新品種候補        (作成 平成16年1月)
てんさい新品種候補
    「H129」の概要
                道立十勝農試、北見農試、中央農試、上川農試、北農研センター
                 北海道てん菜協会(日本甜菜製糖㈱、北海道糖業㈱、ホクレン)
1.特性一覧表
系統名  「H129」は、オランダのアドバンタ社が育成した三倍体単胚の
一代雑種である。平成12年にホクレン農業協同組合連合会
が輸入し、平成13年より各種試験を行った。
特  性 長  所 1)根重が多く、糖量が多い。 短  所 1)褐斑病抵抗性が“弱”である。
2)耐湿性が“やや弱”である。
普及見込面積   平成16年度 2,000ha   平成17年度以降 17,000ha
系統・品種名
形     質
 H129 モノホマレ
(標準品種)
アーベント
(対照品種)
倍数性  三 倍 体  二 倍 体  三 倍 体
葉  姿   やや開平   直   立   やや開平
葉  長  や や 短  長  や や 短
葉  数  や や 多  や や 多    中  
葉  形  楕   円  皮   針  楕   円
クラウンの大小    小      小  
根  形  円   錐  円   錐  円   錐
分岐根    少      少  
露  肩  や や 少  や や 少
根   重 (t/10a)   7.53(108)   6.96(100)   7.14(103)
根中糖分 (%)  17.57(102)  17.22(100)  17.64(102)
糖   量 (kg/10a)  1,320(110)  1,195(100)  1,256(105)
 有 害 性
 非 糖 分
(meq/100g)
アミノ態窒素   1.86(107)   1.75(100)   1.64( 94)
カリウム   3.73( 93)   4.02(100)   4.06(101)
ナトリウム   0.32( 77)   0.41(100)   0.29( 70)
不 純 物 価 (%)   3.72( 95)   3.91(100)   3.70( 95)
特性検定  褐 斑 病 抵 抗 性 弱    やや弱(やや強)
 根 腐 病 抵 抗 性  や や 弱    やや弱( 弱 )  や や 弱
 耐   湿   性  や や 弱  や や 弱  や や 弱
 抽  苔  耐  性   強      強  
 黒 根 病 抵 抗 性
注1)特性検定は担当農試の成績で、褐斑病抵抗性、根腐病抵抗性における「モノホマレ」の( )内は品種登録時の評価。

 

2)形態的特性は十勝農試の成績。その他は十勝、北見、中央、上川、北農研、てん菜協会(3カ所)の計8カ所平均で、試験年次は3カ年(H13〜15)、( )内は「モノホマレ」に対する百分比。
3)黒根病抵抗性は単年度結果から、「モノホマレ」と同程度(中)と考えられる。

3.「H129」の特記すべき特徴
 根重は「アーベント」より多く、根中糖分は「アーベント」並で、糖量が「アーベント」より多い。不純物価は「アーベント」並である。




3.優良品種に採用しようとする理由
 てん菜の根重および根中糖分の優れた品種の導入、普及は生産性の向上にめざましい成果をあげてきており、平成1年優良品種に認定された「アーベント」は、根重、根中糖分ともに優れた多収品種として、平成15年には約2万2千haと広く栽培されている。
 しかし、最近の砂糖の価格情勢は厳しく、生産者の収益が低下していることから、根重、根中糖分が「アーベント」をさらに上回る品種の普及が切望されている。
「H129」は、「アーベント」と比較して根中糖分は同程度であるが、根重が多いため、糖量が多い。なお、不純物価は「アーベント」並で品質は同程度、褐斑病抵抗性は”弱”であるが「アーベント」より発病はやや少なく、その他のてん菜主要病害に対しても特に問題となる点はない。
 このことから、「H129」を「アーベント」に替えて北海道一円に普及することにより、てんさいの多収化と安定生産に寄与できる。





4.適地

北海道一円。








5.栽培上の注意
1)褐斑病抵抗性が“弱”なので、適切な防除に努める。
2)そう根病抵抗性を持たないので発病圃場での栽培を避ける。