成績概要書       (作成 平成13年1月)

課題の分類:
研究課題名:内部品質からみた高水分春まき小麦の収穫・乾燥条件       
        (H12 高水分春播小麦品質評価試験)
        (H11 高水分小麦品質評価試験)
予算区分:受託
研究期間:平成11〜12年度
担当:中央農試 生産システム部 機械科
協力・分担関係:ホクレン農総研食品検査分析課

1.目的
 穂発芽による低アミロ小麦発生軽減のため、高水分で収穫した春まき小麦の乾燥温度と乾燥後の組成や粒色などの外観品質および製粉試験、小麦粉理化学試験による内部品質の検討を行い、内部品質からみた収穫水分の上限を明らかにする。

2.方法
1)試験期日および場所  平成10年 美瑛町、平成11〜12年 ホクレン恵庭研究農場
2)収穫・乾燥方法:コンバイン収穫、循環式乾燥機および実験用静置式乾燥機
3)収穫時水分と乾燥温度:21.1〜26.7%(通常)、34.2〜42.7%(高水分);熱風温度40〜70℃
4)品質試験:原粒評価(農産物検査も含む)、製粉試験、小麦粉理化学試験、製パン試験

3.結果の概要
1)春まき小麦の単粒子実の水分分布特性は平均子実水分30%前後を境にして変化し、単粒水分の最頻度値は平均子実水分30%未満では平均子実水分より低いが、30%を超えると平均子実水分より高く、40%に近かった(図1)。
2)コンバインで高水分時に収穫し、循環式乾燥機で乾燥した春まき小麦の粒の色つきは、通常水分で収穫・乾燥した粒よりも不足し(図2)、農産物検査では熱風温度50℃以上の乾燥で特に光沢不足と判断されることが多かった。
3)製粉性は高水分で収穫した小麦ほど劣る傾向にあるが、子実水分35%以下であれば通常収穫とほぼ同じであった(図3)。
4)高水分で収穫した小麦の生地物性は通常収穫と比べて低下する傾向が認められるが、子実水分35%以下であれば通常収穫に近い品質であった(図4)。また、高水分で収穫した小麦は熱風温度50℃以上の乾燥により、小麦粉中の蛋白質の熱変性による生地の劣化が認められた(図5)。
5)高水分時の収穫により粒の色つきは不足するが、子実水分35%以下であれば製粉性、生地の物性など内部品質は通常収穫に近い。内部品質を考慮すると子実水分35%を上限に収穫し、熱風温度45℃以下で乾燥することが望ましい。
6)3年間の立毛子実水分経過では、収穫上限水分を慣行指導の30%から35%にすることにより、0.6〜2.6日早く収穫することが可能であり、降雨による穂発芽発生を軽減できる(図6)。


図1 春まき小麦の乾燥前原料の単粒水分分布


図2 収穫時水分と粒色(H12 「春よ恋」、循環式乾燥機)


図3 収穫時水分と製粉性(常温乾燥)
    注)各年の通常刈区の値を1に標準化


図4 収穫時水分と生地物性(常温乾燥)
    注)各年の通常刈区の値を1に標準化


図5収穫時水分および乾燥温度と生地物性
   (ハルユタカ)


図6成熟期前後の子実水分、アミログラム最高粘度の推移
   (ハルユタカ)

4.成果の活用面と留意点
1)春まき小麦を高水分でコンバイン収穫する場合、収穫損失が増加することがあるため、作業速度や刈り高さに留意する。
2)循環式乾燥機で高水分春まき小麦を乾燥する場合、乾燥ムラを避けるため二段乾燥を実施する。
3)高水分で収穫した春まき小麦の発芽率は低下する場合があるため、種子用には適用しない。
4)高水分で収穫した春まき小麦の拝見による格付けを見直す際の資料となる。

5.残された問題とその対応
1)圃場全体の子実水分測定手法と収穫適期判定。
2)均一な登熟のための栽培技術。