成績概要書 (作成 平成13年1月)
研究課題名:コンテナハンドリング装置を利用したキャベツ機械収穫体系 予算区分:総合研究(地域総合) 研究期間:平9〜12年度 担当研究室:北農試 総研部・総研2チーム 担当者:八谷 満、山縣真人、小島 誠、豊田政一 |
1.目 的
野菜産地における生産農家の高齢化、労働力不足等による野菜の供給力低下が懸念される中、大規模なキャベツ生産の機械化一貫体系の確立が急がれている。そこで一斉収穫機利用による軽労化と効率化をねらいとして、コンテナハンドリング技術を用いた機械収穫体系を開発する。
2.方 法
1)7人の被験者を対象に、機械収穫作業時の作業負担について慣行手取り作業時を対照区として比較検討した。特に作業負担については、得られた心拍数をもとに、年齢差の修正のために考えられた指標である心拍水準(%HRmax=平均心拍数/220−年齢)を算出した。また、この心拍水準値を用いて次式により適正な作業時間の目安を考察した。
疲労が出るまでの時間=antilog10(log5700−0.019×%HRmax+0.567)
2)機械収穫の作業体系化に向けて、コンテナを荷役するハンドリング装置を開発した。装置はトラクタ牽引用平床トレーラに架装し、収穫機に伴走して順次コンテナを荷降し・積込むこと(積載個数:4個以上)を想定した(以下、開発機)。ただし、装置の評価試験では、履帯式農用運搬車の荷台に架装し、その後方にコンテナ2基分のスペースを確保して行った。
3)開発機の伴走による収穫作業体系の作業能率を試算・検証した。試算に当たっては、装置の荷役時間及び既存の運搬車両(フロントローダ等)を用いた伴走収穫作業時の実測各作業時間を用いた。
3.結果の概要
1)慣行手取りの平均心拍数は114〜126拍/分であったが、機械収穫では98〜116拍/分であった(表1、図1)。過去に提示された作業限界を示す幾つかの基準を心拍水準値に換算すると約65%HRmaxとなる。慣行手取りでは平均70.3(69〜76)%HRmaxとかなりの作業強度であるのに対して、機械収穫では61.2%HRmaxとより持続的な作業が可能であることが明らかとなった。さらに、機械収穫作業者の平均心拍水準値から推測される一連続作業時間は約100分となった。
2)ハンドリング装置は、油圧シリンダ駆動による旋回、起伏および2つの直動関節からなる、4自由度の極座標型アーム機構を採用した(表1、図2)。装置は地上揚程3,360mm、作業半径2,400mmと動作領域が広い。アーム先端支持部は吊り上げる機構のため、作業面が傾斜していても被搬送物の取扱いが容易である。アーム張出し時の車両転倒防止用に油圧式アウトリガを装備した。装置の基本動作は有線式リモコンで遠隔操作できる。さらに、リミットスイッチと油圧電磁弁及びリレーによる簡易なシーケンス制御により、コンテナを自動的に荷台上に移動して積込むようにした(図3)。コンテナ1個当たりの積込み時間は50〜60秒であった。
3)開発機伴走作業体系では、フロントローダ等既存の運搬車両の伴走体系に比較して作業能率面(圃場作業量2.7h/10a、収穫作業効率77.4%)では同等であるが、コンテナ運搬サイクルを単純化させたことによって、運搬に要する総走行距離は約半分に短縮できることが明らかとなった。また、収穫機と同等の走行速度となるため、トレーラ上の振動を軽減し、コンテナ内の収穫物に対する損傷等をより低減できると考えられた。さらに、収穫の圃場作業量との比例配分によれば、作業者の疲労の発生から推測される適正な一連続作業面積は約6aであった。
表1 慣行手取り収穫と機械収穫作業時の心拍数
被験者 |
年齢 |
推定最高 |
慣行手取り収穫 |
機械収穫(補助作業者) |
||||||
心拍数 (拍/分) |
心拍水準 (%) |
心拍比 (%) |
心拍数 (拍/分) |
心拍水準 (%) |
心拍比 (%) |
|||||
A |
54 |
166 |
125.6 |
75.7 |
0.60 |
111.2 |
67.0 |
0.50 |
||
B |
44 |
176 |
120.7 |
68.6 |
0.50 |
97.8 |
55.6 |
0.30 |
||
C |
48 |
172 |
121.6 |
70.7 |
0.51 |
104.3 |
60.6 |
0.36 |
||
D |
45 |
175 |
121.3 |
69.3 |
0.48 |
114.2 |
65.3 |
0.42 |
||
E |
50 |
170 |
120.5 |
70.9 |
0.54 |
109.9 |
64.6 |
0.42 |
||
F |
51 |
169 |
119.8 |
70.9 |
0.52 |
107.6 |
63.7 |
0.41 |
||
G |
47 |
173 |
114.2 |
66.0 |
0.46 |
99.4 |
57.5 |
0.33 |
||
Mean±Std. |
171.6±3.5 |
120.5±3.4 |
70.3±2.9 |
0.52±0.0 |
105.5±6.3 |
61.2±4.0 |
0.37±0.1 |
図1 収穫作業時の心拍数の推移
表2 ハンドリング装置の主要諸元
項 目 |
仕 様 |
|
動作自由度 |
4軸(旋回1+起伏1+直動2) |
|
可搬重量 |
4000N(400kgf) |
|
動作速度 ()は動作範囲 |
旋回:6.7°/s |
(〜320°) |
起伏:74mm/s※ |
(〜2100mm)※※ |
|
ブーム:50mm/s |
(〜2230mm) |
|
昇降:59mm/s |
(〜300mm) |
|
油圧源装置 |
吐出圧:14Mpa、吐出量:1700cc/分 |
|
架装車両 |
履帯式農用運搬車(定格9.8PS) |
図2 ハンドリング装置の概要
図3 ハンドリング装置による積込み作業
表3 各体系による圃場作業量の試算結果
作業体系 |
収 穫 |
収穫運搬 |
投下労働量 |
運搬距離 |
|
圃場作業量 |
作業効率 |
圃場作業量 |
|||
開発機・伴走体系 |
3.7 |
77.4 |
2.7 |
8.2 |
1.7 |
開発機・分離体系※ |
|
|
|
|
3.3 |
フロントローダ伴走体系 |
3.7 |
77.4 |
2.7 |
8.2 |
3.3 |
4.成果の活用面と留意点
1)本成績は、キャベツの機械収穫作業の体系化を検討する際の資料として活用する。
2)供試したキャベツ収穫機は、現行の一斉収穫機である。
3)下り走行でトラクタが牽引トレーラに押されて起こるジャックナイフ現象には注意を要する。
5.残された問題とその対応
1)提案した作業体系の現地への適応性の検討。
2)荷降し作業の自動化の検討。