成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:固定タイン型株間除草機の特性と調整技術
担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科
協力分担:なし
予算区分:道費(クリーン農業)
研究期間:1997年〜2001
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1.目的
株間除草機で引き抜かれた雑草の枯死率を明らかにするとともに、現地農家で
利用例が多い「固定タイン型」株間除草機の除草効果を高めるための簡易な
調整手法を提示し、出芽前除草作業や新規就農者の株間除草機利用に対する
支援技術を検討する。
2.方法
(1)引き抜き作用による除草効果
1)供試雑草:シロザ、タデ、ハコベ、ヒエ
2)処理区別:表面放置区、根部覆土区、全体覆土区
3)調査項目:草高、枯死率、降水量・気温
(2)模擬雑草を用いた作用効果の判定法
1)模擬雑草の種類 番号を記載した模擬雑草A、一定寸法に切断した模擬雑草B(直径2mm)
2)模擬雑草の配列方法 配列用T字ジグ(図1)により畦間、株間方向に一定間隔に配列。
(3)固定タイン型株間除草機構の特性
1)供試タイプ:S字タイン型、複合タイン型、M式くの字タイン型
2)供試作物:大豆;S字・複合・M式くの字タイン型、移植てんさい・小豆;S字タイン型
3)調査項目:土壌水分、土塊径分布、畦形状、雑草草高、模擬雑草処理率、作物損傷程度
圃場雑草処理率(処理率[%]=処理雑草本数/区間雑草本数×100)
(4)畦間の車輪誘導溝と作業精度
1)供試播種機:深耕爪装着型総合施肥播種機(HKW-4A2、19mmのナイフ爪)
5畦用カルチベータ(走行軌跡確認用のマーカー装着)
2)調査項目:走行軌跡(15m間で20cm毎)、土壌水分;株中心付近の深さ0〜5cm深
3.結果の概要
1)引き抜き雑草の枯死率から、1回処理の条件で80%以上の雑草を枯死させるためには、
雑草の草高が15mm以下、かつ処理当日と翌日が無降雨の条件下で処理する必要があった(表1)。
2)除草タインの作用程度は土壌硬度や土壌水分で一様でないため、地中深さ10、30mmの
模擬雑草をT字ジグを用いて株の左右と株間方向に配置して、除草タインの作用領域と
作用指数を把握することで、出芽前であっても除草機を的確に調節することが可能であった。
3)先端をS字に加工した「S字タイン型」、2種類のタインを複合的に組み合わせた「複合タイン型」、
くの字に加工したタインを2本1組にまとめた「くの字タイン型」の3タイプ(図2)について試験を
実施した結果、処理前後4mm以下の土塊径割合は変わらず、除草タインによる砕土効果は
何れのタイプとも認められなかった。
4)「S字タイン型」と「複合タイン型」では、表面土壌の撹拌作用が、M式くの字タイン型は、
覆土による除草が主たる作用であると考えられた。
5)圃場における各機構の雑草処理率は、模擬雑草の処理率が90%以上、雑草草高が15mm以下
の条件では、ほぼ90%以上となった(表2)。なお、問題となるような作物の損傷はなかった。
6)固定タイン型の株間除草機構の特性と引き抜きの効果から判断して90%以上の雑草処理率を
確保するためには、雑草草高が15mm以下、かつ土壌表面の撹拌と積極的な株中心部への
覆土が確実に行われたことを示す模擬雑草処理率が90%以上に達している必要がある。
7)機械除草作業の精度を高めるため、総合施肥播種機に深耕爪を取り付けて車輪誘導溝を
形成した。機械除草作業時の車輪軌跡と畦間中央からのずれを計測した結果、車輪誘導溝を
付けない区のずれは最大4.5cm、3cm以上ずれた箇所は16.7%であったが、車輪誘導溝を
付けた場合のずれは、最大3.0cm、3cm以上のずれは0.7%となり、車輪誘導溝の効果が
確認された(図3)。車輪誘導溝両側畦の発芽・苗立ち状況に影響はなかった。

図1 模擬雑草配列用のT字ジグ

(1) S字タイン型

(2) 複合タイン型

(3)くの字タイン型
図2 固定タイン型株間除草機構 概略図
表1 引抜き雑草の枯死率(処理当日・翌日降雨無し)
区 |
表面放置 |
根部覆土 |
全体覆土 |
草高(mm) |
枯死率(%) |
草高(mm) |
枯死率(%) |
草高(mm) |
枯死率(%) |
シロザ大 |
73 |
100 |
73 |
62 |
75 |
77 |
シロザ小 |
24 |
100 |
25 |
71 |
24 |
73 |
シロザ極小 |
15 |
100 |
14 |
94 |
15 |
84 |
ハコベ |
15 |
100 |
14 |
98 |
15 |
82 |
タデ大 |
64 |
100 |
65 |
100 |
65 |
100 |
タデ小 |
19 |
100 |
18 |
100 |
17 |
100 |
ヒエ大 |
45 |
100 |
51 |
100 |
52 |
100 |
ヒエ小 |
20 |
100 |
20 |
100 |
19 |
100 |

図3 播種機走行軌跡からのずれ
表2 固定タイン型の除草効果(2区平均)
区 |
処理 |
雑草草高 (mm) |
作業速度 (m/s) |
模擬雑草 処理率(%) |
雑草処理 率(%) |
備考 |
S字タイン |
上方配置 |
9 |
1.34 |
95 |
96 |
(1997) |
側方配置 |
6 |
1.19 |
100 |
96 |
上方配置 |
7 |
0.91 |
100 |
98 |
(1998) |
側方配置 |
7 |
0.95 |
100 |
93 |
2回処理1回目 |
2 |
0.94 |
100 |
99 |
|
2回処理2回目 |
5 |
0.96 |
100 |
98 |
複合タイン |
カッタ有 |
11 |
1.30 |
100 |
99 |
|
カッタ無 |
11 |
1.08 |
100 |
93 |
M式くの字 |
補助タイン有 |
15 |
0.81 |
100 |
93 |
|
補助タイン無 |
15 |
0.80 |
100 |
98 |
注1)S字タイン上方配置(1997)の模擬雑草処理率;1区90%、2区100%
注2)模擬雑草は畦中心から左右10cmの区間に1cm間隔で計20本を設置した
4.成果の活用面と留意点
(1)本成績は新規就農者などの機械除草技術の未習得者への参考資料に活用できる。
(2)タインの調整時には、作物の葉部と根部の損傷を確認する。
(3)模擬雑草を利用することでタインの作用位置の確認が容易となる。
(4)処理後2日間の降雨で除草効果が大きく低下するので、気象予報に注意する。
(5)火山性土壌における成績である。
5.残された問題点とその対応
(1)模擬雑草を用いる調整法の、他の除草機構への適応