確保と生産振興に寄与する。

2.方法
1)内容
 ①調査対象組織への聞き取り調査、資料収集・分析、②統計資料収集・整理
2)調査対象
 空知および留萌支庁管内にある広域的な米産地組織および関係機関

3.結果の概要・要約
1)5事例の調査から、広域米産地組織は組織形成時期により3分類された。組織形成時期の違いは、広域ブロックの産地評価を色濃く反映しているとともに、将来の組織統合への取り組みにも違いが生じている。しかしながら、広域米産地組織の多くは組織機能の整備段階にあり、組織形成の途上にある。

2)分類に基づき各タイプは次のように特徴づけられる(表1)。第一に、早期に組織化が行われた地区は食味評価や産地指定率が高く、家庭内食用販売が行われている。一方、組織化が遅れた地区ほど食味評価・産地指定率が低く、業務用中心の販売形態となる。第二に、広域農協合併の進展度合いより組織体制に格差が生じており、連合会組織以外は専任体制がないことや、乾燥調製施設の利用においても連合会組織は広域施設を整備したものの、他組織は分散型の施設利用である、など活動内容に違いがある(表2)。第三に、既存組織や広域化先行組織が設定した技術目標値に類似する目標設定が行われているため組織間の特徴がない。第四に、一支庁一組織の留萌支庁では、系統組織は販売対応、米産地組織は生産対応を明確に役割分担しており、空知における一支庁複数組織の事例とでは広域米産地組織の機能に違いがある。第五に、米産地広域化は系統販売を核とした生産・集出荷・販売体制の再構築と位置づけられる。

3)広域化の効果を計数的に測定できうる事項は少ないが、栽培技術の改善と米品質向上対策(篩目・仕分け強化)による品質向上による産地評価の向上、それとともに生産者意識の向上、広域ブロックとして新たな産地指定の獲得、に貢献したことがあげられる(表3)。

4)各広域米産地組織は次のような課題を抱える(表3)。組織化が早く品質評価が高い地区は売るための米品質の調整対策が必要であるのに対し、組織化が遅く評価の低い地区は売るための品質確保が必要となっている。また、両地区ともに品質格差に基づく販売対応が重要になっている。

5)専任体制の有無は組織活動の範囲とともに、広域米産地組織としての販売戦略の有無にも影響を与えている。さらに、農協合併範囲と広域ブロックの範囲はほぼ同一であるが、農協合併推進方向が必ずしも一致しないことが、広域ブロック内の調整を難しくしている。

6)広域米産地組織は農協組織の将来展望を考慮した組織整備が重要であるとともに、組織化の進展段階に応じた機能を保持することが求められる(図)。今後における広域米産地形成にむけた展開方向として、品質改善の継続、産地規模や品質格差を前提とした販売対応、乾燥調製施設の有効利用、広域ブロック内の協力関係強化に基づく地域戦略の構築、構成農協を含めた組織の将来方向の確認、専任体制への移行、など産地機能を明確にして行くことが必要である(表4)。

4.成果の活用と留意点
1)組織化の推進にあたっては、自治体・生産者を含めた地域戦略を構築することが重要であるとともに、地域の特質を考慮した組織化および生産・販売対応が必要である。

5.残された課題
1)米乾燥調製施設の有効利用および販売戦略については更に検討が必要である。
2)広域米産地形成による生産者への経営経済的影響については今後検討する必要がある。