成績概要書                   (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:ばれいしょのでん粉価に基づく調理・加工適性
      (食用バレイショの品質指標値の設定と品質事例調査)
予算区分:道 費
担当科:中央農試農産工学部農産品質科
研究期間:平成11〜12年度
協力・分担関係:

1.目 的
 品質(でん粉価)をより重視したばれいしょ流通の一助になることを目的に、個々のいものでん粉価の違いが調理・加工過程および食味構成要素に及ぼす影響を検討し、でん粉価に基づく調理・加工適性を評価を行った。

2.方 法
1)個々のいものでん粉価の変動
 ・品種(「男爵薯」、「メークイン」、「キタアカリ」)、株および栽培地毎にでん粉価を測定
 ・窒素施肥処理(標準、3割減肥)試料のでん粉価を測定
2)でん粉価別の調理・加工適性
 供試品種:「男爵薯」
 試験時期:収穫年の11〜12月に調理・加工および官能評価を実施した
 でん粉価:11.0%以上12.0%未満「11」、12.0%以上13.0%未満「12」...以下同様に区分した
 調理法:粉ふきいも、ふかしいも、電子レンジ加熱、肉じゃが、カレー、フライドポテト、ポテトサラダ
 官能評価:硬さ、ほくほく感、粉ふき、煮くずれ、ねばり、総合評価について7段階絶対評価
 調理者:天使大学栄養学科教官および病院栄養士業務に従事経験者
 パネル:天使女子短期大学食物栄養学科および天使大学栄養学科学生30〜40名

3.結果の概要
 1)個々のいものでん粉価は、品種、株、栽培地間で大きく異なった。また、重量規格の小さいものほどでん粉価の変動係数は大きくなった。窒素施肥量を少なくすると、個々のいものでん粉価分布は高い方へシフトした。
 2)「粉ふきいも」、「ふかしいも」などの食味評価時に重視された項目は、「硬さ」および「ほくほく感」といった食感に関するもので、嗜好性としては軟らかく、ほくほく感に富むものの評価が高かった。
 3)調理・加工適性について検討した結果、調理法の違いによって、適正なでん粉価はそれぞれ異なった。すなわち、加熱を主する「粉ふきいも」(図2)、「ふかしいも」、および油で揚げる「フライドポテト」の調理法では、でん粉価が高いものほどほくほく感も増すため、食味の総合評価は高くなった。一方、「肉じゃが」(図3)および「カレー」といった煮込む調理法では、でん粉価の低いいもが、煮くずれが少なく、適度な硬さを維持できることから食味の総合評価が高かった。「ポテトサラダ」の食味評価は、でん粉価による評価の違いは認められなかった。
 4)低でん粉価いもの特性を生かした調理法として、せん切りにして水さらし後、「オーブン焼き」、「炒め」あるいは「電子レンジ加熱」する方法が有効であった。
 5)本試験で実施したばれいしょでん粉価別の調理・加工適性試験を総括し、でん粉価に基 づく調理・加工適性評価(表1)および食味評価(表2)の一覧表を作成した。

4.成果の活用面と留意事項
 1)ばれいしょの調理・加工適性を考慮したでん粉価仕分け出荷の参考となる。
 2)でん粉価情報を付与したばれいしょ流通上の参考となる。
 3)でん粉価に基づく調理・加工適性評価および食味評価は「男爵薯」を対象とする。

5.残された問題とその対応
 1)「男爵薯」以外の食用・加工原料用品種についての検討
 2)ばれいしょのでん粉価仕分け流通システムの構築