成績概要書 (2003年1月作成)
研究課題:もみがらを利用したいちご良質苗の採苗技術 (もみがらを用いた無病・良質苗の簡易増殖法) 担当部署:道南農試研究部園芸環境科 協力分担:日高中部地区農業改良普及センター 予算区分:道費(地域緊急) 研究期間:2002年度(平成14年度) |
1.目的
揃いが良く、良質な苗を大量に増殖できる いちごの新しい採苗法「もみがら採苗法」を実用化する。
2.方法
もみがら採苗法模式図
①図のようにハウス内に使用済みハウスフィルムを敷いた上にもみがらを敷き、ポット植えした親株(春あるいは秋植え)を配置する。施肥:3gN/株(ロング 424,70日、全量基肥)。ポット培土は無病土を使用する。②乾いたもみがらの上にランナーを伸長させる。 ③側窓は開放し、6月中旬に45%遮光のネットをハウスの上に被覆する。 ④鉢上げ2週間前からもみがらへのかん水(最初10㍑/㎡/日、その後3〜5㍑/㎡/日)を行い、子苗を一斉に発根させる。⑤株元からランナーを切断し一挙に採苗する。採苗後は作業室内で苗の調製作業を行う。
試験内容:「もみがら採苗法」と露地採苗法(慣行法)および空間採苗法(H2年指導参考事項、道南農試)を以下の項目について比較した。
1)採苗時の苗質:1〜3次苗の生育について調査。
2)子苗の生産量(採苗本数):1〜3次苗の生産量について調査。
3)鉢上げ後の苗の生育:鉢上げ後、ポット育苗した場合の定植苗の生育について調査。
4)採苗作業時間:採苗作業時間、苗の調製作業時間について調査。
5)苗の生産コスト:もみがらおよび採苗法と空間採苗法についてはハウス資材を含む必要資材の減価償却費、露地採苗法はハウス資材を含まない必要資材の減価償却費を試算。
供試品種:1),2),5);「けんたろう」「きたえくぼ」「宝交早生」、3),4);「けんたろう」
3.成果の概要
1)露地採苗法では、1次苗が過大となり活着も不良なため採苗しないのが一般的であるが、もみがら採苗法で採苗した1次苗はコンパクトで根の伸長も旺盛であるため採苗可能であった(表1)。
2)1次苗が採苗できるため露地採苗法に比べて採苗本数が多かった(表3)。
3)もみがら採苗法では発根開始が斉一で、根長の揃いも良く、揃いの良い苗が採苗できた(図1)。そのため、最終的に揃いが良い定植苗が育苗できた(表2)。
4)子苗1本当たり総採苗作業時間は露地採苗法の8.4秒に対しもみがら採苗法は6.0秒であった。また、もみがら採苗法では採苗圃に雑草が発生しないという優点も認められた。
5)ハウス等の施設を用いる採苗法であるため子苗生産コストは露地採苗法より高いが、空間採苗法より低く、有利な採苗法であると考えられた(表4)。
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図1 1次苗の各形質の値を100とした場合の2次苗、3次苗の割合(品種:「けんたろう」) |
4.成果の活用面と留意点
1)本成績は親株の春定植での結果であるが、秋定植でも可能である。
2)土壌病害の発生履歴があるハウスではもみがら採苗を行わない。また、もみがら採苗ハウスの周囲に土壌病害が発生している圃場等がある場合は、その土壌を採苗ハウスの中に持ち込まないよう注意する。
3)一度採苗に使用したもみがらは、再度採苗に使用しない。
5.残された問題とその対応
1)土壌病原菌に対する感染回避の確認(試験継続中)。
2)採苗法と収量性との関係。
3)親株の肥培管理が子苗の苗質および生産量に及ぼす影響。
4)四季成り性品種への応用(試験継続中)。
5)採苗した苗を直接本圃に定植する「直接定植技術」の検討(試験継続中)。